むねた裕之
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代表質問・リニア新幹線―事故や災害で数千人がトンネル内に/地権者に土地利用の制限が

6月14日、日本共産党川崎市議団は、代表質問で「リニア中央新幹線の安全性と土地所有権について」質問しましたので、紹介します。

リニア新幹線は86%がトンネル/事故・災害で数千人がトンネル内に

リニア中央新幹線についてです。

リニア中央新幹線の大深度地下使用許可に関する説明会が5月10日から18日に行われましたが、市民から多くの疑問や不安の声が出されました。

 その一つが安全性についての疑問です。リニア中央新幹線は、東京・品川―名古屋間286kmのうち86%がトンネルで、川崎市内については地下40~50mを16.3キロのトンネルで結び、非常口は、麻生区片平、東百合丘、宮前区水沢、宮前区梶ヶ谷、中原区等々力に作られます。リニア建設ルートには糸魚川‐静岡構造線など日本でも有数の活断層が多く存在し、最近も震度5クラスの地震がおきています。当然、トンネル内での落盤、浸水、停電、火災事故も想定されます。運航ダイヤは1時間に5本、上下10本が品川―名古屋間を同時に走行しているわけですから、もし何か事故で止まった場合は、8本がトンネル内で停車します。

1000人の乗客を乗務員3人でどうやって地下40mから避難?

1本の列車の定員は約1000人なので、緊急停止した場合、約8000人の乗客がトンネル内に閉じ込められるわけです。JR東海の回答では、1本の列車に乗務員が3人程度ということですから、もし緊急停止した場合、1000人もの乗客をわずか3人の乗務員で避難させなければなりません。乗務員は、全乗客に指示を出し、数キロ先の非常口まで線路下の通路を歩き、非常口下部から40m上の地上に出なければなりませんが、非常口にはわずか2基のエレベータしかありません。

このようにリニア中央新幹線は、ひとたび事故や災害があれば、数千人がトンネル内に閉じ込められ、地上と違って脱出することも救出することも困難となります。このような鉄道が公共交通機関としてふさわしいのかが問われています。

大深度法の「消防隊員の確保」「救急・救助の体制」はあるのか?

 大深度法の「安全の確保に関わる指針」では「円滑な救助活動や負傷者の搬送のための消防隊員の確保、施設管理者と救急・救助関係者の協力体制の構築」などの対策を講じることとしていますが、その計画はありますか、また、JR東海とは、どのような協議や情報提供がありますか、消防局長に伺います。

地権者の所有権は大深度地下にも及ぶ

リニアルート上の地権者の土地所有権についてです。

土地の所有権は、原則「地権者の所有権は上下に及ぶ」と民法第207条で規定され、JR東海も「大深度地下にも土地所有権が及んでいる」と答えています。

地権者は土地利用、建設、売買で制限を受ける場合がある

また、国会でのリニア新幹線の大深度地下使用許可についての質疑では、大深度地下使用の許可を受けている東京外環道で当初「土地利用に制限を課すこともない」としていたにもかかわらず、同時に都市計画事業も認可されたため建設制限がされ権利侵害された事例が紹介されました。しかもこの場合、地権者は建築物を建築する場合に許可を要し、土地・建物を売買する際には届け出をしなければなりません。さらに国交省の都市局長は、大深度地下使用の許可のみの場合でも土地利用が制限される可能性は「皆無ではない」と答弁するなど、地権者の権利が侵害される場合があることを明らかにしました。リニアの川崎市内のルート上で、東京外環道のように将来、都市計画事業の網をかけるということはないと言い切れるのか、伺います。地権者は、土地利用に関して制限される場合がないと言い切れるのか、伺います。土地・建物を建設や売買する場合、許可やJR東海への届け出義務がいるようなことはないのか、伺います。

法務省は、同意なく開発行為を行えば「土地所有権の侵害に当たる」と答弁

2015年の国会質疑では、「地下30m以上についても個々の地権者の同意や承諾が必要では」という質問に対して、法務省審議官は、同意なく開発行為を行えば「土地所有権の侵害に当たる」と答弁。さらに当時の太田国交相は「地元の声に十分に配慮しながら工事を進めるよう、JR東海を指導監督していきたい」と答えています。JR東海は、リニアのルート上の地権者に対しては、井戸があるかどうかの聞取りをしただけですが、国会の答弁通りにすべての地権者に対して承諾が必要ではないですか、伺います。東京外環道では、事前の家屋調査がやられていますが、川崎市もJR東海に対して事前の家屋調査をやるよう指導すべきではないですか、伺います。

消防局長‐安全確保の必要な対策について具体的な情報提供や協議はない

答弁(消防局長)

はじめに、大深度法に定める「安全の確保に関わる指針」における必要な対策につきましては、 JR東海から具体的な内容は示されておりません。 次に、JR東海との協議や情報提供についてでございますが、リニア中央新幹線沿線消防本部から構成される関係消防本部連絡会議において、事業概要説明や工事の進捗状況等について説明を受けているところでございますが、具体的な協議には至っておりません。 また、JR東海から、川崎市内のりニア建設ルートの非常口の工事開始に先立ち、消防局及び管轄する消防署に工事概要説明会が開催され工事の進捗状況等について、個別に情報是供が行われているところでございます。 今後につきましても、JR東海との情報共有及び連絡 体制の強化を図ってまいりたいと考えております。

まち局長―「土地利用の制限」や建設や売買で「相談が必要になる場合も」

答弁(まちづくり局長)

