むねた裕之
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代表質問(予算案)-政令市トップの財政力と減債基金の貯め込み金

2月26日、日本共産党を代表して宗田裕之が代表質問を行いました。予算案の特徴についての質疑を紹介します。

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◎質問

市税収入は6年連続過去最大、政令市唯一の普通交付税不交付など政令市トップの財政力

最初に予算案の特徴についてです。

 新年度一般会計予算の規模は、前年度比225億円増の7591億円で5年連続、過去最大。市税収入は、前年度比158億円増の3637億円で6年連続過去最大。これは個人市民税が111億円増、固定資産税24億円増など人口増、市民からの税収増によるものです。財政力指数は、政令市トップで、3年連続、政令市で唯一の普通交付税・不交付団体となっています。2017年度決算では、財政健全化指標は、すべて基準値を下回っており、極めて優良。一人当たりの市債残高は、政令市の平均よりも7万円低く、借金の負担額が少ないのが特徴です。川崎市の人口増加率、生産年齢人口割合ともに政令市で最も高く、人口推計でも今後11年間は増加を続けるため市税収入の増加は今後10年間続くと予想されます。このように、市税収入、財政力指数、財政健全化指標のどれをとっても、川崎市は政令市でトップクラスの財政力を持っています。

減債基金残高は政令市の1.8倍の2223億円、8年後には3058億円に

減債基金は、一般会計分でみると2223億円となりました。一人当たりの市債残高は政令市平均以下なのに、減債基金残高は政令市平均の1.8倍にもなります。8年後には835億円増の3058億円と市税収入額に匹敵するほどになります。これは昨年度、決算時の推計よりも29億円増額されており、想定以上に減債基金残高が増加していることを示しています。政令市の減債基金残高は、取崩額の平均4年分ですが、本市の8年後の残高は、その間の平均取崩額の8年分にもなり、金額にして約1600億円も余剰となっており、明らかにため込みすぎの状態です。川崎市にとって8年後、3000億円を超えるような減債基金残高が、なぜ、必要なのか、市長に伺います。

減債基金の積立額を減らせば収支不足も出ず借入も必要ない

 市長は、施政方針演説で本市の財政状況について「厳しい状況が続く」として、「収支不足による減債基金からの借入」と「社会保障費の増大」を理由にあげました。

「収支不足による減債基金からの借入」という理由についてですが、収支の足りない分は、減債基金の積立額451億円から減らして対応すれば収支不足も出ないし、借り入れる必要もありません。他の政令市もそういう基金を取り崩して対応するのが普通であり、減債基金から借り入れて収支不足に対応している政令市は川崎市だけです。

収支不足額も減債基金借入額も過大に予想

さらに収支不足の額についてですが、予算の収支不足額も決算と比較すると毎年過大に計上されています。15年度は87億円、16年度は39億円、17年度は55億円と収支不足額は平均60億円過大に見積もられています。19年度予算の収支不足額も収支フレームでは158億円だったのに予算では115億円となり、決算ではさらに減額されることが予想されます。収支不足額もあまりにも過大です。19年度の減債基金からの借入額も、収支フレームでは、借入総額708億円だったのが610億円と98億円も減額されています。収支フレームの借入額の推計はあまりにも過大です。

収支不足、減債基金からの借入は、財政が厳しい根拠にはならない

以上のように収支不足額、借入額が過大に見積もっており、しかも収支不足は減債基金への積立額を減らして対応すれば、収支不足も出ず借入も必要もありません。「収支不足による減債基金からの借入」は「財政が厳しい」という根拠にはならないと思いますが、市長に伺います。

政令市で最も高い市民税を払っているのに扶助費(社会保障費)は、平均以下

「社会保障費の増大」という理由についてです。社会保障費である扶助費は、前年度比で74億円増ですが、これは保育所増設等のためにどうしても必要な費用であり、増加した部分のほとんどは国や県からの補助から賄われるので、扶助費の経常収支比率は17年度決算では18.4%にすぎません。しかも、一人当たりの扶助費の額は引き続き政令市平均を下回っています。一方、一人当たりの個人市民税は、政令市平均より2万円以上高く、政令市トップの8万4000円です。市民にとっては、政令市で最も高い市民税を払っているのに福祉の予算は平均以下で、納得できるものではありません。「福祉の増進」という地方自治体の役割からみても、「社会保障費の増大」を「財政が厳しい」という根拠にすべきではありません、市長の見解を伺います。

