むねた裕之
むねた裕之むねた裕之

憲法で保障された地方自治の本旨である「住民自治」、「団体自治」を実現する市政運営を

(川崎市に提出した23年度予算要望書の内容です)

 憲法は地方自治について第八章(第92条~第95条)で規定しています。明治憲法には地方自治について何らの規定も設けられていませんでしたが、日本国憲法は特に一章を設け、そこに四ヵ条の原則規定をかかげて、法律をもってしてもこれを改変することのできないものとしました。「地方が治まって、はじめて国全体が治まる。地方の政治は国の政治の根源となるものである」との考えのもと、国の民主政治の根源となり、基礎となる地方自治の重要性を意識し、これに制度的保障を与え、その確立を期した結果です。

 憲法第92条は「地方自治の本旨」という言葉で、基本的な原則を明らかにしており、基本原則には、「住民自治の原則」と「団体自治の原則」が含まれています。地方自治の保障とは、一種の政治的な仕組みとして、国と並ぶ権能を持った、一定の領域に根差した団体が存在することが前提となっています。つまり、地方自治体が国から独立して判断した内容について、国も一定の範囲で侵してはならない「自治権」としてとらえるべきものです。日本国憲法が地方自治に関する規定を置いているのは、日本の政治的構造を分権化することで、住民の基本的人権を守る自治体が、国の暴走の歯止めとなり、日本が二度と侵略戦争を起こすことがないようにするためでもあります。地方自治の原理は、国民主権の原理を地方において実現するとともに、基本的人権の尊重や平和主義を実現することができる最も身近な場である自治体の存在を保障するものです。

自治体の公共サービスの民営化―PFI、指定管理者制度と経済的な特徴

1999年にPFI法ができ、公共サービスの民営化・アウトソーシングを進める新しい法制度ができ、2003年には地方自治法の一部改定により、公の施設の指定管理者制度ができました。これにより公の施設である市民会館、保育所、老健施設、都市公園などが営利企業を管理者として指定できるようになりました。憲法や地方自治法で定められている本来あるべき公共事業というのは、地方自治体が独自の法人格を持ち、自治体として事業を営み、自治体として施設建設、施設所有、施設管理をし、地方公務員・職員を任用します。しかし、これらの法律、法改正により、施設建設、施設所有を営利企業に任せる制度がPFIで施設管理を営利企業に任せるのが指定管理者制度です。これらの制度により、本来、行政の責任である市民サービスの提供が、民営化による民間の利益追求のためにゆがめられ、憲法で保障されている「住民自治の原則」と「団体自治の原則」が後退させられようとしています。

これら制度の経済的な特徴は、公共サービスが営利企業に任されると担い手が非正規や派遣労働者になるということです。行政が事業する場合の経費は、主に人的経費と物的経費ですが、営利企業が事業を行う場合は、これら経費に利益が加わります。行政は、経費削減のために民営化を推進するので、全体の経費は縮減されます。物的経費はほとんど変わらないが、利益を確保しなければならないので、必然的に人的経費が大きく減らされます。行政が担当する場合と比べて3分の1程度に圧縮されることになります。その結果、民間企業は利益を確保するために、現場の担い手は公務員・正規職員から非正規・派遣労働者に置き換えることになるのです。実際、これらの制度を実施している全国の自治体から、労働条件の悪化、事業の撤退、破綻など数々の問題が報告されています。

PFI事業―全国で事故、撤退、破産、癒着などの問題が多発

PFIは、民間の資金やノウハウにより公共施設の建設と調達を行う法律で、施設、道路や鉄道、水道等の大規模な建設事業を企画から建設・運用まで民間に任せるものです。PFIは、①財政難の元でも施設建設推進、②自治体の関与と住民の立場の後退、③自治体と大企業との癒着、④事故等の損失の負担、⑤経費負担の増大(損失負担、破産、撤退の結果)、⑥大手企業の独占(市内中小企業が参入できない)などの問題点があります。この間、PFI導入による問題は全国で多発しています。主な事例としては、①仙台松森PFI天井崩落事故(損失負担)、②福岡タラソ(温水プール)撤退、③北九州・ひびきコンテナターミナル経営破綻(市が40億円で買い取り)、④名古屋港イタリア村破産(負債170億円)、⑤高知病院赤字・汚職でPFI契約解除(予算8億円超過)、⑥滋賀・近江八幡市立総合医療センター(PFI解除し再び直営に)などがあります。