はじめに、都市計画決定についてでございますが、同新幹線につきましては、全国新幹線鉄道整備法に基づき、 交通政策審議会の答申を経て、国士交通大臣がJR東海 に対し建設の指示を行うとともに、平成26年に、工事実施計画の認可を受けたことにより、路線全体が位置付けられていることから、本市として、市域を通過する部 分について都市計画決定する必要はないものと考えております。 次に、士地利用に関する制限につきましては、「大深度 地下の公共的使用に関する特別措置法」いわゆる大深度法の第25条において、認可事業者による事業区域の使用を妨げる行為等の制限が定められております。 なお、同法第37条において、告示の日から1年以内に限り、大深度地下の使用の認可による制限によって具 体的な損失が生じたときの補償についても定められております。 また、土地・建物の建設や売買につきましては、大深度法において認可事業者への届け出等は定められておりませんが、近接して工事を行う場合等においては、個別に同事業者への相談が必要になる場合も考えられます。 次に、地権者に対しての承諾についてでございますが、 大深度地下につきましては、通常利用が行われない空間であり、原則補償すべき損失が発生することが想定され ていないことから、同法においては、個別の地権者の承諾等は定められておりません。 次に、家屋調査につきましては、大深度地下は、一般的に既存建物や地表に損失が発生するような変位を与えるものではないとのことから、実施の予定はありませんが、工事による地盤への影響がないことを確認するため、地表面の変位計測を実施するとJR東海から伺っております。 また、工事中に家屋への影響が出るなどの現象が生じた場合につきましては、状況を確認し、’工事との因果関係がある場合は適切に補償を行っていくと、同社から伺っております。 本市といたしましては、工事に際しては、引き続き周辺への影響に十分配慮しながら、適切な対応を行うよう、 同社に対し.求めてまいります。

(再質問)

地権者は土地利用、建設や売買の場合の制限など大変な不利益を被る

リニア中央新幹線についてです。      

 リニアの安全確保について、JR東海から具体的な情報提供もなく、協議も行っていないという答弁に愕然としました。そんな状況で、工事だけは進めるというのでしょうか。

 リニアのルート上の地権者の土地利用の制限について、大深度法で「許可事業者の使用を妨げる行為等の制限が定められて」いること、土地・建物の建設や売買については、「個別に同事業者への相談が必要になる場合も」ある、という答弁でした。要するに地権者は、土地利用の制限があり、土地・建物の建設や売買する場合でも自由には行えないなど、大変な不利益を被ることになるわけです。

地権者に1軒1軒きちんと説明し承諾をとるべき

また、地権者に対しての承諾について「補償すべき損失が発生することが想定されていない」として大深度法で「承諾は定められていない」という答弁ですが、法務省の答弁では、地権者の同意なく開発行為を行えば「土地所有権の侵害に当たる」として、同意は必要という立場です。土地利用、建設や売買についてこれだけの損害、不利益が生じるのに、地権者に、このような事実を知らせないまま、トンネル工事を進めてよいのでしょうか。

 ルート上のすべての地権者に対して、土地利用の制限、建設や売買についての制限などを1軒1軒きちんと説明し承諾をとるべきだと思いますが、伺います。

まちづくり局長―損失が発生しないため「承諾」は法律で定められていない

答弁(まちづくり局長)

大深度法は、公共の利益となる事業の円滑な遂行と、大深度地下の適正かつ合理的な利用を図ることを目的としており、原則補償すべき損失が発生することが想定されていないため、個別の地権者の承諾につきましては、 同法では定められておりません。 本市といたしましては、法令に沿って手続きを進めているとJR東海から伺っておりますが、引続き地権者を はじめ、周辺住民の皆様に対して、丁寧な説明を行うよう、同社に対し求めてまいります。

(再々質問)

土地利用制限など地権者に「損失が発生しない」という理屈は成り立たない

地権者の承諾について、「補償すべき損失が発生することが想定されていない」、「大深度法で定められていない」ため、承諾は必要ないという趣旨の答弁でした。

 しかし、本当に「損失が発生しない」のでしょうか。JR東海も「井戸、温泉井等が地下数百メートルまで掘削されている」ことを挙げて所有権は及ぶことを認めています。都市部では、高層マンションの建設、地下複数階に及ぶ商業施設、地下鉄の建設など実際に使用したり、大深度に影響を及ぼす事例は、いくらでもありえます。そうなれば、当然、地権者は土地利用が制限されたり、建設や売買において不利益を被ることも考えられます。「損失が発生しない」からという理屈は成り立ちません。

自分の家の地下を掘る工事に、同意も得ずに工事を始めること自体異常

 次に「大深度法で定められていない」からといって承諾は必要ないといえるのでしょうか。民法上、所有権は上下に及び「下」方向には制限はありません。それゆえに法務省も同意なく開発工事を行えば「土地所有権の侵害に当たる」と述べていますし、山間部のトンネル工事の際には、いくら大深度であっても地権者には所有権があるため同意は必要です。今回のように自分の家の地下を掘る工事を始めるのに、説明も同意も得ず、回覧板を回しただけで工事を始めること自体異常です。

地権者に不利益が生じるような場合について説明し、承諾を

 市はJR東海に対して「説明を行うよう求める」としていますが、ただ「説明する」だけではなく、地権者が不利益を被る事態は起こりえるのですから、地権者を1軒1軒訪問して、不利益が生じるような場合について説明し、承諾を得て、東京外環道のように事前の家屋調査をするようにJR東海に求めるべきではないでしょうか、伺います。

局長―地権者に使用制限や損失の補償について正確に説明するようJR東海に求める

答弁(まちづくり局長)

大深度法におきましては、地権者の承諾をとることは定められておりませんが、本市といたしましては、同法において定められております、事業区域の使用を妨げる行為等の制限や、具体的な損失が生じたときの補償等の内容について、地権者に対し、正確で、分かりやすぃ説明をするよう、 JR東海に対し求めてまいります。