むねた裕之
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川崎市―1月中旬、入院・119番通報制限し「命の選別」をする事態に

3月2日、川崎市議会3月議会で日本共産党は団長・宗田裕之が代表質問を行いました。そのなかの「新型コロナ感染防止対策について」、その質疑を以下に紹介します。

【質問】

新型コロナウイルス感染防止対策についてです。

市の医療提供体制について、市長に伺います。

川崎市の新型コロナ感染者数は1月9日に226人を記録するなど1月は第1波の10倍を超える感染者がでました。1月中旬には市の即応病床の利用率は90%を超え、入院を受け入れられない完全な医療崩壊状態となりました。現在、新規感染者数は減っていますが、週ごとの死亡者数は、1月初めの7人から2月初旬では17人になるなど急激に増えています。

救急搬送についてです。

1月中旬、ある方は急激に熱が上がり持病があるために救急車を呼びましたが、救急隊は家の前で2時間半、搬送先を探しました。救急隊の方の話ではその時点で搬送待ちが600人いるということでした。市消防局の報告では「受け入れ要請4回以上、現場滞在時間30分以上」の「搬送困難事例」について、市の1月の件数は318件となり前年同期の4倍に達しているということです。県立循環呼吸器病センターの医師は「救急隊員が119番した患者を家に置いて帰るという、これまであり得なかった異常事態が起きている」と述べるなど、入院先が見つからず自宅に放置される事例が続きました。

同時期、市長は入院を制限するコメントを発表、健康福祉局は、市内福祉事務所に対して入院調整、119番通報を制限する通知を出すなど、本来あってはならない制限、指示を出しました。

自宅療養者についてです。

感染しても入院できない状況が続き、神奈川県では自宅療養者5000人を超え、全療養者の8割となり、自宅での死亡事例も発生しました。川崎市では、1月25日、自宅療養者数は最多の2338人となり、その時点では全県の自宅療養者の8割が川崎市となるなど突出しています。しかし、市はこの段階でも市内宿泊施設を一つも確保していませんでした。報道では、川崎市内に住む85歳の女性は、高齢で持病があったのに自宅療養となったが、症状がさらに悪化し119番通報したが市外の病院でも受け入れてもらえず自宅に帰されました。女性は「このまま死んでしまうのではないかと怖かった」と述べています。自宅療養は本来、「やむを得ず」選ぶ例外扱いだったはずですが、医療崩壊で感染者が自宅で放置される事態となってしまいました。

第3波に向けての市の対応についてです。

川崎市は夏から秋にかけて何をやってきたのでしょうか。わが党は、昨年の夏の第2波から、市内の重症病床がひっ迫していること、民間病院はコロナ病床を増やそうにも施設改造費や医療スタッフが足りなくて受入れが進まないこと、医療機関が財政危機に陥っており国や県からの医療機関への財政支援がほとんど届いていないことを訴えてきました。さらに第3波に備えて医療機関の財政支援を早急に実施して、夏から秋にかけて準備する必要があることを求めてきました。

それにもかかわらず川崎市は第3波に向けての準備をほとんど行ってこなかったことが明らかになりました。市立3病院の即応病床を推移でみると、11月初旬から市内の陽性患者が増大しているにも関わらず、即応病床を拡充したのはいずれも12月1日になってからです。軽症、無症状者の方の宿泊療養施設も市内で1か所も確保しないままでした。さらに市立3病院ではこの間、医師の増員もなく、看護師に至っては11人も減らしています。医療機関への独自の財政支援もほとんどないまま放置してきました。コロナ第3波に備えなければならなかった時期に、なぜ、市はコロナ受入れ病床を減らし、医療体制も強化せず、医療機関への市独自の財政支援もしないまま放置したのか、市長に伺います。こういう市の無為無策の結果、このような医療崩壊が起こり、1月中旬には2000人以上の方が入院・療養できず自宅で放置され、命の危険にさらされた方を出したのです。市はこの責任をどう考えているのか、市長に伺います

