むねた裕之
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代表質問①-「財政が厳しい」という根拠は一つもない

2月27日、日本共産党の市古てるみ議員が代表質問を行いました。

以下に予算案、財政問題での質問と答弁を紹介します。

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(質問)

最初に予算案の特徴についてです。

新年度一般会計予算の規模は、前年度比278億円増の7366億円で4年連続、過去最大です。市税収入は、前年度比407億円増の3479億円で5年連続過去最高です。これは個人市民税が374億円増、固定資産税19億円増など人口増、市民からの税収増によるものです。財政力指数は、政令市トップで、2年連続、政令市で唯一の普通交付税・不交付団体となっています。財政健全化指標は、すべて基準値を下回っており、極めて優良です。一人当たりの市債残高は、政令市の平均よりも10万円低く、借金の負担額が少ないのが特徴です。

減債基金残高は、取崩額よりも100億円積み増しをして2305億円となり、一人当たりにすると政令市平均の1.8倍。この額は、毎年、減債基金から借金返済のための取崩額、約300億円の7年分に当たります。財政規模が川崎市の2倍以上ある横浜市をみると減債基金残高は、16年度決算では914億円で、取崩額のわずか1年分です。川崎の減債基金残高が、いかに過大かがわかります。このように、市税収入、財政力指数、財政健全化指標、市債残高、減債基金残高のどれをとっても、川崎市は政令市でトップクラスの財政力をもっています。

しかし、「川崎市予算案について」では「極めて厳しい財政状況が続く」と述べています。この「財政が厳しい」という根拠についてです。まず「196億円の収支不足が出ている」という理由についてですが、これは収支不足とは言えません。196億円収支が足りないとわかっているのですから、その分を減債基金の積立額から減らして対応すれば、収支不足は出ません。17年度予算でも、185億円の収支不足としていますが、減債基金へは243億円も積み増しをしており、この積み増し分を充てれば、収支は58億円のプラスです。国では基準財政需要額よりも収入額は多いとして不交付団体にしているわけですから、国も収支不足は出ないとみています。それをわざわざ減債基金から借入という形式をとるのは、市民に収支不足が出ているように見せるため、作られた収支不足といわなければなりません。

「減債基金から借り入れている」という理由ですが、市民からすると、自分の貯金から借り入れているから「厳しい」というのは、通用しない根拠です。その「借入額が918億円になる」といいますが、その年度の減債基金の残高は2803億円にものぼり、借入額を差し引いた実質残高は約1900億円。毎年の返済額の5年分で十分すぎるほどの残高です。

「減債基金への積立のルールがあるため」という理由ですが、昨年の決算議会でも述べたように、この「30分の1ルール」は、実質公債費比率を抑制するためのものであり、計算上の一つの基準で、従わなくてもペナルティーはなく、自治体の裁量に任されています。川崎市の実質公債費比率は、16年度決算では7.2%で早期健全化基準値の25%、政令市平均10.2%と比べてもはるかに低く、このルールを守らなければ支障をきたすというレベルではありません。以上のように、「減債基金からの借入」が、「財政が厳しい」という根拠にはならないことは明らかです。これ以外に「財政が厳しい」という根拠はあるのか、市長に伺います。

川崎市の市民一人当たりの個人市民税は、政令市のなかでトップの8万2000円。この額は、政令市平均6万円よりも2万円以上も高い額です。ところが社会保障関連経費である一人当たりの扶助費は、政令市の平均以下です。一方、今年度、臨海部の大規模事業の予算は激増しました。港湾局の予算は、221億円と、前年度の2.1倍、特別会計では5.7倍にもなっています。特に、羽田連絡道路に48.8億円、3月補正予算を含めて81億円、臨港道路東扇島水江町線25億円、東扇島堀込部埋立66.5億円、コンテナターミナル拡充19.4億円など不要不急の大規模事業だけで200億円にものぼります。このように、川崎市は、豊かな財政力を持ち、市民から政令市で最も高い市民税をとっているにもかかわらず、福祉・くらしの予算は抑制し、臨海部の大規模事業への歳出は大幅に増やしているというのが予算の特徴です。

