むねた裕之
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地球環境・・川崎市内電力を再エネで100%自給は可能(決算)

2款4項1目 臨海部活性化推進事業費について

臨海部の脱炭素の向けて省エネ、再生エネルギーなど、どのようなポテンシャル持っているのか試算や調査、取組について伺います。

臨海部の省エネのポテンシャル

・臨海部の産業構造についてです。臨海部には、火力発電所、鉄鋼関連、石油関連企業が集積しています。臨海部2800haのうち、これらの産業でかなりの面積を占めています。

川崎臨海部の土地利用について、鉄鋼関連、石油関連、火力発電所などの面積を伺います。

【答弁】

面積につきましては、鉄鋼関連が約542ha、石油関連が約533ha、火力発電所が約195haでございます。

【質問】

・鉄鋼関連542ha、石油関連533ha、火力発電所195ha、あわせて1270ha、臨海部全体の45%を占めます。

川崎臨海部の鉄鋼関連、石油関連の業界の動きについて、伺います。

【答弁】

はじめに、鉄鋼業界の動きでございますが、中国をはじめとするアジア諸国の粗鋼生産量が増えており、国際競争が激化する中、大規模事業者であるJFEスチール株式会社におきましては、昨年3月に東日本製鉄所京浜地区の高炉等の設備休止を発表し、生産体制の再構築に

向けて構造改革を進めているところでございます。

高炉等の休止に伴い、大規模な士地利用が見込まれ、市政全体に多大な影響が想定されますことから、本年2月にJFEホールディングス株式会社と士地利用に関する協定を締結したところでございます。

次に、石油業界の動きでございますが、脱炭素化の世界的な潮流が加速する中、カーボンニュートラル化への対応が求められており、大規模事業者であるENEOS株式会社では、本年7月にNED0の採択を受けて、海外でのC02フリー水素製造から海上輸送、川崎臨海部での受入、周辺地域への供給という一連のサプライチーンについて、事業性の調査を行うなど、水素事業の商用化に向けた取組が進められているところでございます。

【質問】

・JFEスチールは高炉休止により縮小、CO2を大量に排出する火力発電所も脱炭素に向けてそのままにして良い訳はありません、石油関連企業も縮小する可能性が大です。そうなると1270haという土地をどう利用していくのかが臨海部では最大の課題になります。臨海部はこれから脱炭素に向けて大きな変革が必要となってきます。

(CO2排出量について)

・CO2排出量について、産業部門、臨海部からどのくらいのCO2を排出しているのか伺います。

CO2排出量の部門別構成比について、産業系(エネルギー転換部門、産業部門、工業プロセス部門)の構成比について、川崎市と全国の割合を伺います。

【答弁】

環境局でとりまとめた「川崎市地球温暖化対策推進計画年次報告書」によりますと、平成30年度暫定値といたしまして、 C02排出量の産業系部門の構成比は、川崎市内では77%、全国平均では48%となっております。

【質問】

・CO2排出量について、産業系に占める割合は全国が48%なのに、川崎市は77%を極めて高いということです。この産業系のCO2排出量のほとんどが臨海部に集中しています。

・市域全体のCO2排出量の約7割を占める臨海部の火力発電所、鉄鋼、石油関連企業などの産業系が脱炭素に向けて取り組むということは、川崎市の省エネにおいて極めて重要であり、そのポテンシャルは極めて大きいということです。

(CO2排出量削減の目標)

・川崎市は2020年2月に「2050年のCO2排出実質ゼロ」を表明し、同年11月には脱炭素「川崎カーボンゼロチャレンジ2050」を策定しました。2030年の削減目標については、地球温暖化対策推進計画の策定に向け、検討を進めている環境審議会の答申を踏まえ、年度内に数値目標を定めていくということです。

・わが党は、9月に「気候危機を打開する2030戦略」を発表し、CO2削減目標を提案しました。CO2削減目標については欧米先進国、多くの環境団体、シンクタンクが掲げている「2030年までにCO2を2010年度比で50~60%削減する」目標にすることを要望します。

・臨海部の大規模事業所のうち、火力発電所は3社(東電、JR、川崎天然ガス)、鉄鋼は2社(JFE、日本冶金)、石油関連は2社(ENEOS、東亜石油)などわずか7社で構成されています。

臨海部の3つの産業部門の大規模事業所の脱炭素化は省エネにとって決定的です。省エネと脱化石燃料の社会的責任を果たすための大規模事業所に対する規制や支援を考えているのか、伺います。

【答弁】

脱炭素化の世界的な潮流が加速する中、川崎臨海部においてもカーボンニュートラルに向けた取組が求められていることから、現在、カーボンニュートラルコンビナートの形成に向けた検討を進めているところでございます。

今後に向けましては、こうした検討を踏まえて、川崎臨海部の産業競争力の強化を図り、 2050年のカーボンニュートラルな社会においても、川崎臨海部が我が国を牽引する産業都市であり続けるよう、必要な支援等を行ってまいります。

【質問】

臨海部の再生可能エネルギーのポテンシャル

市の電力使用量について、産業部門と民生家庭部門の年間の使用量を伺います。

【答弁】

環境局による平成30年度の推計値では、産業部門が8578GWh、民生家庭部門が2516GWhとなっております。

【質問】

・産業部門が8600GWh、民生家庭部門は2500GWhで市内の電力使用量は年間約11000GWhです。2030年までにCO2削減50~60%の省エネを進めれば電力使用量も2050年には38%削減は可能です。それにより、市内の産業部門、民生家庭部門の電力使用量は6900GWhとなります。