今後の対策についてです。

これからの課題は医療崩壊をどうやって解消するかということです。2月8日時点での川崎市の即応病床使用率は重症が85%、中等症が91%と依然高い水準で逼迫しており、週ごとの死亡者数は増えています。9日、政府分科会の尾身会長は緊急事態宣言の解除基準について「医療の負荷が取れるということ、医療のひっ迫状態をなくすまで緊急事態宣言は続けるべきで、それが再拡大を防ぐことにつながる」と述べており、医療のひっ迫状態をなくすことが最優先課題です。

そのためにも第1に、コロナ患者を受け入れた民間病院に早急に財政支援をすることです。少なくない民間病院が赤字を抱えながら苦労してコロナ病床を増やしましたが、これらの病院への財政支援である緊急包括支援金は3割程度しか届いていません。さらにコロナ第4波に備えて必要になったときにコロナ病床を増やせるように、民間病院に対して、市独自の財政措置をするべきです、市長に伺います。  

第2に、急性期の治療後の患者を受け入れる病床の確保や感染性がなくなった患者を受け入れる後方支援病院を確保することです。国の基本的対処方針にも「新型コロナから回復した患者の転院先となる後方支援医療機関の確保を進める」こと、そのためにも医療機関の役割分担の明確化も追加されました。後方支援病院の確保と医療機関の連携強化、役割分担を促進することが必要と考えますが、市長に伺います。

第3に、医療機関には、コロナ患者を診ている所も診ていない所もあり、その両方が地域医療を支えています。その全体に対する減収補填をすることが必要と考えますが、市長に伺います。

【答弁】

はじ.めに、コロナ患者受入病床につきましては、コロナに係る入院需要と、その他の入院需要との均衡を図りながら、病床数を増減させておりまして、昨年11月の県による「医療アラート」の発動を受け、認定医療機関における即応病床の拡大要請、及びその他の病院に対する神奈川モデルへの新規参画の呼び掛けを行い、即応病床は、アラート前の73床から、 2月初旬には200床を超えるまでに順次拡充していただいたところです。

この間、市内・県内における病床の拡充スピードを上回る急激な感染拡大により、県内病床全体が逼迫したことを受けて、一時的に、比較的軽症の方は適切な健康管理のもとで自宅等において療養していただき、より重症な方を優先した入院調整を行うなど「命を最優先した対応」を行う局面がございました。この間の患者及び関係者の皆様の御協力に感謝申し上げたいと存じます。

次に、神奈川モデル認定医療機関への支援につきましては、基本~的には、国の交付金を活用して行う県事業が主体となりまして、第二次申請分までの市内医療機関に対する総交付決定額は100億円を超え、昨年末までに約8割を支払っており、現在は第三次申請分の交付決定手続きを進めていると伺っております。

合わせて、本市におきましても、市内病院の二ーズに応じた県以外の独自支援を継続的に実施しております。

また、すべての医療機関への支援といたしましては、これまで国による給付金や融資制度等に加え、県による融資制度等も運用されているところでございます。

本市といたしましては、指定都市市長会から国に対する提言や、3政令市共同で県知事への要請を行うなど、あらゆる機会を捉えて課題を提起しており、国・県・市においてそれぞれの役割を果たしながら、地域医療を支えてまいりたいと考えております。

次に、後方支援病院につきましては、神奈川モデルにおいて「重点医療機関恊力病院」に位置付けておりまして、更なる拡充に向けて県・市協働で市内病院に呼び掛けを行い、現在まで市内14病院の笹併拐力をいただいているところでございます。

なお、実際の患者の転院に際しては、病院間連携の他、必要に応じて市または県の医療調整本部にて転院調整の支援を行い、それぞれの病床の最適活用を図っているところでございます。

【質問】

市立3病院は5月から11月末までコロナ患者受け入れ病床を増やさず、看護師は減らし、医療機関への財政支援もせずに放置してきたことについて、市長は「入院需要との均衡を図りながら」やってきたという答弁でした。しかし、新規感染者が第2波のピークを超えた11月になってもコロナ病床は増やさなかったのです。病床数を増やすことに対して市は「医療スタッフが足りないから簡単には増やせない」と8月から言っていながら、ずっと増やしてこなかったのです。

