むねた裕之
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21年度予算要望書(日本共産党)・・川崎市の臨海部・大規模開発について

第十五章 不要不急の大規模開発事業は凍結・中止する。全国トップクラスの「豊かな財政」を市民の福祉・くらしの充実に使う市政運営に改める

 福田市長は、「財政が厳しい」と強調しながら、不要不急の大規模事業を推進しています。2020年度予算における不要不急の大規模事業費は、臨港道路東扇島水江町線980億円を含む川崎港湾計画で約1310億円、羽田連絡道路建設に約300億円、東扇島堀込部埋立事業に約240億円、川崎アプローチ線事業に約300億円など、総額約2140億円にも上ります。

20年度の港湾局予算は、一般会計で104億円となり対前年度比34.7%増と大幅に増額され、臨海部の大規模事業を含む臨海部活性化予算は、18億円増の199億円で大幅な増額となりました。中でも羽田連絡道路に88億円、臨港道路東扇島水江町線に54億円、東扇島堀込部埋立に29億円と3事業だけで171億円にも上るなど臨海部の大規模事業の予算が突出しています。

(一)臨港道路東扇島水江町線に20年度54億円-市内の老朽化した橋の改修こそ早急に

 臨港道路東扇島水江町線に20年度予算は54億円を計上し、これまでの事業費総額は570億円になります。この橋は、昨年、耐震設計の見直し、地盤改良の追加等により事業費は540億円から980億円に突然変更され、しかも、議会や市民に知らされる前に、市長が独断で了承したものです。

 この橋の必要性について、市は当初「コンテナ取扱量が30年代後半に年40万TEUになるための輸送力増強」のため、次に「緊急物資輸送ルートの多重化」、「交通渋滞の解消」、「東扇島の労働者の避難路」など、次々と作る理由を挙げてきましたが、その都度、必要性、根拠について説明できず、その根拠はすべて崩れています。

6月補正予算では、東扇島アプローチ部整備の一環として、橋梁上部及び下部工の架設を行うもので13億2000万円の契約を締結しました。しかし、川崎市は、昨年の台風や新型コロナ問題で早急に対応が必要であり、多額の費用が掛かります。このような時に、13億円も出して、この橋の橋梁工事が本当に必要でしょうか。

その一方で、築60年以上の橋が市内には10本あり、その7本が架け替えの計画もなく、その他に修繕が必要な橋が市内に165本あり、その総額は620億円です。臨港道路東扇島水江町線の整備事業は中止をし、市民生活に必要な橋梁の架け替え、維持補修こそ早急に実施すべきです。

(二)羽田連絡道路に20年度88億円―台風で船の航路が埋まり再度の浚渫に30億円

 羽田連絡道路に20年度予算では、88億円を計上し、これまでの事業費総額は271億円になりました。19年度補正予算では、羽田連絡道路の橋げた設置のための船の航路が、台風19号で埋まったために、多摩川河川内の浚渫工事費用として30億円が債務負担行為として計上されています。

この橋の必要性について、市は「ビジネスや観光の振興」、「就業者の通勤ルート」、「当地区に来る来訪者」ためという答弁でした。しかし、この間の質疑の中で羽田連絡道路の必要性について、全く根拠のないことが明らかになりました。また、この橋とキングスカイフロントの経済波及効果ですが、建設終了後の経常的な税収増は、10年間で約5億円、年5000万円にすぎず、羽田連絡道路の総事業費300億円に見合う税収増も見込めないことも明らかになりました。

20年度、台風で埋まった土砂を取り除くために再度浚渫をしましたが、これまでに、浚渫のためにかかった費用は19億円にもなります。しかも、全国から船を集めて複数船団でやっても7か月かかりました。それが台風のために無駄になったわけです。一方、多摩川の浚渫予算については、洪水対策にための浚渫はほとんどありません。多摩川の浚渫こそ優先すべきです。

6月補正予算の繰越明許費に58億6400万円計上されています。当初から羽田空港を利用する外国人観光客をあてにして計画した橋ですが、世界的なコロナ危機は、ここ2,3年は続きます。羽田空港からの観光客が激減している状況で、本当に今、必要なのでしょうか。こういう不要不急の羽田連絡道路整備は、中止すべきです。

(三)東扇島堀込部埋立に20年度29億円‐リニア新幹線の是非が問われる中、残土をあてにした事業を続けるのか

20年度予算では、海面埋め立てに必要な護岸整備のために特別会計から29億円計上され、これまでの事業費の総額は138億円となりました。この埋立の必要性について、市は「コンテナ関連用地の不足」を挙げていますが、「コンテナ取扱量が40万TEUになる」という予測や「冷凍倉庫代替地の確保」、「完成自動車のストックヤードのため」という理由は、すべて破綻しています。

 当初の「東扇島堀込部埋立土地造成事業」で概算事業費は240億円、事業費すべてを建設発生土受け入れ料金で賄うとしていました。ところがその後、埋め立て事業を200億円、基盤整備費を40億円とし川崎市が負担すると変更し、埋め立て事業費をリニア新幹線の建設発生土で賄うと発表。当初、市の負担は出ないとしていた事業が40億円は市民の税金で負担することに変更されました。