◎答弁(市長)

はじめに、減債基金残高につきましては、一定の条件 のもとで将来推計を行っているところでございまして、 平成31年度予算編成時においては、平成39年度に3千億円に達するものと推計しております。 この減債基金への積み立ては、資金を内部に留保するためのものではなく、市債の満期一括償還のために計画 的に行っている償還そのものでございまして、将来世代 の行政需要の対応への支障とならないよう、責任をもって行う必要があると老えております。 次に、減債基金を活用した収支不足への対応について でございますが、本市におきましては、財政の透明性と 規律を確保するため、「借入れ」という手法を選択して おりますが、ルール通りに積み立てを行わない「繰り延ベ」や、対象となる市債の償還額を超える「取り崩し」 という手法は、収支不足を見えにくくしているに過ぎず、 実際に収支不足が生じているという事実は変わるものではございません。 次に、財政状況についての御質問でございますが、本市におきましては、総合計画第2期実施計画に基づき、 「最幸のまちかわさき」の実現に向け、中長期的な視点を持ちながら、子育て環境の整備や高齢者・障害者施 策などの「安心のふるさとづくり」と、成長が見込まれる分野の産業の振興に取り組むとともに、都市拠点や交 通基盤などの社会資本を計画的に整備し、我が国の持続 的な成長を牽引する「力強い産業都市づくり」、さらに、 災害対策などの「基盤づくり」をバランス良く推進しているところでございます。

一方、市税収入は、納税者数の増などに支えられているものの、ふるさと納税の拡大や法人市民税の国税化等 の影響を強く受けているため、当面の措置といたしまし て、減債基金からの新規借入金を115億円計上するなど、大変厳しい財政状況でございます。 しかしながら、このような財政状況におきましても、 将来を見据えて乗り越えなければならない課題にいち早く対応していくことが重要でございますので、今後につきましても、「必要な施策・事業の着実な推進」と、 財政の健全化による「持続可能な行財政基盤の構築」の 両立をめざし、市政運営を行ってまいります。

◎再質問

予算案の特徴についてです。                    【市長】

8年後、3000億円を超えるような減債基金残高がなぜ必要か?

「8年後、3000億円を超えるような減債基金残高が、なぜ、必要か」という質問に対して「将来世代の行政需要の対応への支障とならないように」という答弁でした。しかし、財政局の「減債基金の推移」の資料では、8年後以降、取崩額は400億円から500億円となっており、支障となるような事態は見当たりませんが、3000億円が足りなくなるようなどんな事態が考えられるのか、市長に伺います。

他の政令市は、どこも財調、減債など基金を取り崩して収支不足に充てている

 「財政が厳しい」という根拠にあげている「収支不足」と「減債基金からの借入」についてです。他の政令市に対して「収支不足に対応するための財源対策」について議会局・政策調査課に調査を依頼したところ、12政令市から回答がありました。回答があったすべての政令市で「収支不足に対して」何らかの対応をしており、収支不足が出ていない政令市は一つもありませんでした。減債基金残高が取崩額の1年分しかなく、収支不足額が242億円の横浜市も、収支不足や減債基金を理由に財政が厳しいとは述べておらず、収支不足に対しては基金などを取り崩して対応しており、来年度予算案の中でも一言も「財政が厳しい」という言葉はありません。また、収支不足を「減債基金からの借入により対応する」と答えた政令市は一つもなく、減債基金からの借入で対応している市は川崎市だけでした。他の政令市では財政調整基金など基金を取り崩して対応しています。わが党が主張しているように減債基金への積立金を減らして対応している政令市は、仙台市、さいたま市、京都市、堺市など4市ありますが、減債基金からの取崩を理由に「財政が厳しい」としている市は一つもありません。

 「財政が厳しい」という根拠に、ふるさと納税、法人市民税の国税化などを挙げていましたが、これらの影響は政令市ではどこも同じであり、これを理由に川崎市が厳しいとは言えません。他都市の例から見てもわかるように「財政が厳しい」という根拠は一つもないのです。他都市のようにいろいろな基金の積立額を減らして対応すれば、収支不足も出ないのです。

減債基金の借入をして収支不足が出たように見せるのは、福祉予算を抑制するため

それなのに、なぜ、減債基金から借入までして収支不足が出たように見せるのでしょうか。以前の答弁にもあるように、結果的には出ていない収支不足や借入を市民に明らかにすることによって、財政規律、要するに福祉や暮らしの支出を抑制、削減するためではないですか、市長に伺います。