医療崩壊を起こした責任を質しましたが、「病床の拡充スピードを上回る急激な感染拡大により」病床が逼迫したという答弁で、感染拡大が想定外だったかのような答弁でした。しかし、この感染拡大は第1波、第2波を見れば予想できたはずですし、夏から秋にかけて準備はできたはずです。しかし、市は病床の増床、医療スタッフの増員、財政支援もやらなかったのです。いろいろ理由を言いますが、結果として、119番通報しても2時間以上も受け入れ先が見つからず、病院への入院できないで自宅待機せざるを得ない人が2000人以上出たのです。この事態はまさしく医療崩壊であり、市のこのような無為無策が原因ではないのか、市長に伺います。

 市が入院制限、119番通報を制限したことについて、「命を優先した対応」だったという答弁でした。しかし、本来入院すべき人を自宅療養にしたり、福祉施設からの119番通報を制限するというのは「命の優先」ではなく「命の選別」です。本来やってはならないことをやったという自覚はないのか、市長に伺います。

【答弁】

新型コロナウィルス感染症の第3波に備えて、本市におきましては、市内病院の御協力のもと受入れ病床について、 11月中旬の73床から、 1月中旬には155床、現在は200床を超えるまで1恒次拡充していただきました。

この間、市内・県内における病床の拡充スピードを上回る急激な感染拡大により、県内病床全体が逼迫したことを受けて、一時的に、比較的軽症の方は適切な健康管理のもとで自宅等において療養していただき、より重症な方を優先した入院調整を行うなど「命を最優先した対応」を行う局面がございました。この間の患者及び関係者の皆様の御協力に感謝申し上げたいと存じます。

なお、病床のる倒呆にあたりましては、国・県・市の役割に基づく継続的な財政支援を行っているところでございます。

また、 2月12日付け発出の文書につきましては、医療の逼迫度の改善を踏まえて、それまでの入院調整指針を変更し、県による「高齢者施設での療養のしおり」の健康管理基準に即した療養及び入院調整について、御協力をお願いしたものでございます。

【質問】

 医療崩壊の事態を招いたのは、市の無為無策が原因ではないのかという質問に対して答弁は、前回と同じく「病床の拡充スピードを上回る急激な感染拡大」が原因とあたかも想定外の事態が起こったかのような答弁でした。しかし、夏の時点で冬の第3波は第2波とはくらべものにならない感染拡大があること、そのための病床拡大、医療スタッフの拡充には時間がかかることは分かっていたはずです。「想定外」だったかのような答弁は、準備していた人が言うことで、12月1日まで放置していた市が言う言葉ではありません。準備もしないで医療崩壊を起こしたという反省はないのか、市長に伺います。

 入院抑制、119番通報制限など「あってはならない対応をした」という自覚はないのかという質問に対して、「あってはならない対応」とは最後まで認めませんでした。しかし、通常、医者が入院すべきと判断する人が入院できなかったことは事実です。福祉施設での陽性者は入院させるという原則が守られなかったことも事実です。これらの事実はあってはならないという認識はないのか、もう一度市長に伺います。1月18日、市内福祉施設に出した入院抑制、119番通報制限を指示する通知は、命の選別につながる内容であり、市民の命を守る市長として本来出してはならないものです。その認識はあるのか、市長に伺います。

 今後、コロナウイルスの変異株の感染も想定され、今以上の感染が起こるかもしれません。しかし、二度とこのような事態、医療崩壊を起こさないために医療提供体制は維持すべきと思いますが、市長に伺います。

【答弁】

繰り返しになりますが、第3波に備えて、「神奈川モデル」における本市の必要病床数を想定・判肯し、市内病院の御協力のもと、受け入れ病床について、 11月中旬の73床から、現在は200床を超えるまで順次拡充しており、想定外であったという認識はございません。

また、全県で運用する入院適用基準につきましては、患者の症状等をスコア化しスコアに応じて入院調整を行うことを原則としておりますが、病床拡充のスピードを上回る急激な感染拡大により、一時的に、公衆衛生的な観点より生命危機にある患者を優先せざるを得ない局面がございました。

