むねた裕之
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決算(経済労働局)―大阪市の中小企業訪問件数は5000社、13000回のマッチング

9月19日、決算特別委員会の総務分科会で、大阪市の事例を紹介しながら、中小企業のマッチング支援、商店街活性化支援について質問したので概要を紹介します。

(〇番号は質問)

中小企業への支援について

大阪市を5月に視察、大阪市経済戦略局の中小企業支援拠点である「大阪産業創造館」を視察/大変参考に/大阪市の施策を紹介しながら、川崎市には良いところを取り入れていくという方向で検討していただきたい

(産業振興財団運営費補助について)

中小企業・製造業への支援で、訪問調査、マッチング、販路拡大などへの支援事業は、どのような事業がありますか?

(答弁)

本市では、国、県、川崎市産業振興財団及び金融機関 等と連携して企業訪問を行う「コーディネート支援活 動・出張キャラバン隊」事業を実施しており、新規事業 展開に活用できる各種施策の情報提供や、課題解決等を 目的に企業訪問を行い、課題や二ーズを的確に捉え、経営改善や販路拡大など、個別の事情に応じたきめ細やか なサポートを行っているところございます。

大阪市でも、川崎の出張キャラバン隊は知られていて参考にしているということでした。

(調査員について)

中小企業への訪問事業で、何人の調査員がいるのか?訪問する調査員は、どのような方か?

(答弁)

「コーディネート支援活動・出張キャラバン隊」事業 におけるコーディネータにつきましては、 4名が活動しているところでございます。 また、訪問するコーディネータにつきましては、大手 製造業のエンジニア経験を活かしたコンサルタントや、 行政機関の外郭団体等で長年、技術移転など中小企業支 援に従事してきた方など、製造業に関する技休珀勺な知識 や経営的なノウハウのある方々でございます。

大阪市の訪問調査員はマッチングナビゲーターと呼ばれ、様々な経験と技術を持つ専門家で約50人もの体制/みなさん、元大手メーカー・商社のOB/電機、機械、化学など様々な分野のトップ企業のOB/この人たちが自分の好きな時間に、自分の関心のある企業を訪問―かなり自由/それぞれの分野の専門家だからこそ、自社では気づかない魅力を発掘できる

(マッチング作業)

実際にマッチングする作業というのは、どのように行われているのか?

(答弁)

「コーディネート支援活動・出張キャラバン隊」事業 におきましては、課題抽出のための新規訪問を行うとど もに、課題に応じた様々な公的施策の活用、経営改善、 販路開拓など、中小企業の個別具体的な二ーズに基づき 多面的な支援を行っているところでございます。 さらに、コーディネータの有する幅広い知識や豊富な 経験に加え、これまで行ってきた中小企業に寄り添った 伴走型支援を通じて培われた数多くの中小企業との信頼 関係やネットワークを活かし、異業種連携や産学連携、 さらに販路拡大など、多様なマッチングを積極的に実施 しているところでございます。

4人のコーディネーターの方が、知識と経験、ネットワークを生かして、伴走型で支援する。

大阪市では、月1回、50人のナビゲーターが集まってマッチング会議を開催/訪問した企業の魅力や技術力を紹介/毎回、カンカンがくがくの討議/マッチングには各分野の専門的な知識がないとなかなかうまくいかない―50人それぞれの専門分野を生かし、広く深く/元大手企業のナビゲーター50人の人脈を生かして情報を交換/他社が持っている技術との活用や販路拡大につなげる/かなり専門分野も人脈も広いのが特徴

(実績)

訪問した中小企業は、何社くらいあるのか?年間、何件訪問し、どのくらいのマッチングを達成しているのか?

(答弁)

「コーディネート支援活動・出張キャラバン隊」事業 におけるコーディネータによる活動件数につきましては、平成28年度は89社、191件となっておりまして、企業間マッチングの件数につきましては、 44件となっております。

大阪市は、年間200社、800件のマッチング/これまでに訪問件数5000社(大阪市内企業13000社ですから約4割)、マッチング活動回数13000回、受注総額145億円-かなりの規模で成功

(事例)

中小企業を訪問して消臭機能素材を開発している企業を発掘/ナビゲーターの方のつながりで大手商社のフットウエアを紹介/協同して消臭機能付きこども靴に/年間10万足のヒット商品/中小企業の新製品開発と販路拡大に

(事業費)

川崎市の「産業振興財団運営費補助事業」の2016年度マッチング関連事業費は?

(答弁)

「コーディネート支援活動・出張キャラバン隊」、など の取組を行う、産業振興財団が実施する「産学連携コー ディネート支援事業」の平成28年度の決算額は757 万3,523円でございます。

大阪市のこの事業は、常勤職員3人で事業費は年間約2000~3000万円/この事業費は3人の方の給与とナビゲーターの方に謝礼金、半日で1万1000円/ナビゲーターの方は、訪問先は自分で電話してアポを取る/自分の自由な時間に関心のある企業に訪問

(発信力・広報)

川崎市では、中小企業の魅力を伝えるために、どのような発信の仕方をしていますか

(答弁)

市内中小企業の魅力を対外的に発信する取組といたし ましては、市内中小企業の優れた製品・技術を認定する制度である「川崎ものづくりブランド」認定事業、先端技術見本市「テクノトランスファー」の開催、さらには、 東京や横浜などで開催される大型展示会への共同出展事 業など、企業の二ーズに合った施策をきめ細やかに展開し、市内中小企業のPRに努めているところでございます。 今後とも、引き続き、市内中小企業の活陛化に向けて、 産業振興財団をはじめ、関係機関と連携を図りながら、効果的な広報・発信を行ってまいりたいと存じます。

