むねた裕之
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新年度予算案について―財政力はトップなのに福祉は平均以下

新年度予算案について、予算学習会が中止になったため、報告予定であった内容を報告します。

(予算案の財政力・健全化)

市税収入は6年連続過去最大の昨年と同規模

市税収入・・新年度一般会計予算の規模は、前年度比334億円増の7925億円で6年連続、過去最大。市税収入は、前年度比3億円減の3634億円で6年連続過去最大の昨年度とほぼ同規模。これは個人市民税が30億円増、固定資産税21億円増など人口増、市民からの税収増によるものです。

政令市唯一の普通交付税不交付など政令市トップの財政力

財政力・・財政力指数は、政令市トップで、4年連続、政令市で唯一の普通交付税・不交付団体となっています。2018年度決算では、財政健全化指標は、すべて基準値を下回っており、極めて優良。一人当たりの市債残高は、政令市の平均よりも7万円低く、借金の負担額が少ないのが特徴です。川崎市の人口増加率、生産年齢人口割合ともに政令市で最も高く、人口推計でも今後10年間は増加を続けるため市税収入の増加は今後10年間続くと予想されます。このように、市税収入、財政力指数、財政健全化指標のどれをとっても、川崎市は政令市でトップクラスの財政力を持っています。

(減債基金)

減債基金残高は政令市の約2倍の2204億円、7年後には3100億円を超える

減債基金・・一般会計分でみると2204億円となりました。一人当たりの市債残高は政令市平均以下なのに、減債基金残高は政令市平均の約2倍にもなります。7年後には3100億円を超え市税収入額に匹敵するほどになります。政令市の減債基金残高は、取崩額の平均4年分ですが、本市の7年後の残高は、その間の平均取崩額の7年分にもなり、金額にして約1300億円も多く、明らかに余剰過多の状況です。

(財政状況)

「財政が厳しい」という根拠一つもない

「収支不足による減債基金からの借入」という理由・・他政令市では、収支が不足する場合は、通常、基金への積立額を取崩して対応しています。川崎市でも、収支の足りない分は、減債基金の積立額431億円から減らして対応すれば、収支不足も出ないし、借り入れる必要もありません。他政令市ではそういうやり方で収支不足を出さないのが普通です。ところが、川崎市は積立額を取崩さず、そのまま積み立てて減債基金から借り入れすることで収支不足があるように見せています。こんな方法をとっているのは川崎市だけです。

減債基金からの借入累計が667億円あることが、財政が厳しい理由になっていますが、減債基金残高は、借入額を差し引いても1537億円あります。他の政令市の残高は取崩額の4年分ですから、1130億円で十分です。これだけ見ても川崎市は他都市よりも基金残高は400億円多くあり、この余剰分は今後8年間どんどん増え続けて1300億円にもなります。

収支不足の額は過大・・120億円という収支不足額についてですが、予算の収支不足額も決算と比較すると毎年過大に計上されています。15年度は87億円、16年度は39億円、17年度は55億円、18年度は63億円と収支不足額は平均60億円過大に見積もられています。

「台風被害への対応」を厳しい理由・・台風被害対応の予算額は82億円ですが、台風被害防止のためとは直接関係のない羽田連絡道路のための浚渫費用30億円が大半を占め、それを除くと市の負担分は38億円です。さらに、防災のための予算である国土強靭化・地震防災対策の予算は5億円の減額。消防力・救急医療体制の予算も6億円の減額。災害時の機能強化、施設の耐震化のための上下水道の予算も13億円減額と大幅に削減されるなど防災予算自体は、削減されているのが現状です。

(社会保障)

政令市で最も高い市民税を払っているのに社会保障費(扶助費、民生費)は、平均以下

「社会保障費の増大」という理由についてです。社会保障費である扶助費は、前年度比で131億円増ですが、これは保育所増設等のためにどうしても必要な費用であり、増加した部分のほとんどは国や県からの補助から賄われるので、扶助費の経常収支比率は18年度決算では18.6%にすぎません。しかも、一人当たりの扶助費の額は引き続き政令市平均を下回り、1人当たりの民生費(168000円)は、政令市平均(188000円)よりも2万円低い状況。

一方、一人当たりの個人市民税は、政令市平均より2万円以上高く、政令市トップの8万4000円です。市民にとっては、政令市で最も高い市民税を払っているのに福祉の予算は平均以下で、納得できるものではありません。

小児医療費助成制度「小6まで」は県内最低

・小学校6年生まで・・県内33市町村の中で最低、政令市の中でも最低レベル/所得制限をなくすのに、17億円ででき3万人以上の世帯が医療費無料に

認可保育所に入れない児童は3300人もいるのに増設は1800人だけ

・1月時点で認可保育園に入れなかった児童は3300人以上に。しかし新年度の認可保育園の増設は1800人分しかない。待機児童数は政令市でも最低レベル

特養ホームの待機者は2666人もいるのに増設は100床のみ

・特養ホームの待機者は2020年1月1日現在で2666人、うち要介護5の方が567人もいます。しかし、新年度は1ヵ所100床開設するのみで、新年度予算では新規の整備計画は1ヵ所のみ。

(教育費)

教育予算・・1人当たりの教育費(あ充当一般財源54646円)は、政令市平均(61810円)よりも7000円以上も低い(17年度決算)。教育委員会事務局の予算は、対前年度比8.1%減の1012億円と大幅な削減。

(中小企業・商業・農業支援)

中小企業・所業振興費はただでさえ少ないのに、さらに減額

中小企業、商業振興の予算・・16億円の減額で大幅削減された。都市農業の振興の予算も減額された。1人当たりの商工費(18262円)は、政令市平均(23635円)よりも5000円以上も低い。(17年度決算)1人当たりの農林水産業費(330円)は、政令市平均(2259円)の7分の1。

(臨海部の大規模開発)

臨海部の大規模事業は大幅増額され、2本の橋と埋立だけで171億円

新年度の予算・・港湾局予算は一般会計で104億円となり対前年度比34.7%増と大幅に増額され、臨海部の大規模事業を含む臨海部活性化予算は、18億円増の199億円で大幅な増額となりました。中でも羽田連絡道路に88億円、臨港道路東扇島水江町線に54億円、東扇島堀込部埋立に29億円と3事業だけで171億円にも上るなど臨海部の大規模事業の予算が突出しています。

橋げた移設のために多摩川浚渫30億円、また埋まる可能性も

羽田連絡道路・・橋げた設置のための船の航路が、台風19号で埋まったために、多摩川河川内の浚渫工事費用として30億円が計上された。すでに事業費は当初217億円から271億円に膨れ上がっている。また、台風が来ると航路がまた埋まり、再々度浚渫の可能性もあるのでさらに膨れ上がる可能性も。

補修が必要な橋は165本もあるのに、一本の橋に980億円

臨港道路東扇島水江町線・・新年度予算54億円で、これまでの事業費総額は570億円になります。この橋は、昨年、耐震設計の見直し、地盤改良の追加等により事業費は540億円から980億円に突然変更され、しかも、議会や市民に知らされる前に、市長が独断で了承したものです。

その一方で、築60年以上の橋が市内には10本あり、その7本が架け替えの計画もなく、その他に修繕が必要な橋が市内に165本あり、その総額は620億円です。臨港道路東扇島水江町線の整備事業は中止をし、市民生活に必要な橋梁の架け替え、維持補修こそ早急に実施すべきです。