市長は、記者会見で、財政が大丈夫かと問われ「裁量の余地がない。保育所整備をやめればいいのかもしれないが、そうはならない。致し方ない」と述べ、減債基金からの借入を理由に財政が厳しいとして、その原因が保育所整備にあるような報道がありました。なぜ、財政難の原因が、臨海部の大規模事業ではなく保育所整備なのか、市長に伺います。

(答弁)

はじめに、減債基金への積立てについてでございます が、この積立ては、実質公債費比率などの財政指標の調 整や、資金を内部に留保するために行っているものではなく、市債の償還そのものでございまして、必要額の積 立てを繰り延べることは、償還財源に不足をきたし、将 来世代に過度の負担を強いることなることから、ルールどおりに積立てを行うための予算計上は、不可欠なも のでございます。 次に、私が記者会見で申し上げた、減債基金からの借 入の背景についてでございますが、消費税率の引上げ延 期や県費負担教職員の市費移管による人件費の増などの 要因の対比として、しっかり取り組むべき施策の一伊ル して待機児童対策を挙げたものでございまして、子育て 支援がその要因であると申し上げたものではございませ ん。 本市では、市税収入は堅調に推移しておりますが、社会保障や防災・減災対策、都市機能の充実などの財政需 要が増加しており、厳しい財政状況にございます。

とのような財政状況におきましても、将来を見据えて 乗り越えなければならない課題に、いち早く対応していくことが重要でございますので、今後につきましても、 子育て環境の整備などの「安心のふるさとづくり」と臨海部の活性化などの「力強い産業都市づくり」の調和を図りながら、市政運営を行ってまいります。

(再質問)

予算案の特徴についてです。                    【市長】

「財政が厳しい」という根拠についてですが、「財政需要が増加している」からという答弁でした。しかし、人口が増加しているから需要が増加するのは当然であり、国は、その点で基準財政需要額よりも収入額が大きいと判断しており、需要の増加以上に収入も増加しているとしているのです。「財政需要の増加」をもって「財政が厳しい」という根拠にはなりません。結局「減債基金からの借入」以外の根拠はなかったということです。

減債基金への積立ルールについてですが、「将来、償還財源に不足をきたす」恐れがあるからということでした。しかし、そういう「不足をきたす」ような事態が将来あるのでしょうか。今後10年間は、取崩額の平均は369億円、積立額は451億円で、9年後には、減債基金残高は3023億円、取崩額の8年分にも達します。減債基金からの借入をせずに、積立額を減らして対応しても、9年後は2520億円で取崩額の7年分です。7年間も積立額がゼロという事態があるのか、伺います。

10年後以降も、積立額、取崩額ともに400億円から500億円で平準化しており、残高も2500億円を切るような事態は起こりません。このように「将来、償還財源に不足をきたす」ような事態は考えられないのです。それならば、なぜ、この積立ルールを優先しなければならないのでしょうか。このルールは、単なる計算上の目安にすぎません。だからこそ、ペナルティもないし、他の政令市でもやっているように市長の権限で判断できるのです。財政需要よりもルールを優先し積み立て、さらに減債基金からの借入という形をとってまで優先させるというのは、間違いではないですか、伺います。

(再質問の答弁)