次に、今後の医療捌共体制につきましては、先般、県から、「感染状況のフェーズに応じた県内即応病床の目標数を再設定した上、個々の病院の即応病床数について協定を締結する」方針が示されたところでございます。これを受けまして、現在、本市におきましては県と連携しながら、市内病院と協議を行う準備を進めているところでございます。

【質問】

 準備もしないで医療崩壊を起こしたという反省はないのかという質問に対して「第3波に備えて11月中旬から病床を順次拡充した」と準備していたような答弁でした。しかし、市立3病院では12月1日まで即応病床は1床も増やさず、看護師は減らし、宿泊施設も一部屋も確保せず、財政危機に陥っている医療機関への財政支援はしない、このどこが準備をしていたといえるのか、市長に伺います。

こういう医療崩壊を起こした原因について「病床拡充のスピードを上回る急激な感染拡大」が原因と「想定外」だったというような答弁を繰り返しました。しかも、「想定外という認識はない」という答弁です。しかし、想定した病床数を超えたわけですから、「想定外」ではないですか。しかも「想定を超えた」といって済む話ではありません。現場では、高齢で持病を持っている方が入院できず自宅に返される。119番通報しても2時間以上入院先が見つからない。高齢者施設では、原則入院させるべき入所者が入院できず、119番通報は日中以外、区役所以外は不可と通知を出す。これのどこが「命を優先にした対応」なのですか。これは「命を優先」したのではなく「命の選別」です。本来やってはならないことです。こういう事態を二度と起こしてはならないと思っているのか、市長に伺います。

【答弁】

繰り返しで恐縮ですが、新型コロナウイルス感染症の医療捌共体制整備については、国通知において、都道府県が主体となり、基礎自治体と連携して執り行うこととされており、これに係る権限唄才源は都道府県に付与されております。

これに基づき、神奈川県では本市を含む県内自治体と連携して「神奈川モデノレ」を構築・’運用し、財政支援も含めた県内における病床確保及び市町村域に限らない広域的な入院調整、宿泊療養施設の設置等を行っております。

本市におきましては、県からの要請を受けて、当初から常に県と連携しながら、医療機関等と協議し、市内病床の確保をはじめ様々な取組を準備し、着実に実行してまいりました。

従いまして、「市は何の想定も準備もせずに放置した」という御指摘は全く当たりませんし、そもそも仕組みを良く理角翆されていない上での御意見かと考えます。

この間、県内における病床の拡充スピードを上回る急激な感染拡大により、県内病床全体が逼迫したことを踏まえて、県からは、より機動的に病床の確保が出来るよう「感染状況のフェーズに応じた県内即応病床の目標数を再設定した上、個々の病院の即応病床数について協定を締結する」方針が示されたところでございます。これを受けまして、現在、本市におきまして、市内病院と協議を行う準備を進めているところでございます。

【最終意見】

 「市は何の想定も準備もせずに放置したというご指摘は全く当たらない」という答弁でした。しかし、市が準備したというのは、県から言われたことだけです。私たちは、それでは不十分だといっているのです。自宅待機者が2000人以上いるのに市内宿泊施設を一部屋も確保しない。県から言われてやっと今頃確保しても遅いのです。財政支援も県からということですが、12月の時点でも県からはほとんど届いていなかったのです。だから市独自の財政支援が必要と言ってきたのです。市は、こういう市独自でやるべき準備を怠ってきたのです。何よりも準備を怠ってきたことは、入院制限、119番通報制限など医療崩壊を引き起こしたことから見ても明らかです。

これまでの質疑で明らかになった事実は、1月中旬に深刻な医療崩壊が起こったこと。それに対して市は市民や福祉施設に対して入院制限、119番通報の制限を出すという、本来あってはならない「命の選択」をしたことです。しかし、市長の姿勢には、医療崩壊を起こし命の選択をしたことに対する反省の言葉が一言もありません。また、二度と起こしてはならないという決意もありませんでした。

 今日の報道では、変異株が市中に急激に広がっており、変異株による第4波の危険性が指摘されています。二度とこういう医療崩壊を起こさないためにもPCR検査の抜本的拡充と、医療提供体制を今以上に強化することを要望します。