これらの問題事例を受け、PFI事業に関して国の機関に改善を求める会計検査院PFI報告書(21年5月)が出されました。報告書では、契約に沿った適正なサービスが提供されていないケースが26事業で2300件余りあったこと。2002年から18年までの法務省や国土交通省など11の国の機関が契約したPFI事業について、適正なサービスが提供されていない「債務不履行」が57事業のうち26事業、2367件あったことがわかりました。検査院は、繰り返し同じような債務不履行が起きているとして契約元の国の機関に対して再発防止、改善を求めています。

指定管理者制度―利用料金、情報公開、労働条件悪化、事業撤退などの問題が多発

2003年改正以前は、管理者となりえる団体は、公的な団体に限られていましたが、現行法では営利企業を含む法人や団体も可能としました。改正以前は、公の施設は住民全体の福祉の増進のための施設であり、料金収入などは、住民の利益に還元されるべきとしていたものが、改正後は、営利企業が管理を通じて儲けても良いとしてしまったところに大きな問題点があります。

指定管理者制度には、①利用許可・料金設定の権限が企業に(収益性が優先、公益性が後退)、②監査・情報公開の義務がない、③担い手が非正規労働者、④独自の収益事業が可能、⑤事業からの撤退、⑥特定企業との癒着など深刻な問題が全国で発生しています。全国の問題事例としては、①新潟県上越市・新井リゾートの解散、②京都府南丹市・園部女性の館の第3セクター返上、③山梨県・「丘の公園」公社が解散(従業員の解雇)、④山梨県牧丘町・オーチャードビレッジの指定管理者が撤退、⑤岩国市・「複合市民施設「サンライフ岩国」の経営難による指定取り消し、⑥大阪府池田市・葬祭場の指定替え(従業員半分が解雇)、⑦北海道歌志内市・「かもい岳スキー場」の休止など全国で問題が起きています。

このような問題に対して総務省は「指定管理者制度の運用について(2010年12・28)では「「留意すべき点も明らかになってきた」として「公共サービスの水準の確保」「住民の安全確保に十分配慮」「指定管理者が労働法令の遵守や雇用・労働条件への適切な配慮」などが必要としています。また、片山総務大臣は記者会見で「コストカットのツールとして使ってきたきらいがある」「公共図書館、学校図書館は指定管理になじまない。きちっと行政が直営でスタッフを配置して運営すべきだ」「結果として官製ワーキングプアというものをずいぶん生んでしまっている」(11年1・5)と述べるなど、政府も一定の歯止めをかける通達や発言をしています。

川崎市―図書館、労働会館・市民館への指定管理者制度導入

川崎市は、従来、一部を除き直営としてきた図書館や市民館・労働会館に指定管理制度を導入する計画(案)を22年6月議会で提案しました。6月議会の代表質問でわが党は、図書館の指定管理導入について、片山大臣の指摘を紹介して公共図書館に指定管理はなじまないこと、人件費が削減され専門性の確保ができないこと、他都市での破綻の例も出して導入に反対しました。また、労働会館・川崎市民館への指定管理者制度の導入について、総務委員会では労働分野への初めての導入であることや上記の問題点を指摘して、拙速に導入すべきでないことを指摘しました。

このようにPFI、指定管理者制度による公共サービスの民営化は、市民サービスの後退・撤退、人件費削減により不安定な非正規労働者を多数生み出し、行政の責任を後退させるものであり、市として導入すべきではありません。

川崎市のデジタルトランスフォーメーション(DX)

21年5月に成立したデジタル関連法は、 (1)国や自治体が事務処理に使う情報システムの「共同化・集約」(2)マイナンバー制度の情報連携等の拡大(3)個人情報保護法制の一元化(4)強力な権限をもつデジタル庁の設置など、個人情報を含むデータを集積し、利活用を強力に推進するものです。これらの法律に対して、各方面の識者、マスメディアから個人情報を保護するどころか企業のために提供し、また、権力による国民監視を強める危険な法改定であるとして、その危険性が指摘されています。これらの法改正により、自治体独自のサービス提供や条例制定権が損なわれ、住民の個人情報が民間の利益追求のために使われるなど団体自治、住民自治の原則が後退する危険性があります。

