むねた裕之
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代表質問(決算)-政令市トップの財政力を少子化・防災対策に

9月11日、日本共産党を代表して大庭裕子議員が代表質問に立ちました。決算における川崎市の財政は、あらためて政令市トップであり、「財政が厳しい」という根拠は一つもなく、減債基金残高は、他の政令市の2倍、8年後には3000億円に達することがわかりました。今すぐに使っても問題のない財源が、この10年間で1500億円以上あることが明らかになり、この財源を子育てなど少子化問題や防災対策に投資するよう要望しました。以下にその内容を紹介します。

【質問】

2018年度決算の特徴について、市長に伺います。

市税収入は5年連続過去最高

2018年度一般会計決算では、歳入は前年度比で146億2500万円増の7153億1600万円、歳出は153億7800万円増の7128億9200万円となり、実質収支は1億9200万円のプラスとなりました。歳入では、市税収入が前年度比で418億9100万円増の3530億7700万円で、6年連続の増収で5年連続の過去最高を記録しました。これは、個人市民税394億6200万円の増、固定資産税16億4900万円の増など、県費負担教職員の市費移管、人口増、市民からの税収増によるものです。川崎市の人口増加率は政令市で最も高く、人口推計でも今後11年間は増加を続けるため市税収入の増加は今後10年間は続くと予想されます。

財政力指数は政令市トップで4年連続普通交付税の不交付団体

財政力指数は、引き続き政令市トップで1を超え、4年連続、政令市で唯一の普通交付税、不交付団体となっています。基準財政収入額が前年度より大幅に増え、財政力指数は前年度より増加して1.016となり財政力をさらに強めています。財政健全化指標についても、すべての指標で早期健全化基準を大きく下回り、極めて優良です。以上のように18年度決算では、財政が厳しいという指標はどこにも見当たりません。

減債基金は他の政令市の2倍、8年後には3000億円を超える

しかし、18年度の「決算見込みの概要について」では、依然として「厳しい財政環境」と述べています。この「財政が厳しい」という根拠についてです。この間の質疑では「減債基金からの借入」を厳しい理由に挙げています。しかし、減債基金は一般会計分でみると100億円積み増しをして2304億円となりました。一人当たりの市債残高は政令市平均以下なのに、減債基金残高は政令市平均の2倍にもなりますし、これは取崩額、いわゆる市債への償還額の7年分にあたります。減債基金からの借入額累計432億円を差し引いても現在の実質残高は、約1900億円にもなり、政令市平均の4年分をはるかに上回ります。8年後には3058億円と市税収入額に匹敵するほどになります。本市の8年後の残高は、その間の平均取崩額の8年分にもなり、他の政令市平均の4年分と比べると金額にして約1600億円も多くなります。以上のように、現時点でも将来的にも「減債基金からの借入」を「財政が厳しい」根拠とすることはできないし、それ以上に他都市と比べて残高の金額が多すぎます。川崎市にとって8年後、3000億円を超えるような減債基金残高がなぜ必要なのか、市長に伺います。

減債基金の積立額を取崩せば、収支不足も出ず借入れる必要もない

この間の質疑では「収支不足が出ている」ことも「財政が厳しい」理由にしていました。18年度の「決算見込みの概要」でも収支で足りない分を「減債基金から133億円の新規借入」で補うとしています。ところが減債基金は、18年度決算では453億円も積み立てをして、100億円も積み増しをしています。本来なら収支の足りない分は、減債基金の積立額から減らして対応すれば収支不足も出ないし、借り入れる必要もありません。他の政令市もそういう基金を取り崩して対応するのが普通であり、減債基金から借り入れて収支不足に対応している政令市は川崎市だけです。市長は、積立金を減らして対応することについて、将来的に「市債の償還財源の確保に支障をきたす」という答弁でした。しかし、減債基金からの借入をせずに、積立額を減らして対応しても10年後の減債基金残高は2807億円、取崩額の9年分、実質公債費比率は9.1%で全く問題はありません。

市民税は政令市で最高額なのに、扶助費は他の政令市の平均以下

さらに市長は、「扶助費の増大」を「財政が厳しい」理由に挙げています。扶助費は、前年度比で46億円増ですが、これは保育所増設等のためにどうしても必要な費用であり、増加した部分のほとんどは国や県からの補助から賄われるので、扶助費の経常収支比率は18.6%にすぎません。しかも、一人当たりの扶助費の額は引き続き政令市平均を下回っています。一方、一人当たりの個人市民税は、政令市平均より2万円以上高く、政令市トップの8万4000円です。市民にとっては、政令市で最も高い市民税を払っているのに福祉の予算は平均以下で、納得できるものではありません。「福祉の増進」という地方自治体の役割からみても、「社会保障費の増大」を「財政が厳しい」という根拠にすべきではありません、市長の見解を伺います。

以上のように、減債基金からの借入、収支不足、扶助費の増大は、どれも「財政が厳しい」という根拠にはなりません。これ以外に「財政が厳しい」という根拠はあるのか、伺います。

【答弁】

はじめに、減債基金への積立についてでございますが、これは、資金を内部に留保するためのものではなく、市債の満期一括償還のために計画的に行っている償還そのものでございまして、将来世代の行政需要の対応への支障とならないよう、責任をもって行う必要があると考えております。

次に、社会保障費の状況についてでございますが、政令市比較で見ますと、事業費全体では、本市の市民一人あたりの支出は低く見えますが、本市が必要な社会保障にしっかりと取り組んでいることは、扶助費に係る一般財源が平均を上回っていることから、はっきりと見てとれるところでございます。