本市におきましては、人口の増加などにより、市税収 入は堅調に推移する一方で、財政需要も増加している状況にございます。 こうした中でさらに、消費税率の引上げの延期、ふるさと納税・法人市民税の国税化などの影響を強く受けており、都市部における財政需要に対応するための地方税 財政制度上の措置が十分とはいえないことなどから、本 市の財政は、たいへん厳しいという現状認識は、先ほど 御答弁したとおりでございます。 こうした状況におきましても、必要な市民サービスを安定的に提供していくことが、基礎自治体としての責務 でございますので、平成30年度におきましては、減債 基金からの借入という手法を取りながらも、必要な施策・事業をしっかりと進めるための予算を確保したところでございます。 減債基金からの借入は、収支不足へ対応するため、臨 時的な措置として、やむを得ず行っておりますが、仮に、 減債基金にルール通り積立てを行わない「繰り延べ」という手法を選択した場合には、予算上、収支不足が明ら かにされず、財政状況の実態が見えにくくなることで、 本来、市債の償還に充てるべき財源が、継続的な事業に 使われ、予算規模を増大させることにつながるものでございます。 こうした歳出構造が常態化した状況においては、財政 規律が損なわれ、必要な施策を進めるための財源や、市 債の償還財源を十分に確保することが困難となり、結果 として、市民の皆様に過度な負担を強いることにもなる ものと考えております。 将来にわたって、必要な施策、事業を着実に推進していくためには、持続可能な行財政基盤の構築が不可欠で ございますので、今後につきましても、財政の透明陛と 規律を確保し、責任ある市政運営を行ってまいります。

(再々質問)

予算案の特徴についてです。                    【市長】

将来「7年間も積立額がゼロ」というような「償還財源に不足をきたす」事態があるのか、という質問については、答弁がありませんでした。当然、このような不足をきたす事態は、ありえません。「財政が厳しい」という根拠は何一つないのです。

 では、なぜ「積立ルールを優先させるのか」という質問に対しては、「ルール通り積み立てないと、収支不足が明らかにされず、財政状況の実態が見えにくくなり」、しいては財政規律が損なわれ、歳出が増大するからという答弁でした。ようするに、市民に収支不足をみせないと要望がどんどん膨らみ財政規律が崩れるからということです。まったく、市民を信頼していない、市民にとっては大変失礼な答弁です。積立額を減らせば実際には収支不足は出ないのに、ルール通り積み立てることによって収支不足が出ているように見せかけるというやり方、この本当の目的は、歳出を抑制するためということではないでしょうか。まさに、行革を推進するためなのか、市長に伺います。

(再々質問の答弁)

減債基金への積立は、市債の償還そのものであり、当然に予算計上すべきものでございまして、このことは、本市の財政状況を市民の皆様に正しくお示しするために も、大変重要であると芳えております。 本市の財政は、たいへん厳しく、収支不足が生じているという事実は、対応の手法のいかんに関わらず、変わるものではございません。将来にわたって、必要な施策・事業を着実に推進して いくために、財政の透明陛と規律を確保し、持続可能な 行財政基盤を構築していくことが、責任ある市政運営の 姿でございますので、今後におきましても、財政の健全化に向けた取組を進めてまいります。

(意見・要望)

予算の特徴についてです。

質疑の中で、減債基金への積立額を減らして対応すれば収支不足は出ず、借り入れる必要もないこと、将来的に減債基金は不足するどころか9年後には取崩額7年分という異常に多い残高になることを明らかにしました。結局「財政が厳しい」という根拠は何一つないのです。

「なぜ積立ルールを優先するのか」という質問に対しては、市民に収支不足を見せないと財政規律が崩れ、歳出が増大するという答弁でした。収支不足と言わないと市民がいくらでも要求してくるとでもいうのでしょうか。結局、収支不足が出ているように見せかけて歳出を抑制する、「作り出された収支不足」ではないですか。

 一方で、財政が厳しいと言いながら赤字が分かっている川崎アプローチ線事業は、300億円も掛け、借金を増やしても事業化しようとしています。しかも、事業化のためには、長い時間をかけてようやく整備された「視覚障害者情報文化センター」のある「ふれあいプラザ川崎」や今住んでいる市民を立ち退かせ、市民生活を犠牲にしなければなりません。

 市民には財政が厳しいと言いながら、このような事業は進めるということは、市民的には全く道理がありません。そのことを指摘して、あとは委員会に譲り質問を終わります。