個人情報保護条例改定―市の条例(政令市第1号)の先駆的な規定をいかに守るのか

川崎市の個人情報保護条例は、1985年6月に政令市では全国第1号として制定され、他の自治体の見本となり、数々の先駆的な規定を持っています。今回のデジタル関連法では、データ外部提供の制度を導入し、個人情報の対象を縮小するとしています。また、個人情報の保護という観点が欠落していることも問題視されています。国は4月にガイドラインを作成し、市はこのガイドラインに沿って12月に個人情報保護条例改正案を提出するとしています。全国に先駆けて制定した川崎市の個人情報保護条例の先進的な保護規定をいかに守っていくのかが問われています。

住民の個人情報・プライバシー権―開示・訂正・消去請求権の堅持を

憲法13条が定めている個人の尊厳の確保、幸福追求権の保障は、住民は自分のどんな個人情報がどこに集められているかを知り、不当に使われないように関与し、情報の削除を求める権利を有するという自己情報コントロール権(プライバシー権)を含んでいます。市の条例では、「個人情報は利用目的を明示して、直接本人から収集」すること。本人以外から収集するときも「本人同意」が必要としています。また、「利用目的の範囲を超えた利用、提供をしない」として「川崎市以外への提供」を禁止しています。22年6月の代表質問では、市の条例にある「本人同意」「目的外使用の禁止」「外部提供の禁止」規定を守っていくのか、という質問に対して、「本人同意がある場合を除いては、原則として外部提供、目的外使用をしてはならない」という答弁でした。また、「開示請求、訂正請求、利用の停止・消去請求などの請求権を引き続き守っていくのか」という質問に対しても、これらの請求権について「改正法において、請求の制度が定められている」という答弁でした。現条例の禁止規定やこれら請求権については、個人情報のプライバシー権(自己情報コントロール権)として、堅持することを強く求めます。

自治体の条例制定権―要配慮個人情報への規制と審議会の役割の堅持を

要配慮個人情報について、市の条例では「不当な差別や偏見その他の不利益が生じないように」として「本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪により害を被った事実などが含まれる個人情報など」と定義をして、「要配慮個人情報については、原則として保有しない」としています。これらの情報は、漏洩した場合、犯罪に悪用されるなどの危険性があります。  オンライン結合について、市の条例では「川崎市以外のものとの間において通信回線による電子計算機の接続をして保有個人情報の処理を行わない」としています。川崎市情報公開運営審議会について、市の条例では、要配慮個人情報、オンライン結合を認める際の例外要件として、「川崎市情報公開運営審議会の意見を聞いて認めたとき」としています。6月議会では、現条例の要配慮個人情報やオンライン結合の規制に対する否定、審議会の役割の制限はすべきではないという質問に対して、「審議会に諮問し検討を進めている」という答弁でした。これらの規制や審議会の役割を自治体が独自に定めることは、自治体の条例制定権であり、否定されるべきではありません。それは何よりも個人情報保護の後退、悪用を招きます。国がこれらの規制、役割を否定するような動きがあっても、きっぱり拒否をすべきことを強く求めます。

匿名加工情報のデータ提供と民間のデータ管理に依存する危険性

匿名加工情報について、国や市は「利用者ニーズが高い公共データを二次利用可能な形で原則公開・利用できる」として、市は23年度から順次オープンデータ化をして、企業にデータを提供することを進めるとしています。この間、政府が本人同意を得ずにデータを外部提供できる「匿名加工情報」制度の危険な実態が浮き彫りになりました。例えば、国立大学生の情報を本人の同意なく民間利用の対象としました。提供する「国立大学生の授業料免除に関する情報」のファイルには、受験生の入試の点数や内申点等の情報、母子・父子家庭か、障がい者のいる家庭か、生活保護家庭かといった情報まで含まれており、本人が特定されかねない情報が提供対象されていたのです。これらの情報が本人に無断で提供され悪用されれば大変な問題となりますが、住民が提供を拒む権利の規定はありません。