次に、財政状況についてでございますが、市税収入は、納税者数の増などに支えられているものの、ふるさと納税の拡大や法人市民税の国税化等の影饗を強く受けているため、当面の措置といたしまして、平成30年度決算では、減債基金から133億円の借入を行うなど、大変厳しい状況でございます。

【再質問】

「財政が厳しい」という根拠は一つもない

「財政が厳しい」という根拠についての質問に対し、答弁では「減債基金から133億円の借り入れ」を理由にあげました。しかし、他都市もおこなっているように積立額453億円から取り崩して対応すれば、収支不足も出ず借り入れる必要もありません。そのように対応しても残高は2171億円にもなり、取崩額の6年分です。他都市の取り崩し額4年分と比べても2年分、760億円ほど多いのです。また、将来的にも8年後以降には3000億円を超え、市税収入に匹敵する額にもなり、「財政が厳しい」という状況は、どこにも見当たりません。いったい何を根拠に「財政が厳しい」というのか、再度伺います。

扶助費、社会保障費の質問に対して、「子育て環境の整備や高齢者・障碍者施策と・・バランス良く推進していく」という答弁でした。しかし、子育て分野では、小児医療費助成制度や認可保育園の不足、高齢者分野でも特養ホームの不足など他都市と比べても極端に遅れている分野があるわけです。「バランス良く」というのなら、まず、それらの分野を推進するべきです。

減債基金は8年後、他の政令市よりも1600億円多くなる

減債基金への積み立てについて、「計画的に行っている」という答弁ですが、計画を見ても8年後以降の残高は、3000億円以上、取崩額の9年分、他都市と比べて約1600億円も多い残高になるのです。「なぜ、3000億円も必要なのか」という質問に対しては答弁がありませんでしたが、あきらかに多すぎる残高ですし、半分の残高で十分足ります。また、「将来世代の行政需要に対応」するためという答弁ですが、将来世代の対応というのなら、これから対策に30年以上かかる少子化対策や多額の費用がかかる防災対策にこそ、減債基金への積立額を減らして、今からでも投資すべきです、伺います。

【再質答弁】

本市におきましては、当面の措置といたしまして、やむを得ず減債基金からの新規借入を行うなど、大変厳しい財政状況でございます。

本市が、収支不足への対応として、減債基金からの「借入れ」という手法を選択するのは、財政の透明性と規律を損なうことのないようにするためであり、減債基金への所要額の積立てを繰り延べたり、使還宣Eを超えて取り崩すという手法は、財政の実態を見えにくくするものであります。

本市を取り巻く厳しい財政環境の中にあっても、将来を見据えて乗り越えなければならない課題に的確に対応していくことが重要でございますので、将来の市債の償還に支障をきたさない範囲で、減債基金からの新規借入を行いながら、「必要な施策・事業の着実な推進」と、財政の健全化による「持続可能な行財政基盤の構築」の両立を目指し、市政運営を行っているところでございます。

【再々質問】

「財政が厳しい」とする目的は、市民の支出を抑えるため?

「財政が厳しい」という根拠について、答弁では再度「減債基金からの借入」をあげました。しかし、減債基金から借り入れても2000億円を超え、将来的に3000億円にも達する残高をみれば、財政が厳しいという根拠にとてもならないことは、今まで述べたとおりです。

また、答弁では、借入という手法をとった理由について「財政の透明性と規律」をあげています。しかし、他都市が借入という手法をとらなかったことによって「財政の透明性や規律」が損なわれたという話は聞いたことがありません。しかも、財政状況では川崎市より厳しい他の政令市では、基金への積立額を取り崩して収支不足が出ないようにして財政は大丈夫だということを市民に示しているのに対し、財政力トップの川崎市は、わざわざ借入という手法をとって収支不足が出たように見せて、「財政は厳しい」と市民にアピールしているのです。市民に対する姿勢が他都市と比べてあまりにも違います。結局、市がこの手法をとる最大の目的は、市民に対して支出を抑制することにあるのではないですか、伺います。

借入という手法をとるもう一つの理由に、この手法をとらないと「財政の実態を見えにくくする」ことを挙げています。しかし、この手法をとり「財政が厳しい」とすることによって、かえって市の財政の実態、例えば政令市トップの財政力、異常な減債基金の残高、きわめて優良な財政健全化指数などが見えなくなってしまうのではないですか、伺います。

【再々質答弁】

減債基金からの借入額を明らかにしている理由につきましては、収支不足が生じている財政状況を市民の皆様に正しくお示しし、説明責任を果たすことを目的として、減債基金からの「借入れ」という手法を選択しているものでございまして、福祉や暮らしの支出を抑制するためのものではございません。

将来を見据えて、乗り越えなければならない課題の解決に向けては、将来の市債の償還に支障をきたさない範囲で減債基金からの借入れを行いながら、しっかりと対応しているところでございます。

【最終意見】

減債基金を取崩し、1500億円を少子化・防災対策のために!

減債基金からの借入という手法について、「福祉や暮らしの支出を抑制するためのものではない」という答弁でした。そうであるならば、「借入」という事実だけを示せばいいわけで、「財政が厳しい」と言う必要もないし、そもそもそれは事実ではありません。さらに「将来を見据えて、乗り越えなければならない課題の解決」のために使うという答弁でした。まさに少子化対策や防災対策などは、将来、乗り越えなければならない課題であり、「抑制する」どころかもっと推進する必要がある課題です。しかも一朝一夕ではできないものであり、だからこそ今から手を打たなければならない課題です。一方、川崎市の財政は、今後の人口増、財政力、減債基金の状況からみて、今後10年間でこれらの分野にさらに1500億円の投資をすることは可能です。減債基金の積立額の一部を取り崩して、これらの課題にさらに投資することを強く求めます。