減債基金残高の余剰分(1000億円以上)は貯め込まずに少子化や防災に

 減債基金の残高は、現状でも過剰な金額であり、また8年後には1600億円も余剰な額になります。答弁では「負担を将来世代に強いることのないように」と述べていますが、そうであるならば、将来のために、ため込まないで、少子化や防災、施設の長寿命化対策に、もっと投資すべきです。そうしてこそ生きたお金の使い方であり、将来世代の負担を減らし、防災や人口減少にも対応できるのではないですか、市長に伺います。

◎答弁(市長)

はじめに、減債基金への積み立てについてでございますが、仮に、減債基金にルールどおり積み立てを行わず、 安易に継続的な事業を拡大していった場合には、義務的経費である市債の償還財源の確保に支障をきたすこととなり、結果として、将来の市民の皆様に過度な負担を強 いる事態が生じる懸念がございます。 次に、減債基金からの借入れについてでございますが、 市.民の皆様に、本来あるべき姿からの不足額を明らかにすることにより、財政の透明性と規律を確保し、説明責任を果たすため、この手法を選択しているものでござい まして、福祉や暮らしの支出を抑伶小削減することを目的としているものではございません。 次に、市政運営についてでございますが、先ほども申し上げたとおり、本市におきましては、中長期的な視点 を持ちながら、子育て環境の整備や高齢者・障害者施策 などの「安心のふるさとづくり」と「力強い産業都市づくり」、「基盤づくり」をバランス良く推進しているところでございまして、将来を見据えて、乗り越えなければならない課題の解決に向けて、当面の措置として、減債基金からの借入れを行いながら、しっかりと対応しているところでございます。

◎再々質問

予算案の特徴について市長に伺います。        【市長】

8年後、取崩額3000億円、積立額が6年間ゼロという事態はあり得るのか?

 減債基金への積立についてですが、「8年後、3000億円が足りなくなるという事態はあるのか」という質問に対して、「市債の償還財源の確保に支障をきたす」という答弁でした。ということは、単年度に取崩額が3000億円という事態があるということなのか、また、6年間、減債基金への積立額がゼロという事態がありえるのか、具体的に伺います。

大阪市も横浜市も基金などを取り崩して「収支不足は生じない」としてる

 減債基金からの借入についてですが、「本来あるべき姿からの不足額を明らかにすることにより、財政の透明性と規律を確保する」ためという答弁でした。しかし、「借入」という手法は、どこの政令市もやっておらず、「本来あるべき姿」ではありません。「収支不足額を明らかにする」ためということですが、大阪市も横浜市も基金などを取り崩して「収支不足は生じない」としています。こういう他都市がやっているやり方では、「財政の透明性や規律」が確保できないということなのか、伺います。「透明性」「市民への説明責任」というのであれば、減債基金の実態を明らかにすべきではないですか、伺います。

 減債基金の過剰な額の運用方法についてですが、「将来を見据えて、乗り越えなければならない課題の解決」のために今の利用方法を取るという答弁でした。しかし、少子化対策は、効果が出るのに30年はかかるため、今からやらなければ間に合わないのです。耐震化対策など災害対策は、起きてからでは遅く、待ったなしの状況です。本当に、将来世代のためというのであれば、過剰な部分を、少子化や防災、施設の耐震・長寿命化対策に、もっと投資すべきです。そうしてこそ生きたお金の使い方であり、将来世代の負担を減らすことにつながるのではないですか、市長に伺います。

◎答弁(市長)

減債基金への積み立ては、資金を内部に留保するために行っているものではなく、市債の償還そのものでございますので、今後も責任を持って行ってまいります。

本市では、収支不足が生じている財政状況を、市民の皆様に正しくお示しするために、減債基金からの「借入れ」という手法を選択しているところですが、収支不足が生じているという事実は、対応手法のいかんに関わらず、変わるものではございません。 なお、先ほども申し上げたとおり、将来を見据えて、乗り越えなければならない課題の解決に向けては、将来 の市債の償還に支障をきたさない範囲で、減債基金からの借入れを行いながら、しっかりと対応しております。

以上のように、

「8年後、3000億円が足りなくなるという事態はあるのか」という質問に対して、まったく前回と同じ答弁で、答弁不能となりました。