むねた裕之
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医療機関への市の独自支出ゼロ―財政支援は待ったなし

6月11日、6月議会で日本共産党・片柳議員が代表質問を行いました。その中の「医療機関への支援」についての質疑を紹介します。

●質問

医療施設への市独自の支出は、5月補正も今回の補正でもゼロ

医療機関への支援について、市長に伺います。

 議案第103号、6月補正の予算額は、82億2600万円。国や県からの支出金を除いた市独自の支出はわずか14億円です。今、一番求められている医療施設への市独自の支出は、5月補正も今回の補正でもゼロということです。他都市が、医療崩壊を食い止めるため、感染拡大防止に必死になっている医療機関への支援を次々と打ち出しているときに、川崎市のこの姿勢は異常です。

「医療崩壊が強く危惧」-財政支援は待ったなし

 医療機関の現状についてです。全日本病院協会の「病院経営状況緊急調査」では、4月の医業利益はコロナ患者入院受入れ病院では9617万円の赤字、受入れていない病院でも1375万円の赤字ということで、経営状況の悪化は深刻です。全日本病院協会は、「これらの病院への緊急的な助成がなければ、今後の新型コロナウイルス感染症への適切な対応は不可能となり、地域での医療崩壊が強く危惧される」としており、医療機関への財政支援は待ったなしの状況です。

患者受け入れ病院―「頑張るほど赤字に」

コロナ患者受け入れ病院についてです。全国公私病院連盟・邉見会長は、新型コロナ感染症を1人でも受け入れる対策をとることによって「1病院の減収は月1億円以上になる。頑張るほど赤字になる」と訴えています。市内のある民間病院では、市からの要請があり、4月から市から依頼を受けた患者を受け入れるために設備を改造し一般患者とは別の動線を設け、一般患者の入院制限も行って感染疑いのある方も8人受け入れるために16床の空き病床も確保しました。これに対応するための人件費や設備諸経費は全部持ち出しです」と述べています。患者を受け入れるための病床を、1つ空けるだけで3万円の収入減、16床だと月では1440万円の減収となります。市からの依頼患者を受け入れるための設備改修費などに1000万円すでに支出しており、この病院は4月だけで7000万円の赤字が出ています。5月補正、6月補正の緊急対策事業費では、県からの支出金により高度・重症医療機関に500万円、協力病院に200万円を出しますが、これでは全く足りません。しかも、市はこういう病院に対して、協力要請をしておきながら、自分では1円もお金を出していないのです。市は協力要請を受けてくれた病院に対しては、当然その損失補填はすべきです、市長に伺います。

受入れ病院以外の病院―持続化給付金では足りない

受入れ病院以外の医療機関についてです。神奈川県保険医協会の緊急アンケートでは、保険診療収入が減少した医療機関は実に87%にのぼり、そのうち4割超の医療機関が「20%以上の減収」と回答。「リース代やローンが払えない」「いつまで持ちこたえられるかわからない」などの声を紹介し、「とりわけ開業から日が浅い医療機関は倒産の危機に瀕している」と訴えています。こうした医療機関への経営支援について、5月臨時会で市は「持続化給付金の活用を」という答弁でした。しかし、こうした医療機関でも全日本病院協会の調査で示しているように、全国平均1375万円の赤字となっています。例えば、ビルのテナントを借りている開業医は、テナント料だけで月100万円近くかかり、その他の医療機器のリース代や患者の減少で、月数百万円も減収となっています。市は、こうした医療機関に対して、持続化給付金で十分と考えているのか、市長に伺います。

●答弁

今般の未曽有の感染症拡大に際して、医療崩壊を避け、市民の命を守るためには、神奈川県と県下基礎自治体が協働して広域医療モデルとしての「神奈川モデル」を構築し、適切に運用していくことが重要であると考えておりまして、そのなかで市立3病院が積極的に役割を担うとともに、複数の民間病院にも御協力いただいていることに大変感謝いたしております。

神奈川モデル協力病院においては感染りスクと合わせて、新型コロナ患者の受け入れにあたり、急を要しない入院・手術の抑制などに伴う減収が生じていると伺っていることから、現在、県と連携してこれら病院に対する補償を含めた支援制度の創設を早急に進めているところでございます。