6月補正予算では、護岸築造・ケーソン製作の契約金額を38憶6000万円から41億2000万円に、2億6000万円も増額されました。リニア新幹線の残土をあてにした埋め立て計画ですが、今回の新型コロナ問題で、仕事や生活スタイルが変化し、テレワークなどが増える中、リニア新幹線自体の必要性も問われています。リニア新幹線の残土をあてにした埋立事業が、今、本当に必要なのでしょうか。新型コロナ、台風の対策が最優先の時に、このような不要不急の大規模事業は見直し、中止すべきです。

(四)コロナ後の社会を考えて、臨海部の大規模事業の計画自体を見直すべき

 コロナ前とコロナ後では、社会が変わり「新しい生活様式」が求められています。コロナ危機で羽田空港の国際便が激減しているのに、今までのように大量の外国人観光客を見込んだ羽田連絡道路や、テレワークが進むなかで賛否が問われるリニア新幹線、その残土をあてにしている堀込部埋立事業など、コロナ前に建てられた事業をこのまま進めてよいのでしょうか。コロナ後の社会を考えて、臨海部の大規模事業の計画自体を見直しすべきです。

1 川崎港コンテナターミナルなど港湾施設の整備計画にあたっては、他港コンテナ港湾の施設規模・能力などもよく調査研究し、本市の既存施設の取扱能力などを厳格に検証し、これ以上の施設拡張を行なわない。

2 川崎港コンテナターミナルのコンテナ取扱量のうち空コンテナが増大する経済的要因と、今後の見通しを調査・検討するとともに、台風等による暴風・高潮、大地震と津波など災害時の被害・影響などを想定し、必要な安全対策を講じる。

3 空コンテナの量と割合が増える、非効率な片荷輸送が増えるような、コンテナ船とコンテナ取扱量の無理な誘致は推進しない。

4 港のニーズ、荷物があればコンテナ船は来るのであり、際限のない税金投入を続ける悪循環となっている川崎港利用促進コンテナ貨物補助制度は廃止する。

5 国際コンテナ戦略港湾政策の中止・見直しを国に求めるとともに、川崎市・川崎港は京浜3港の国際コンテナ戦略港湾計画から独自に撤退すること。

6 千鳥町、東扇島など川崎港での輸出自動車(新車、中古車)の保管状況、及び、他港への横持ち台数、川崎港からの直接輸出台数などの実態を把握し、輸出自動車保管を川崎港で行なう必要性について根本的に再検討する。

7 東扇島堀込部埋立土地造成事業については、同堀込部の公有水面は市民の財産であり、埋立土地造成をしなければならない正当な目的・理由が立証されないことから、ただちに事業を中止する。JR東海と川崎市の覚書を撤回し、JR東海に対して東扇島堀込部へのリニア建設残土の受け入れを断ること。

8 リニア中央新幹線整備計画は、市内外で環境破壊をもたらし、運行後災害時の危険性が極めて高く、ルート上の多くの地権者の権利を侵害するなど問題が多すぎる不要不急の大規模事業であり、公的資金を投入して推進する国、およびJR東海に中止を要請する。

9 臨港道路東扇島水江町線の整備工事をただちに凍結し、今から事業の善後策を検討する。

10 川崎市民の生活にとっての橋の必要性を市も説明できず、人類的見地から保存すべき貴重な多摩川河口干潟を壊す重大な自然環境破壊をもたらす羽田連絡道路の整備工事は今から中止する。

11 「国家戦略特区」キングスカイフロントのライフイノベーション構想の研究開発拠点の整備・運営に対する公的支援・税金投入は中止する。

12 ナノ医療イノベーションセンターの「立ち上げ期間の支援」での事実上の研究費支援はやめる。

13 1メートル1億円以上とばく大な事業費がかかっている高速川崎縦貫道路の整備工事は、現在の1期ルートの本体の残工事を中止する。公害まき散らし・まち壊しの現行の2期ルート計画も中止する。東京外郭環状道路との一体化でも、ばく大な事業費がかかることが想定され、2期ルートの計画自体を中止する。

14 『臨海部ビジョン』で打ち出された、最低300億円かかる新たな鉄道整備「川崎アプローチ線」計画は、住民犠牲のまちこわしとなり、住民ニーズも採算性もないことから、計画を白紙撤回する。

15 臨海部を中心とする不要不急の大規模開発を中止・見直して、全国トップクラスの川崎市の「豊かな財政」を市民の願い実現と市民生活・福祉の向上・充実に生かす市政運営に改める。まずは喫緊の課題であるコロナ対策、そして少子化、災害対策を抜本的に強化する。

16 公共事業への投資のあり方を、市民生活に関係なく地域経済が循環しない現在の臨海部での不要不急の大規模開発優先(巨大な橋の建設、川崎港コンテナターミナル拡張、住民ニーズのない鉄道整備など)ではなく、市民の願いに応えて地元建設業者の仕事と雇用が増え、地域経済が循環する、認可保育園・特別養護老人ホームの大量増設、老朽校舎の改築など市民生活・福祉型投資優先に抜本的に切り替える。

17 福祉切り捨て、市民サービスの削減など、これ以上の市民犠牲・市民負担増の「行革」をやめ、何よりも、事業目的が希薄・曖昧で市民生活にとって必要ない、ばく大な税金浪費である不要不急の大規模事業計画を中止・見直しをする。