むねた裕之
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ノーベル賞とアメリカの大学

鈴木氏と根岸氏がノーベル化学賞を受賞しました。鈴木さんは私の生まれ故郷・厚真のとなり鵡川町の出身で、子どものころは毎年、実家の鈴木商店からシシャモをとっていてよく知っている家でした。

二人が学んでいたのがアメリカのパデュー大学ですが、アメリカの大学から、なぜ、これほどノーベル賞が出るのか?

実は日本の大学にはない特徴があるからだと思います。

アメリカの大学に92―95年まで留学をしていましたが、日本の大学と大きく違う点がいくつかあります。

1つは、先生たちは学生を1人の人間として大切に扱ってくれたことです。私の専門の生物や化学の授業の後、私は必ず教授の部屋に質問に行くのです。それを先生たちは嫌な顔せず「やあヒロ、今日は何だい?」といつも歓迎してくれました。プライベートでも、今、副学長やっているゴンザレス先生は、私と妻を何度か夕食に招待してくれ家族ぐるみのお付き合いをしてくれました。全米NO1教授にもなったことのある生物学のブランクスプアラー先生は、家に招待してくれて日本製パン焼き機でパンをご馳走してくれたり、インターナショナルセンター責任者のスーベニール先生は、日本に来たとき一緒に六本木に飲みにいきベロンベロンになるまで付き合ってくれました。私の貯金が底をついた3年目の年、卒業しないで帰国するかどうか困っていたときに、授業を取っていた教授たちが、嘆願書を書いてくれて、私の学費(150万円)を全額免除にしてくれました。ここまで学生の声を聞き支援してくれる先生たちを見たことがありません。

2つには、大学の先生たちが学生の個性を発見して伸ばしてくれることです。美術の教授・ブルース・マコムは、私のパステル画を観て「これまで30年学生に教えているが、こんな絵は見たことがない」と言って、絵を展覧会に出すことをすすめてくれました。それがきっかけで、私の絵は、プロも入ったいくつかの展覧会で賞をもらい、何点か売れたり、新聞にも載ったりしました。よく先生は「良い絵というのは見ただけで誰が書いたかわかる絵だ」といって、他の人は描かないような私の絵(黒の用紙にエレクトリックな色彩で描いた人物画)を評価してくれました。また、論文を書くときに「ステレオタイプになるな」(人と同じような意見を言うのではなく、自

分独自の意見を大切にしなさい)とよく言われました。日本でこれをやると変な目でみられるかもしれませが、アメリカの大学ではちがいます。一人一人の人間は違うし意見が違うのは当たり前。こういう違う意見を認め合い議論していくのが民主主義の基本だということを学びました。

こんなアメリカの大学のよいところがノーベル賞を多数だしている秘密の一つではないでしょうか?