・市長は、再生可能エネルギーについて「使用電力の再生可能エネルギー100%への転換を目指す」と述べてきました。2050年の電力使用量6900GWhをすべて再エネで賄うことが必要です。

既存の太陽光発電所(浮島、扇島)の敷地面積と年間発電量を伺います

既存の風力発電所、バイオマス発電所(川崎、京浜)の年間発電量を伺います。

【答弁】

太陽光発電所につきましては、浮島太陽光発電所と扇島太陽光発電所があり、敷地面積は 12.3 h a、23. 0haであり、設置時における年間発電量は、それぞれ約7Gwh、約14Gwhとされておりますが、令和2年度実績は、環境局調査によるといずれも約9GWhとなっております。

また、風力発電所につきましては、 ENEOS株式会社の扇島風力発電所があり、設置時における年間発電量は、約3Gwhとされておりますが、実績値は公表されていません。

バイオマス発電所につきましては、川崎バイオマス発電所と京浜バイオマス発電所があり、設置時における年間発電量は、それぞれ260Gwh、 30OGwhと見込まれており、実績は公表されていません。

【質問】

・既存の太陽光、風力、バイオマス発電所の年間発電量は581GWhです。現時点での再エネの発電量は市内電力使用量のわずか5.3%です。

(臨海部の再エネのポテンシャル)

・現在の太陽光発電所の総面積は35haで年間発電量は18GWhです。この発電設備のエネルギー変換効率は15%程度です。しかし、この間の最新の太陽光の変換率は40%を超えています。最新の太陽光に置き換えると、年間発電量は76.4GWhは可能です。

・臨海部の鉄鋼、発電所、石油関連の施設はかなり縮小されることが予想されます。企業誘致はかなり苦労すると思います。しかし、どんな企業、例えば倉庫や物流関連の企業が来ても、その建物の屋根や駐車場などに屋根を付けて、そこに太陽光パネルを設置することは可能です。

・わが党は「自然エネルギー研究センターNERC」に研究委託をして、再エネの試算を出してもらいました。その結果、臨海部の敷地の60%に太陽光パネルを設置すると試算して、年間の発電量は3800GWh。風力発電も既存の風力発電所に陸上6か所、洋上12か所を加えれば177GWh。これに既存のバイオマス発電所560GWhを加えると4537GWh。市内の産業部門、民生家庭部門の電力使用量6900GWhの約7割を臨海部の再エネで賄うことができます。

・この他に市内の施設・建物に太陽光パネルを設置した試算を出しました。農地のソーラーシェアリングで390GWh、道路の路面や運河の護岸170GWh、市内の駐車場・倉庫など屋根511GWh。民間施設・住宅などの屋根850GWh、廃棄物発電23GWhなど合わせると7060GWhで市内の産業・民生家庭部門の電力の100%は再エネに転換することは可能になります。この試算は今の太陽光パネルの性能での試算ですので、性能が上がれば100%以上を再エネに転換することは可能です。

臨海部の大規模な土地利用の転換が迫られています。脱炭素、省エネ、再エネに向けた戦略も必要となり、臨海部には大きなポテンシャルがあります。そのことを踏まえた臨海部ビジョンにすべきと思いますが、伺います。

【答弁】

川崎臨海部におきましては、海外からのエネルギー調達や首都圏から排出される廃棄物等を利用し、首都圏に向けて大量のエネルギーを供給しております。

こうした中、風力発電所につきましては、一部で稼働しておりますが、外洋に比べて風速が弱いなど、地理的条件から発電効率の低い地域であり、また、太陽光発電につきましては、各企業の敷地において、屋外貯蔵タンクや配管など、多くの設備が配置され、操業上高密度に土地を活用しており、大量の太陽光発電設備の設置には、大きな制約がある地域であると認識しております。

こうした地域特性を踏まえますと、建物の屋上などに小規模な太陽光発電設備などの導入は必要であると考えておりますが、今後とも、川崎臨海部が、首都圏における大規模なエネルギー供給拠点としてあり続けるためには、海外からのC02フリーエネルギーの調達など、川崎臨海部の特性を活かした取組が重要であると考えております。

【質問】

・各企業の敷地における太陽光設備の設置について「大きな制約がある」との答弁でした。しかし、世界では、グローバル企業を中心に事業を100%再生エネルギーで行う「RE100」の運動が広がっており、日本の大企業も多数参加しています。再生可能エネルギーで生産した製品やサービスでないと世界市場で競うことも製品を輸出することもできなくなってしまいます。各企業が再エネに転換することは急務になっています。

・「海外からのエネルギー調達」などで賄うという答弁でした。しかし、エネルギーを海外に依存するということは、いざというときエネルギー調達できないという危険を伴います。エネルギー自給率を挙げるためにも、できるだけエネルギーは自給自足で賄うべきです。

・水素エネルギーについてですが、水素の生成には大量の電力を必要とします。その電力を化石燃料で作ったら何もなりませんし、再生可能エネルギーで生成したとしても、エネルギーロスが生まれ、そのまま電力として利用した方が効率的です。船を使って輸入するとなると更なるエネルギーロスとなります。

・川崎市の臨海部には、2800haという広大な土地があり、CO2排出量の7割を占める火力発電所、鉄鋼、石油関連企業が集中し、省エネのポテンシャルは極めて大きいものがあります。しかも、これらの土地を再利用すれば、産業部門、民生家庭部門の電力の7割は臨海部の再生可能エネルギーで賄うことができます。

・ぜひ、こういう具体的な試算、調査と再エネの目標をかかげ、特に臨海部を大改革して再生エネルギー供給の一大拠点とするような臨海部ビジョンを要望します。