データ管理について、政府は、これまでの自前のサーバーを設置・管理する方法から、民間企業が所有・管理するサーバーを使用する方向に大転換します。すでに、中央省庁向けクラウド(ガバメントクラウド)の運用が米国アマゾン社のサービスを基盤として開始され、政府の保有する情報がアマゾン社が管理するサーバーに保存されます。重大なのは、そのサーバー内に保存されている日本政府と国民の情報に米国の諜報機関がアクセス権を持っていることです。このような危険性を考慮して、匿名加工情報の企業へのデータ提供と民間のデータ管理に依存することについて規制をかけるよう強く求めます。

市独自の住民サービスの維持を

 DXでは、各自治体は、国が定める「標準仕様」に適合することが義務付けられ、市は今年度、標準準拠システムと本市現行システムの比較分析手順書を作成するとしています。これにより自治体は国が作る鋳型に収まる範疇の施策しか行えない危険性があり、独自の施策が抑えられ、住民自治を侵害させかねません。すでに自治体共用の情報サービスを使っている自治体では、仕様変更ができないことを口実に個別の住民要求に応えた施策を行政側が拒否する事例が各地で起きています。また、「標準化」の対象は20業務にも及び、その中には、個人市民税などの地方税や国保、介護保険、障碍者福祉、後期高齢者医療、子ども子育て支援などが含まれています。市は国に従って「標準化・共通化への対応」するとしていますが、市民税の減免、国民健康保険・介護保険の保険料の減免、障碍者福祉、高齢者福祉の市単独事業、子供の医療費助成など市独自サービスは維持することを強く求めます。

窓口のデジタル化―従来の窓口の維持を

 市は「窓口のデジタル化」を推進するとして、23年度からキャッシュレス決済、オンライン相談を導入するとしています。総務省は「自治体戦略2040構想研究会」で「従来の半分の職員でも、自治体が本来担うべき機能を発揮できる仕組みが必要」と述べたり、総務省の担当者は「職員が介在しなくても完結するサービスを目指す」、「無人窓口も実現可能ではないか」と述べるなど窓口を大幅に減らす方向です。しかし、本来行政の窓口というのは、住民の話を聞いて制度や手続きの説明をし、関連する窓口や部署につなげるたり、支援が必要な住民を発見し、積極的に手を差し伸べるアウトリーチの役割もあります。自治体職員も、窓口で住民と接する経験を積み重ねることで、専門性や政策力が培われることができるのです。そういう重要な役割を持っている窓口を市は減らすべきではありません。

特別自治市制度(特別市)について

特別自治市制度について、市は「二重行政の無駄を解消することを目的に、県が実施している事務・権限や各種県税の課税徴収も合わせて市で行う」としています。

二重行政―ほとんどの事務は市に移管済み

すでに住民サービスに直結するほとんどの事務は市が行っています。一方、防災、警察、環境、コロナ対応など県や周辺自治体との連携が必要な業務があることも認めています。では、「どんな事務が無駄なのか」という質問に対し「県が行っている幼稚園などの許認可権の事務」という答弁でした。「二重行政が無駄」といいながら、県との連携が必要な行政があることを認めており、しかも無駄な事務の理由としては、あまりにも説得力がありません。

税財源の移譲―県内市町村は分配する税財源が失われ大変な財政難に

現行の各種県税を市が課税徴収するということですが、当然、県としては県内市町村に分配する税財源が失われます。この点について、県は3月17日の報道で「仮に3政令市が特別自治市に移行した場合、県の政策的経費の3分の1に相当する財源不足に陥るとの試算を示し、特別自治市以外の市町村での行政サービスの維持が困難になる」として「住民目線から見て法制度化は妥当ではない」との見解を示しています。税財源の移譲について県は明確に反対しており、県内市町村のサービスの維持が困難になるなどの支障が出ることも明らかになりました。