川崎市も大阪市にならって「ゲンバ男子」を企画、職員の方が広報を作っている

大阪市では「行政サービスは知られなければ存在しないと同じ」を合言葉に「発信力」にも力を入れ、予算もかなり確保して、広報紙も専門家に委託している

大阪市が発行しているマガジン「Bplatz」は、12ページ、現場で働くイケメン男子を特集した「ゲンバ男子」、いろんな職人などを特集した「こんなところに仕事人」など魅力ある紙面を分野ごとの専門の担当者が作っています

まとめ

川崎市には、川崎市の優れた施策があることがわかりました。

大阪市の支援策で、川崎市と違うのは、規模の大きさ/訪問件数では川崎89社、大阪200社、マッチング件数は川崎44件、大阪800件/一番の違いは訪問する専門家の数・・川崎4人、大阪50人/50人もの各分野の専門家集団がいて、それぞれが自分の専門分野の知識と人脈を生かしている/だからこそ、これまで5000社訪問、マッチング活動回数13000回、受注総額145億円の実績

専門家の受け持ち件数―川崎は1人で20社、大阪は1人で4社/大阪は、かなり深く、長く付き合える/しかも自分の関心・興味のある企業に、情熱をもって、どうやって魅力を引き出そうかと―熱意を感じる

広報・マガジンも魅力的

ぜひ、良い所を取り入れて

商店街振興施策について

大阪市の「地域商業活性化推進事業」を視察/大変参考に/大阪の施策を紹介しながら、川崎市にはよい所を取り入れるという方向で検討を

(支援策)

川崎市の商店街振興施策のなかで、各商店街へ専門家を派遣するような事業は、どのようなものがあるのか?

(答弁)

本市では、商店街や商業者を対象といたしまして、商店街や商業団体が抱える課題に応じた各分野の専門家を 派遣し、講習会等を通じてアドバイスを行うことにより、 商業集積エリアの活性化や商店街の組織力の強化を目的 といたしました商業アドバイス事業や、商店街を中心と した比較的広範囲なエリアの課題解決を図るエリアプロ デュース事業を実施しているところでございます。 また、中小企業、個人事業者、 NP0法人を対象といたしました経営課題解決の支援を行う短期間の訪問コンサルティングといたしまして、ワンデイ・コンサルティング事業などがございます。

(専門家派遣での業務内容)

派遣される専門家は、何人いるのか?どのような業務をしているのか?

(答弁)

商店街や商業者が抱える課題によりまして、川崎市産 業振興財団や川崎商工会議所と連携して中小企業診断士、 税理士、社会保険労務士等を派遣しているところでござ います。 専門家につきましては、産業振興財団・商工会議所に は、約500名が登録されております。 また、具体的なアドバイス事例といたしましては、情 報発信力強化、販路開拓、商店街イベントの効果的な実 施方法、創業後の経営アドバイス、商店街の活陛化策、 安心・安全な街づくり事業など、様々な指導助言を実施 しているところでございます。

川崎市では、500人の専門家が登録し、アドバイスや助言を行う。

大阪市は「地域商業活性化推進事業」を2015年度に立ち上げ/2つの地域・商店街に1名・ディレクターを配置して、合計3人・・6商店街をまず活性化しようと取り組み始めた/それぞれのディレクターは、かなりの期間2つの商店街に張り付く・伴走型で支援をしていく/業務内容も、本当に初めから/①地域の特徴、地域住民などの人的資源、施設・設備などを調査して基本計画を策定、②それらを生かしたイベント、勉強会、交流会を企画、実施、③必要なビラ、地域マップ、広報紙、アンケートの作成も/

大阪市の特徴は一般的な商店街活性化支援とは違う/特に単なる「専門家派遣」コンサルティングとは違う―理論の注入ではなく、①何らかの事業を実際に行い、実践を通じて成功体験を重ねていく/②商店街団体と地域の人や団体とを結びつけるネットワークづくりを支援する/③ビラ、アンケート、マップつくりなど雑務まで一緒に

(後継者問題)

各商店街での一番の悩みは?

(答弁)

日頃、本市職員が各商店街や商業者を直接訪問いたし まして、商店街あるいは個々の商業者の現状と課題を把握し、課題解決に活用できる支援策の情報提供を行って いるところでございます。 様々なお話しを伺う中で、エリアによって差異はございますが、共通した声といたしまして、商店街役員など の後継者不足や商店主の高齢化に伴う営業の継続などが課題と伺っております。

後継者問題、事業の継続が、最大の課題

大阪市では、ディレクターが離れた後も継続して発展するために―「継続性を十分に考慮する」として/①商店街団体と地域の人や団体とのネットワークつくり/②実践を通じた若手の発掘と育成/要するに組織つくり、ネットワークづくりまでやる

(組織体制つくり)

ある商店街(放出商店会)では、イベントが行えない、地域との連携が十分でない、会員のコミュニケーションの不足で苦労/そこでディレクターが入って近隣神社の境内での地域団体と共同で音楽イベント「桜コンサート」/「100円商店街」などのイベントに取り組む/その中で、会員間の連絡体制とフェイスブック作成、マップつくりなどを通じて/団体内の若手の発掘や組織体制の整備/会員のやる気を向上させた

まとめ

川崎市では、500人もの専門家が登録されていて、適時、必要な時にアドバイス、相談するというスタイル/しかし、これでもなかなか立ち上がり切れない、後継者ややる人がいない。衰退傾向を脱しきれない商店街も多いのが現状

大阪市のように、専門家がアドバイスや助言にとどまらず、長期に入って支援する/実際に商店街に入って企画を成功させるまで/こまごまとした雑用も一緒にやって、組織づくり、若手発掘までやって商店街が自力で立ち上がれるまで支援する/長期で深い伴走型というのも必要ではないか/ぜひ、参考に