むねた裕之
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川崎市―医療機関・高齢者施設へのPCR検査、「偽陽性、偽陰性を理由に実施しない」という理由は成り立たない

12月4日、川崎市議会12月議会で日本共産党は代表質問を行いました。そのなかの「医療機関・高齢者施設へのPCR検査について」について、その質疑を以下に紹介します。

【質問】

医療機関・高齢者施設へのPCR検査について、市長に伺います。

クラスターの7割がこれら施設なのに、市は偽陽性、偽陰性を理由に「実施しない」と答弁

全国では医療機関での院内感染が349件、福祉施設での施設内感染が401件に達し、大阪府や神奈川県ではクラスターのうち、これらの施設が約7割を占めています。わが党は医療機関、高齢者施設への一斉・定期的検査の実施を求めてきました。しかし、健康福祉局では、感染の可能性の低い無症状の方へのPCR検査は実施しないという見解が示されています。

「偽陽性が医療を圧迫」―1000人検査して1人、医療を圧迫するとは言えない

その1つ目の理由ですが、全市民をPCR検査した場合「1499人が偽陽性となり、医療体制が逼迫する」ということについてです。感染していないのに結果が陽性と出る偽陽性の確率は0.1%です。偽陽性者1499人という数は全市民150万人を一斉に検査した場合の数であって、こういう想定はあり得ません。医療機関、高齢者施設への一斉・定期的検査をやる場合、例えば1000人を検査しても偽陽性は1人出るか出ないかです。これをもって医療体制が圧迫するとは言えません。

「3割が偽陰性」―検査しなければ出なかった無症状感染者を発見できる

もう一つの理由はPCR検査では「3割が偽陰性となり感染を広げてしまう」ということについてです。実際に感染しているのに結果が陰性と出る偽陰性の確率は30%ということですが、最新の検査では10%近くまで下がっています。1割~3割の偽陰性の方が検査から漏れてしまうということですが、逆に検査しなければ見つからなかった感染者が7割から9割の確率で発見できるということです。このことによって感染者が症状が出る前に感染を広げクラスターをつくる、こういう危険を防ぐことが可能となります。クラスターを作らない対策としては極めて有効であり、1割から3割の偽陰性を理由にすることは適切ではありません。

「防疫」―「防災」と同じく「起きる確率が低いから実施しない」という自治体はない

医療機関、高齢者施設への一斉・定期的検査は感染症の発生・流行を予防する「防疫」の観点から実施することが求められています。それは医療機関、高齢者施設というのは、1人でも感染者が出れば、生命の危険や医療崩壊などにつながる施設だからです。だからこそ、感染の発生を防ぐために、また発生しても症状が出る前に対処する目的で検査するのです。これは防災と同じ考え方です。数十年に一度来るかどうかの地震や災害に備えて、対策を立て改修工事を行い、毎年、各地で防災訓練も実施しています。それに対して、「災害が起こる確率が低いから」といって実施しない自治体はありません。感染者が急増する中、1人でも感染者が出れば、医療崩壊をおこす医療機関や命の危険がある高齢者施設への一斉・定期検査は「防疫」の観点からも実施すべきと考えますが、伺います。

【答弁】

「疫学調査に基づいた対応のほうが効果的」だから実施しない

感染症法に基づく行政検査は、感染拡大を防止するとともに、重症者!死亡者を最小限にすることを目的として、医師が必要と判断した者に実施することとされております。

陽性患者の受け入れ病院を含む医療機関や高齢者施設の入所者・従事者全員に、一斉検査や定期検査を実施することにっきましては、関係者を幅広く検査するより、患者発生時に保健所が行っている疫学調査をもとにした対応が効果的であることから、検査が必要な対象者に対して引き続き行ってまいります。

【再質問】

今まで通り濃厚接触者のみを検査してもクラスターは防げない

医療機関や高齢者施設への一斉・定期的検査を実施することについて、今までの「疫学調査に基づいた対応のほうが効果的」だから実施しないという答弁でした。要するに、今まで通り、感染者が出たら追跡調査をして濃厚接触者のみを検査するという方法を続けるということです。しかし、今までその方法をやってきてもクラスターの発生は防げなかったわけです。

世田谷区では介護施設に行政検査をしてクラスターを防いだ

東京の世田谷区では、介護施設に行政検査を実施していますが、特養ホームで実施した検査では、職員と入所者15人が陽性と判明。全員が無症状でしたが検査によって深刻な施設内感染を防いでいます。このように疫学調査では発見できなかった無症状感染者を一斉定期的検査によって発見し、クラスター発生を防いでいるわけです。

 行政検査について、答弁では「重傷者・死亡者を最小限にすることを目的」と答えているように、こういう施設でクラスターが発生すれば、命の危険や医療崩壊につながるわけです。その目的からも行政検査を実施すべきです、伺います。

【答弁】

偽陽性や偽陰性の課題があるから実施しない

医療機関や高齢者施設の入所者0従事者全員に、一斉検査や定期検査を実施することにつきましては、医学的に偽陽陛や偽陰性の課題があること等から、今後も、医師が必要と判断した方や、患者発生時に保健所.が行っている疫学調査をもとにした濃厚接触者等を検査対象として適切に対応してまいります。