市民や県、国との合意がないまま進めて良いのか

委員会では「この制度は市民からの要望でできたものではない」という答弁でした。政令指定都市のうち16市が進めているだけで全政令市の合意もなく、市民、県、国との合意がないまま進めようとしています。パブコメでは、「市民や町会、自治会にもきちんとした説明がない」「ほとんど周知がされていない」「このパブコメだけで進めてよいのか」などの意見があります。市民や町会、自治会などへの周知がないまま進めて良いのでしょうか。

県・研究会の報告書―「県の調整機能が失われ、市民サービスの後退に」

 県の「特別自治市構想等大都市制度に関する研究会」から昨年11月に報告書が県知事に提出されました。その中で「この研究を進める中で、どうしても払しょくできなかった疑問がある。それは、この構想を県民・市民が本当に望んでいるのかということである」と指摘しています。また、「住民は、道府県の区域外となり、知事・県議会議員の選挙に参加する機能が失われるとともに、災害対応や新興感染症対策等における広域自治体のバックアップといった県の総合調整機能が失われ、これまで通りの住民サービスを受けられなくなる。また、特別自治市に移行した場合、市によっては大幅な歳出超過になると試算されている」と指摘されています。川崎市民は県民ではなくなり、県議を通した川崎市民の声が届かなくなり、災害、コロナ対策などの調整機能、サービスが失われるのです。このことは多くの市民には知らされていません。そして最後に「特別自治市は、120年以上にわたり現在の県域において発展してきた神奈川県の一体性を失わせることになる」と指摘して「特別自治市という現行の地方自治制度の抜本的な見直しを検討する前に、既存の制度の十分な活用や検討を行うべき」と結論付けています。

 以上のように特別自治市制度について議論はまだ途上であり、さらに多くの問題点が出てくることも考えられることから、「特別自治市」は推進すべきではありません。

福田市政で踏みにじられてきた団体自治、住民自治

 憲法の「地方自治の本旨」は、住民自治と団体自治の二つの要素からなり、住民自治とは、地方自治が住民の意思に基づいて行われるという民主主義的要素であり、団体自治とは、地方自治が国から独立した団体にゆだねられ、団体自らの意思と責任の下でなされることです。福田市政は、この住民自治、団体自治を幾度となく軽視してきました。

 住民自治の問題では、タワーマンションが乱立し、保育園不足、学校の過密化、鉄道の大混雑などで大きな反対運動が起こっている小杉駅再開発、住民の意見を無視して、公共施設を集約して行われる鷺沼駅周辺再開発、羽田新飛行ルート問題、リニア新幹線など、住民の意見や反対を無視した開発が進められてきました。

 団体自治の問題では、国の要請で3倍に膨れ上がった臨港道路東扇島水江町線の総事業費を市長の独断で了承したこと。防衛省の求めに応じて、非公開であるはずの住民台帳の青年名簿を自衛隊に提出している問題。コロナ禍での市の対応は、国や県の言いなりで、数度の医療崩壊を起こしたのに、自治体独自の施策、財政支援は全くと言ってよいほど実施しない、地方自治体としての役割を果たしていない姿を露呈しました。

本来、国から独立している団体なのに、国の言いなり、市民の意思を無視し、地方自治の本旨である住民自治、団体自治をおろそかにすることは許されません。いまこそ、川崎市は、地方自治の力を発揮して、主権者である住民の幸福追求権、生存権、そして財産権を保障する憲法の観点から、自治体本来のあり方に戻すことが求められています。

(一)地方自治を壊し、個人の尊厳をないがしろにする自民党政権の憲法改悪には断固反対する。その立場を市長が表明するよう求める。

(二)自治体を変質させる「自治体戦略2040構想」とその具体化である「コミュニティ施策」、「スーパーシティ構想」、「デジタル化(DX)」、「公共サービスの民営化」について、住民自治、団体自治、市民サービスの後退につながる具体化はしないことを求める。

1. 「これからのコミュニティ施策の基本的な考え方」を、公助がしっかりと中心にすえるものに抜本的につくりかえる。

2. 地域医療、介護、公共交通など全体的な計画を企業にゆだね、企業利益優先の「スーパーシティ構想」は導入しないこと。

3. 市民サービスの後退・撤退、人件費削減により不安定な非正規労働者を多数生み出し、行政の責任を後退させるPFI、指定管理者制度による「公共サービスの民営化」は、導入しないこと。

