むねた裕之
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高齢者施設での新型コロナウイルス感染防止に関する要望書(第2次)

川崎市長 福田紀彦様

高齢者施設での新型コロナウイルス感染防止に関する要望書(第2次)

2021年8月3日

日本共産党川崎市議団 団長 宗田裕之

川崎市の新型コロナ新規感染者数は350人を超え、医療崩壊を起こした1月の感染者数を超えて過去最高を記録。今後、医療逼迫を起こす危険性はさらに高まっています。5月末の幸区の高齢者施設でのクラスターの事例を二度と起こさないためにも、再度市長への要望書を提出することとしました。

わが党は、前回の要望書で4つの問題点、①病床がひっ迫していないのに入院措置せず、陽性者は入院という原則が破られたということ、②家族の「延命措置希望の不明な方は入院困難」とする通知を出したこと、③入院すれば助かったかもしれない方を検査・治療設備のほとんどない施設で留め置かれたということ、④14人の方が亡くなったこの対応について、市は一切責任を認めず、家族の判断だとして責任を転嫁したことを指摘しました。その後、市からの回答で新たな問題点が明らかになりました。さらにわが党は、厚生労働省とのレクチャー、当該施設入所者の家族からの聞き取りを行い、それらを踏まえて以下のことを要望します。

■新たな問題点・・蘇生措置(DNAR)と延命措置を混同し、医療的な処置が必要な感染者に対して入院措置をしなかったこと。

市の通知では「集中治療・人工呼吸器装着希望(DNAR)の有無の確認」と述べていますが、DNARとは心肺停止した時の蘇生措置のことで、集中治療・人工呼吸器装着などの延命措置とは違います。市は蘇生措置と延命措置を混同しています。また、DNARを望まない方にも、延命措置は必要であり、延命措置を望まない方にも苦痛を取り除くなどの医療的処置は必要です。市は、蘇生措置と延命措置を混同して、本来、感染者に必要な医療的処置をするための入院措置をしなかったのです。この責任は非常に重いと思います。

■厚生労働省の見解

法令(感染症法第23条6項)についいて厚労省は「感染症法の目的は「まん延防止」であり、入院措置しないと他の方に感染させてしまう危険があるため原則入院としている」と回答。「県内病床が逼迫していない状況で、施設内療養をお願いすることはあるのか?」という質問に対して「原則入院」と回答。「入院の判断を患者本人や家族の判断にゆだねることはあるのか?」という質問に対して「本人の希望には関係なく、原則入院」と回答。「急変時の医療やケアを希望しなかった方に対して、入院措置をしないということはあるのか?」という質問に対しても「本人の希望には関係なく、原則入院であり、病状が悪化した場合、入院措置は当然」と回答。「入院を希望しない方に対して、入院措置をしないということはあるのか?」という質問に対して「感染症法の目的は「まん延防止」であり、入院措置しないと他の方に感染させてしまう危険があるため、本人の希望にかかわらず原則入院」と答えています。以上のことから、川崎市の通知「陽性判明時で集中治療、人工呼吸器装着希望(DNAR)の有無を確認する。不明の場合は入院調整が困難」とする通知と市の対応について、厚労省担当者は、法令や国の見解とは明らかに違う指示、対応であることを認めました。

■当該施設入所者のご家族からの声

「陽性者が出たとき、全員入院できていると思っていました。それが入院できなかった方もいたと知って驚きました。衝撃です。こういう介護が常に必要な施設で陽性者が出たら、入院しかないと思います。そうしないと感染症ですから他の方に移してしまう可能性が大きいからです。ここの施設は普段は医師が常駐しておらず、回復に必要な治療も困難をきわめたと思われます。施設に留めおくこと自体、あり得ないと思います」と述べており、今回の市の対応は、入所者の家族にとっても驚きであり、入院措置されなかったことはあり得ないことと受け止めています。

 以上のように、新型コロナというのは感染症であり、普通の病気とは違います。だからこそ、感染症法で他の方への感染防止のために原則入院としているのです。その意味で法令上も国の見解から見ても、市の対応は感染症法の目的から逸脱しています。このことが今回の最大の問題だといえます。

●要望

 新型コロナの第5波が始まっています。二度とこのような事態を引き起こさないために、今までの対応を改め、早急に以下の対応を要望します。

1.4月に出した通知を撤回し、今回、高齢者施設でとった対応を改め、高齢者福祉施設で陽性が確認された場合は入院という原則に立ち戻り、陽性者を速やかに入院させること。

以上