むねた裕之
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川崎市の総合計画と行革の前提―人口減少、厳しい財政は事実と違う

6月10日、川崎市第2回定例会で日本共産党を代表し片柳議員が代表質問を行いました。その中の「総合計画と行財政改革について」の質疑を紹介します。

●質問

川崎市総合計画、行財政改革について、市長に伺います。

2022年度から4年間を計画期間とする第3期実施計画策定方針が出されました。本市の課題として、人口減少、少子高齢化、「厳しい財政環境」、扶助費の増大などの問題が挙げられており、これらを前提として、行財政改革、資産マネージメントを推進するとしています。

川崎市の課題は、人口減少ではなく急激な人口増加にどう対応するのか

人口減少問題についてです。

全国的には人口減少が大きな課題ですが、本市は今後9年間、人口増加が続き、2020年度より6万4000人増加し160.3万人。生産年齢人口も今後4年間増え続け105万8000人になり、どちらも前回の推計よりも上方修正しました。今の人口よりも減少するのは30年後です。また、政令市との比較でみると、人口増加率、生産年齢人口の比率はともに最も高く、老年人口の比率は最も低く、平均年齢は最も若い都市です。こうしてみると川崎市は、全国的な特徴である人口減少問題には当てはまらず、逆に急激な人口増加が続き、政令市で最も若く、働き盛りの人口が多い都市だといえます。以上のことから見て、今後10年間の川崎市の課題は、急激な人口増加にどう対応するのか、また、現役労働者への支援、子育て対策をどうするのかだと思いますが、伺います。

市は減債基金など今後1000億円近い財源ができる

財政環境についてです。

行財政改革第3期プログラム策定方針では、コロナ禍での収支不足、減債基金からの借入、今後の市税収入の減少などにより「今後も厳しい財政環境が続く」としています。まず、コロナ禍での収支不足についてですが、政府から減収に対する補填措置などで、これから71億円補填されます。また、収支不足分286億円を減債基金から借入れて借入総額が938億円となったとしても、それを差し引いた減債基金の実質残高は1363億円です。この額は毎年の返済額の4年半分に当たり、政令市平均の4年分を上回っており、コロナ禍でも十分な財源を確保しています。さらに川崎市の減債基金への積立・返済計画では、今後7年間で900億円、残高に積み増しをします。これにより残高は他都市よりも1000億円は多くなります。今後の市税収入についても、川崎市の生産年齢人口は政令市で最も多く今後4年間は増加します。市民1人当たりの市民税額も政令市で最も高く、全体の人口は今後9年間増加します。このように収支不足や減債基金からの借入、市税収入の減少を理由に「財政が厳しい」とは言えないと思いますが、伺います。

以上述べてきたように、人口減少、「厳しい財政環境」は、行革の根拠にはならないと思いますが、伺います。

●答弁

国全体が人口減少社会を迎える中、・引き続き、本市では、当面の間、総人口の増加が続くと推計したところでございますが、同時に、本市においても避けることのできない人口減少の時期がおよそ10年後に差し迫った状況でもございます。

こうしたことから、着実に進展している少子高齢化への対応や、活力と魅力にあふれる力強い都市づくりなどの取組を引き続き推進するとともに、人口減少社会の到来を見据えた取組についても、併せて進めていく必要があると考えているところでございます。

財政環境についての御質問でございますが、本市財政は、ふるさと納税や、法人市民税の国税化の影縛に加え、新型コロナウイルス感染症による景気の落込みに伴う市税等の減収の影響を強く受けております。

このような中におきましても、社会保障や防災・減災対策、都市機能の充実など、将来を見据えて乗り越えなければならない課題に的確に対応していく必要がございます。

こうしたことから、減債基金からの新規借入を行ってきたところでございますが、減債基金は、市債の満期一括償還に備え、世代間の公平を図るために、積み立てているものであり、減債基金からの新規借入を行わざるを得ない状況が続いていることこそが、大変厳しい財政状況であることを示していると考えております。

行財政改革についての御質問でございますが、本市においては、少子高齢化の更なる進展に伴う扶助費の増加や、将来的には人口減少に伴う市税収入の減少などの影響が・一層厳しくなることが見込まれる中、今後もこれまでにない厳しい財政環境が続くとともに、市民ニーズが多様化・増大化することが想定されるところでございますので、引き続き、市民サービスの再榊築や、市民サービスを支える市役所の経営資源の最適化など、行財政改革の取組を一層推進してまいります。

●再質問

市の最優先課題は、不足している公的施設やサービスをどう確保するか

「今後10年間の課題は人口増加にどう対応するか」ではないかという質問に対して、「人口減少が課題」という答弁でした。市は人口減少を前提に公的施設や公的サービスの総量を調整するとしています。しかし、今でも保育園や特養ホームなど公的施設は足りない状況です。しかも、今後30年間は今より人口が多い状況が続きます。この不足している状況や人口増加に対して、公的施設やサービスをどう確保していくのかが、今後10年間の市の最優先課題ではないですか、伺います。

 「人口減少社会の到来を見据えた取り組み」という答弁ですが、「将来を見据えた取り組み」というのなら少子化対策の抜本的強化こそ必要です。少子化対策は長期間かかりますが30年あれば間に合います。人口減少を当たり前、前提とするのではなく、人口減少を食い止めるための対策こそ必要ではないですか、伺います。

●最終意見

川崎市の課題として人口減少と厳しい財政環境が挙げられています。しかし、人口減少問題については、人口は9年間にわたって増加し続けること、今の人口よりも減るのは30年後であることを指摘し、市の今後10年間の課題は、人口減少ではなく、人口増加にどう対応するかにあることを指摘。財政が厳しいという課題については、コロナ禍の中でも財政は十分確保されており、今後9年間、減債基金に積み増しされ、他都市よりも1000億円は多い財源が確保されることを指摘して、人口減少や財政環境は、行革の理由にはならないことを明らかにしました。

子育て施策の遅れが年少人口減少、子育て世代人口減少の元凶

 子育て施策については、少子化問題が課題と言いながら、小児医療費助成では、政令市、県内最低レベルであり、認可保育園に希望しながら入れなかった方が3175人。市はこれを改善する計画すらありません。川崎に転居してきた方が小児医療費のことを知って「失敗した」と語った事例やアンケートで「川崎に不足している点」のトップが「子育て支援策」となっているように、川崎市は「子育て世代に選ばれる街」どころか子育て世代に敬遠される街になっています。人口推計でも、全体の人口が増えているのに、年少人口と子育て世代の人口だけは減っているように、子育て施策の遅れは、人口推計にも影響が出ています。まさに、人口減少、少子化問題の元凶を作っているのは川崎市自身です。一刻も早く中学卒業まで通院医療費助成を拡大し所得制限・一部負担金を撤廃すること、来年度の認可保育園の定員拡大を3000人とすることを求めます。