4. 市民のプライバシー権、自治体の条例制定権の後退につながる個人情報保護条例の改悪や市民サービスの後退につながる「デジタル化(DX)」の具体化はしないこと。

(三)団体自治の精神を徹底する立場から次の事項を実現する

1 自治体行政を住民から遠ざけ、小規模自治体の自治権を奪い、切り捨てることにつながる道州制と市町村合併のおしつけはやめるよう、国に要求する。

2 市が計画している「特別自治市制度」は、災害、コロナ対策などの県の調整機能、県を通じた交通・警察機能、住民サービスが失われ、県内の多くの自治体の負担増につながり、県議を通した川崎市民の声が届かなくなるものであり、撤回すること。

(四)住民自治の精神の徹底から、市民が主権者であることをきちんと位置付ける

1 自治基本条例には、主権者は市民であることが明記されていない。市民は行政の手伝いをするものであったり、行政と同列なのではなく、主権者であることを明記する。

2 「住民投票条例」は住民が真に使えるものに改正する。

①住民投票の対象事項は、「市長が意思決定していない、つまり施策として形になっていないものしか投票の対象にならない」ことが、条例制定の委員会審議の中で明らかになった。これでは、市民が問題に気がついたときには多くの場合、住民投票にはかけられないことになる。市民が住民投票にかけて市民の意思を問いたいと思う問題は対象になるように、対象事項は「現在または将来の住民の福祉に重大な影響を与え、または与える可能性のある事項」のみにする。

② 住民発議にとって必要な署名数を投票資格者総数の10分の1にしていることも、住民投票を発議しにくくして、市民の手を縛ることになっている。必要な署名数は投票資格者総数の20分の1にする。

③ 住民投票は「間接民主主義を補完するための制度」と市自身も認めていることから、議会への協議は削除する。

④ 投票日は、問題によっては機を逸することがないように、国政・地方選挙と投票日とは別にして、単独投票日とする。

3 「まちづくり育成条例」を、市民が主権者と位置づけ、抜本的に改正する。

4 「総合計画」・「基本計画」の策定にあたっては、市民が主権者であることをきちんと位置づける。市民に十分な説明を行ない、市民意見を反映するようにする。

5 地方自治法第1条の「住民福祉の増進」という立場から、これ以上の「行革」はやめ、市民要求実現に全力をあげる。

(五)市民参加を実効的なものにするため、次の各制度を改正する

1 市民意見を充分市政に反映できるよう、「パブリックコメント条例」を改正・活用すべきである。

① パブリックコメント制度の目的に、「市政運営に市民意見を反映するため」を加え、政策決定過程にパブリックコメントの内容をどう取り入れるか検討する場を加える。

② パブリックコメントはホームページだけでなく、区役所や図書館など公共施設に印刷物を置き、誰もが自由に持ち帰って意見を述べられるようにする。受取人払いの封筒をつける。

③ 市民意見を募集したい事案については、該当地域や全市を対象に説明会を開くなど、あらかじめ市の考え方を説明する機会を設け、市民が理解したうえで意見を述べるようにする。

2 各区の区長の選出については準公選制を導入する。

3 審議会等の市民公募委員を増やし、議事録を公開する。

4 2014年、教科用図書の採択に係る川崎市教育委員会会議の会議録を、その作成を担当していた教育委員会事務局総務部庶務課が同会議の音声データを消去するという事件が発生しました。市民の知る権利を奪う行為であり断じて許されません。音声データについても、公文書であるという審査会の答申を徹底し、各局に公文書として保管義務を徹底し、開示請求の対象として公開することを徹底する。再発防止のための組織として第3者を加え、より実効性のある制度に改善する。

5 「川崎市環境影響評価審議会委員」構成について、現在の委員構成を変更して市民7名の委員のうち、市民団体からの推薦枠5名を廃止し、残り2名について市民委員枠として公募するとした。これは特定の団体と市民の声を排除することを目的としたものであり、許されるものではない。これまで通り団体枠を維持し、三者が推薦する学識経験者の委員の選任を認めるようにする。