むねた裕之
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川崎市の財政ー経常収支比率をおしあげた最大の原因は公債費

12月議会での一般質問で、川崎市の財政問題を取り上げました。

とくに、議会で「財政が厳しい」という論拠の一つであった経常収支比率と扶助費の問題を質問しましたので以下に紹介します。

 

経常収支比率について

(質問)

経常収支比率の計算式はどうなっていますか? 

川崎の場合は、臨時財政対策債を経常一般財源に入れて出した結果、99.7%になっている。これでいいですね?

(答弁)

経常収支比率は、人件費、扶助費、公債費などの経常的な経費を、地方税、地方交付税、地方譲与税を中心とする経常一般財源で除することにより算出しておりまして、平成26年度決算における経常収支比率は99.7%となっております。

なお、この数値につきましては、他都市と同様に、地方交付税の代替財源として位置づけられる臨時財政対策債を経常一般財源に含めて算出したものを使用しております。

・分母の構成ですが・・歳入合計のうち、一般財源と特定財源に分かれ、一般財源はさらに

経常一般財源と臨時一般財源に分かれます。川崎の場合は、臨時一般財源に分類される臨時財政対策債を経常一般財源に入れて出しています。

・経常収支比率が99.7%ということで、硬直化しているといわれたり、あるいは新規事業にまわす財源はないのではないかといわれることがあります。この点について伺います。

 

(健全化判断比率との関係―直接関係ない)

・まず、実質公債比率などの健全化判断比率との関係ですが、これらの指標は軒並み問題ない、むしろ健全です。

(質問)

経常収支比率が99.7%ということが、財政の健全性を判断するための健全化判断比率とは直接リンクしないということでいいですね?

(答弁)

健全化判断比率のうちの「実質公債費比率」は公債費の大きさを、「将来負担比率」は地方債などの負債の大きさを、標準財政規模に対する割合で表したものでございまして、自治体財政を早期の段階で健全化するための取組や再生の必要性を判断するための指標でございます。

他方、「経常収支比率」は、自治体の財政構造の弾力性を判断するための指標となっております。

平成26年度決算における健全化判断比率につきましては、いずれの指標においても早期健全化基準を下回っておりますが、経常収支比率につきましては、前年度と比較して1.9ポイント上昇しており、財政の硬直化が進んでいるというけ結果が出ておりますことから、今後ともあらゆる指標の推移を注視し、緊張感を持って、的確な財政運営を行っていく必要があるものと考えております。

・健全化比率は前年度よりさらに良くなったのに、経常収支比率は前年度より上昇しました。健全化判断比率と経常収支比率は、別々の指標だということです。

 

(新規事業に回す財源なないのか?―臨時一般財源から240億円)

・経常収支比率は、他の政令市も100に近い比率で、京都市などは100を超えるだろうと言われています。本市は99.7%ということですが、本当に新規事業に回す財源はないのでしょうか?

・一般財源にはもう一つ「臨時一般財源」があります。これは特定財源ではないので、一般財源として使えるものですが、

(質問)

14年度の臨時一般財源(臨財債を含めない)の額はどのくらい? そのうち使途が決まっていない財源はどのくらいありますか?

(答弁)

平成26年度決算ベースでは、480億円余りございまして、このうち、240億円余を占める都市計画税につきましては、都市計画法に基づく都市計画事業またはと土地区画整理法に基づく土地区画整理事業に要する費用に充てる目的税となっておりますので、残りの240億円弱が使途を定めない財源となっております。

・使途を定めない自由に使えるお金は、240億円あるということです。

・この臨時一般財源は臨時的な財源ですが、毎年、500億円前後あり、使途を定めない財源が250億円前後あります。ということは毎年、経常一般財源以外にも自由に使えるお金、新規事業にも回せる財源が250億円あるということです。

・これらのことから経常収支比率が99.7%だからといって、「これ以上新規事業にまわす財源はない」ということは言えないことがわかりました。

 

(経常収支比率の過去の推移)

・ディスプレイをお願いします。

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・過去14年間の経常収支比率の推移ですが、2000~09年の時期に比率が上がっています。

200009年度―公債費が最大の原因)

・この時期、経常収支比率は00年83.7%だったが、上昇し、09年96.4%と12.7%も増加した。

(質問)

経常経費の主要4項目(構成比順で公債費、物件費、扶助費、補助費)のうち、増加幅の多い順は?

(答弁)

項目ごとの増加幅といたしましては、多い順に、公債費の6.7%、補助費等の5.6%、扶助費の4.7%、物件費の0.8%となっております。

・公債費が17.4%から24.1%になり6.7%増。経常収支比率が増大した最大の原因は公債費。

(扶助費について―扶助費の3分の2は国や県からの補助)

・扶助費について伺います。

(質問)

14年度の扶助費の決算額とその決算額に占める割合は?

そのうち市の一般財源から支出する額とその経常一般財源の総額に占める割合は?

(答弁)

決算額が1559億円余、構成比が25.7%となっております。

扶助費に充当している一般財源は594億円余で、一般財源額に占める割合は16.3%となっております。

・扶助費は、14年度の決算額では1559億円、構成比は25.7%になりますが、

そのうち市が支出する一般財源は594億円でその割合は16.3%です。

(質問)

この差額はどこから出されているのか?

(答弁)

一般財源のほか、国庫支出金、県支出金および分担金・負担金などが主な財源となっております。

・扶助費の1559億円の内、965億円は国や県からの補助金などでまかなわれるため、経常経費の構成比では、公債費よりも低く3番目。

・しかも、この間の上昇率も、公債費、補助費についで3番目であり、扶助費が経常収支比率を押し上げて最大の原因ではない

2000年代に80%台から90%台に押し上げた最大の原因は、公債費だということ。

<結論>

このように経常収支比率が99.7%ということですが、これで「財政が健全ではない」とか、「硬直化していて新規事業にまわす一般財源がない」とは言えないこと。

また、経常収支比率の構成要素として、扶助費が問題なのではなく、公債費が圧迫していることが明らかになった。

そもそも、扶助費が大きな要素を占めるのは、「住民の福祉の増進を図る」自治体として当たり前のことです。しかし、実際は経常収支比率で大きな要素を占めるのは扶助費ではなく、公債費であり、問題にすべきは、不要不急の大規模事業です。

本市は、自治体の「住民の福祉の増進」という使命に立ち返ることを強く要望します。