むねた裕之
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講演会―国際コンテナ戦略港湾政策

5月22日、日本共産党川崎市議団主催で小出修三先生を講師に「国際コンテナ戦略港湾政策の行方」と題して講演会を行いました。

その要旨を紹介します。

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日系製造業の海外現地法人の動向

日系製造業は、為替動向、労働費用の低減化を目的に、中国をはじめアジアの新興国に千三拠点を移す、海外への展開を進めてきました。日系製造業の海外生産比率は輸送機械で48.8%など、年々増加しています。日系製造業にとって海上コンテナ航路で重要なのはアジア関係航路であり、日本のコンテナ港湾の就航航路の多くがアジア地域に限定されています。

しかし、日系製造業が現地で生産されたものの現地販売比率は、北米では94%、欧州84.1%、アジア79.3%とほとんどが現地で消費され、日本への販売額比率は北米1.9%、欧州2.5%、アジア15.5%など日本への製品・商品の輸出はわずかです。また、日本から部品を調達する比率は、北米23.8%、欧州22.6%、アジア20.5%と少ないのが現状です。

このことから、北米・欧州といった艦船・基幹航路のコンテナ船は、減少、又は撤退しているため、長距離・超大型コンテナ船の寄港を必要性は少ないのが現状です。

深刻なコンテナ船不況と日経海運各社の経営状況

リーマンショック以降、特に2010年代のコンテナ船、海運不況は深刻です。主要海運会社による新造大型コンテナ船の就航が相次ぎ、世界的な船腹過剰な状態になり、また、中国などの新興国の経済停滞、貿易量の低迷、海上貨物の輸送需要も低迷したため、海運市況は極度に落ち込みました。日本郵船、商船三井、川崎汽船のコンテナ船(定期船)事業は、近年、ほとんどすべて赤字となり、コンテナ部門はお荷物事業部門となっています。

かわさきファズの失敗に学ぶもの

中核国際港湾地域、FAZという2つの国の政策に沿う形で、川崎港でコンテナターミナルの整備が行われました。税制優遇、補助金といった資金援助があったにもかかわらず、KCTは膨大な赤字を垂れ流し、債務が累積し、役員には川崎市長をはじめ川崎市当局者が就任していましたが、経営は破綻しました。コンテナターミナルには、岸壁長350m、水深15m、当時、世界最大級のコンテナ船が入港、着眼可能な岸壁とガントリークレーンが設置されましたが、川崎港はハブ港として機能しないどころか、KCTは経営破綻しました。

失敗の要因は、①国際コンテナ輸送への無理解と過大な投資計画、②物流システムに不可欠な情報管理システムの欠如、③過大な投資計画による港湾利用料の高額化、④製造企業のサプライチェーン、国際分業の構築の動きとの関係の欠如

川崎港の整備計画―あまりにも過大

川崎市はコンテナ量を2020年代までに現在の4倍の40万TEUと想定していますが、日系製造業の動向、世界のコンテナ需要などを考慮するとあまりにも過大な計画です。仮にうまくいったとしても新たな公害(陸上輸送)が予想されます。