むねた裕之
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川崎市の決算の特徴(代表質問)・・収支不足120億円と言っていたのに収支はプラスに

9月14日、21年第3回定例会(9月議会)において日本共産党・渡辺議員が代表質問を行いました。その中の「20年度決算の特徴について」の質疑を紹介します。

【質問】

2020年度決算の特徴について、市長に伺います。

2020年度一般会計決算では、歳入は前年度比2200億円増の9597億円で5年連続、過去最大。歳入の増は特別定額給付金、地方創生臨時交付金などの国庫支出金1782億円の増額が大きな部分を占めます。それに加えて市税収入が、前年度比35億円増の3654億円で8年連続増収、7年連続過去最大。これは、法人市民税が28億円減の一方で、個人市民税39億円増、固定資産税21億円増など人口増、家屋の新築増による市民からの税収増によるものです。財政力指数は、16年連続、政令市トップで、6年連続、政令市で唯一の普通交付税・不交付団体となっています。財政健全化指標は、すべて基準値を下回っており、極めて優良。一人当たりの市債残高は、政令市の平均よりも12万円低く、借金の負担額が少ないのが特徴です。川崎市の人口増加率、生産年齢人口割合ともに政令市で最も高く、人口推計でも今後9年間は増加を続けるため市税収入の増加は今後9年間続くと予想されます。このように、市税収入、財政力指数、財政健全化指標のどれをとっても、川崎市は政令市でトップクラスの財政力を持っています。

「収支不足」についてです。

20年度予算では120億円の収支不足が出るとしていましたが、決算では1.8億円のプラスとなりました。この予算は新型コロナの影響をほとんど加味しないものでしたから、収支不足はさらに増えると予想されていました。しかし、決算では逆に収支はプラスとなり120億円以上の誤差が出ています。市民には「収支不足で厳しい」「コロナ禍で財政はさらに厳しくなる」と言っていたのにこの結果です。いったいなぜ、こんなにも収支の予算と決算の額に誤差が出たのか、伺います。

減債基金についてです。

20年度予算では減債基金から120億円借入れる予定でしたが、決算では収支不足が出なかったために借入はゼロとなりました。減債基金残高は、一般会計分でみると積立額434億円、取崩額459億円で2197億円となり、一人当たりの残高は政令市平均の1.6倍にもなります。政令市の減債基金残高は、取崩額の平均4年分ですが、本市は8年分にもなり他都市と比べて極めて多い残高となっています。

社会保障費についてです。社会保障費である扶助費は、前年度比で102億円増ですが、義務的経費の扶助費の割合は21.7%となり5.1ポイント減。しかも、一人当たりの扶助費の額は引き続き政令市平均を下回っており、福祉予算である民生費も1人当たりにすると政令市平均よりも約1万円低い状況です。一方、一人当たりの個人市民税は、政令市平均より約3万円高く、政令市トップです。個人市民税は政令市で最も高いのに、その税収が福祉・暮らしには十分還元されていないのが特徴です。

新型コロナ関連事業費についてです。

一般財源からの市独自支出は37億円のみです。そのうち、新型コロナ感染防止のためのPCR検査については、継続やコールセンターへの支出はありますが、拡充の支出はほとんどありません。医療機関への財政支援についても独自支出はまったくなく、コロナ禍で経営危機に陥っている中小企業への直接的な財政支援は、わずか1億円。雇止めや解雇が急増している非正規労働者への支援も、住居確保給付金のわずか1.6億円しかありません。

 今議会に出された「行財政改革第3期プログラム 基本的な考え方」では、本市の財政状況について、「2021年度の収支不足は286億円」「減債基金からの借入総額は813億円」にもなり「今後これまでにない厳しい財政環境」になるとしています。

 「収支不足額286億円」についてです。実際、これほどの収支不足が出るのでしょうか。20年度決算では、120億円の収支不足が出るとしていたのにプラスとなりました。この20年度決算をふまえて21年度の286億円という金額も修正が必要ではないですか、伺います。仮に、収支不足が286億円出ても、他都市で一般的に行われているように、減債基金へ積み立てる予定の積立額437億円を減らして対応すれば、減債基金から借り入れる必要もないし、収支不足も出ません。この収支不足額を根拠に財政が厳しいとは言えないと思いますが、伺います。

 「減債基金から借入れているから厳しい」という理由についてです。21年度の借入総額は813億円ですが、減債基金の残高から差し引いた実質残高は約1500億円です。この金額は、取崩額の4年分という他政令市平均と比較すると400億円多い残高となります。さらに減債基金残高は、毎年100億円以上積み増しされて7年後には約3200億円。川崎市の市税収入と同じ規模となり、政令市平均よりも1000億円以上も多くなります。借入額を差し引いた実質残高でも他都市と比べて極めて多いわけですから、減債基金からの借入を理由に財政が厳しいとは言えないと思いますが、伺います。今は非常時なのですから、毎年約400億円前後の積立額を減らし、コロナ対策、福祉・暮らし、防災のために使うべきです、伺います。

【答弁】

令和2年度におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、社会経済状況が大きく変化する中、市民の生命と暮らしを守る取組を推進してまいりました。

そのような中、歳入の根幹である市税が予算に対して増となる・一方で、歳出面では、医療費助成事業や学校管理費などにおいて感染症の影響による減があったことなどから、結果として減債基金からの新規借入を行わなかったところでございます。

今年度予算においては、感染症の影響による景気の落込みに伴い、市税の大幅な減収が見込まれたことなどから、286億円の新規借入を計上したところでございます。現時点の状況からは、予算で見込んだほどの市税の落込みはないものと考えておりますが、予算全体の

執行状況を見極めながら、適切に対応してまいります。

次に、減債基金への積立てにつきましては、世代間の公平を図るために、市債の満期一括償還に備えて計画的に行っている償還そのものであり、この減債基金から新規借入を行わざるを得ない状況こそが、大変厳しい財政状況であることを示していると考えております。

こうした厳しい財1剣犬況下におきましても、市民の皆様の安全・安心な暮らしを支えるため、現下の喫緊の課題である感染症対策をはじめ、社会保障や防災・減災対策などにも、しっかりと対応しているところでございます。

【再質問】

 「財政が厳しい」という理由について、21年度は「減債基金から新規借入を行わざるを得ない状況」だから厳しいという答弁でした。しかし、収支不足分を減債基金から借入れするという方法をとっている政令市は川崎市だけです。他都市で一般的に行われているように、減債基金へ積み立てる予定の積立額437億円を減らして対応すれば、収支不足も出ませんし、減債基金から借り入れる必要もありません。仮に収支不足額286億円を借り入れても実質残高は約1500億円です。この残高自体、他都市平均と比べても400億円多く、その後、毎年100億円以上積み増しされ7年後には他都市よりも1000億円以上多くなります。現状も将来的にも減債基金残高は、他都市と比べて極めて多いのに、なぜ、厳しいといえるのか、伺います。

【答弁】

減債基金への積立ては市債の償還そのものであり、残高の多寡にかかわらず当然に予算計上すべきものでございまして、この減債基金から新規借入を行わざるを得ない状況こそが、大変厳しい財政状況であることを示していると考えております。

結局、「減債基金から借り入れているから厳しい」としか厳しい理由を言えないままでした。収支不足を減債基金から借入れても他都市よりも数百億円も多い状況なのに、根拠なく「厳しい」ということで、厳しい根拠は破綻しています。