その中では、県の交付金等事業以外の本市独自の支援制度も想定し、先月の臨時会及び本定例会におきまして補正予算を計上したところでございまして、県の交付金等事業の詳細決定を受けて、早期に医療機関への交付手続きを進めてまいります。

●再質問

受入れ病院―県からの支出金では全然足りない

 「協力要請を受けてくれた病院に対しては、損失補填をすべき」という質問に対して、「本市独自の支援制度も想定し・・補正予算に計上した」という答弁でした。しかし、実際は5月補正も6月補正も医療施設に対して市が独自に支出したお金はゼロです。市は協力要請をしておきながら、1円もお金は出していないのです。協力病院は毎月1億円近く赤字が出ている状況で、県からの支出金500万円や200万円では、全く足りないのです。このままでは協力病院が、次々と倒産の危機に陥ってしまいます。こういう状況でも市は患者受け入れ病院に対して、全く市独自の予算を組むことは考えていないのか、伺います。

受入れ病院以外の病院―国の補正待ちではつぶれてしまう

 受入れ病院以外の医療機関への財政支援について、市は、「国の2次補正予算案で、無利子・無担保の融資」の活用をという答弁でした。しかし、開業間もない医療機関にとって、無利子無担保の「特別貸付」は使えないのです。また、国に「財政支援を行うよう提言している」ということですが、国の補正を待っていては、本当につぶれてしまいます。早急に本市独自の医療機関への補助制度を作るべきです、伺います。

市の病床数、医師数、ICU設置数は政令市で最低レベル

 全日本病院協会は「緊急の助成がなければ、コロナへの適切な対応は不可能となり、医療崩壊が危惧される」と述べていますが、今回の市長の答弁では、全く危機感が感じられません。市長は、今の川崎市の医療供給体制を把握しているのでしょうか。川崎市の病床数は人口10万人当たり716床で政令市ではワースト2位、医師数では231人でこれも政令市ワースト3位、ICU設置数は4.6か所でワースト4位と川崎市の医療供給体制は、政令市では最低レベルです。この状況では、とても第2波には耐えられません。市長は、このままではコロナ第2波には耐えられず、医療崩壊に陥るという危機意識はないのか、伺います。

●答弁

県との役割分担を踏まえ、現時点では、本市で想定している全事業について県の交付金を財源として、必要な支援を実施することとしております。

また、経営状況が悪化している医療機関への支援につきましては、国に対して要望してまいりたいと存じます。

今後につきましても、現在確保している病床を活用した運用を継続するとともに、引き続き県と連携し、第2波等の感染拡大に備えて適切な医療提供体制の維持・充実に努め、国・県・市の役割分担のもと、市民の皆様の命と健康を守る医療体制の構築を進めてまいります。

●再々質問

県や国頼みでは間に合わない、支援は待ったなしという認識はないのか

 「県の支出金では足りない」「国の補正待ちでは遅い」ことを指摘して、「市の独自支援を」と質問しましたが、答弁は「県の交付金を財源に」と「国に対して要望」するということでした。しかし、国の第2次補正には、医療機関への減収補填は入っていません。これらの医療機関の従事者の給与は2割カット、一時金はゼロという声も聞かれます。医療従事者の雇用を守るためにも、医療機関の経営崩壊を防ぐためにも、県や国頼みでは間に合わない、支援は待ったなしの状況だという認識はないのか、伺います。

●答弁

新型コロナウィルス感染症の拡大に対応する医療提供体制の構築及び医療機関支援につきましては、国・県・市の役割分担のもと、適切かつ着実に実施してまいります。

●最終意見

国の補正待ちにしないで、市独自の減収補填を

医療機関への支援について、「県の交付金で」「国に要望する」ということでした。しかし、市が協力要請をしたのに、市独自にはお金を1円も出さないという姿勢は、あまりにもひどい。医療機関は、経営破綻一歩手前の状況です。国の補正待ちにしないで、市独自の減収補填を強く要望します。