むねた裕之
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代表質問―排水樋管の開閉など重要な時間帯に市本部会議開かれず、総合的判断できず

12月4日、12月議会で日本共産党は代表質問を行いました。そのなかの「台風・豪雨災害時の危機管理対応について」について、その質疑を以下に紹介します。

【質問】

台風・豪雨災害時の危機管理対応についてです。

17時、多摩川上流部の降雨、ダムの情報から洪水想定雨量を超えることは予想できた

令和元年東日本台風が直撃した10月12日、17時時点での多摩川上流部の情報管理についてです。11日には箱根で1000ミリ、12日17時の時点で小河内貯水池管理事務所の雨量は495.5ミリなど、過去に経験がないような豪雨が深夜まで続くと予想され、洪水ハザードマップの想定雨量588ミリを超えることは容易に予測できました。さらに17時に小河内ダムから放流量を1.5倍に増やすことが発表され、多摩川の川崎市域の水位は、深夜にかけて急激に上昇し続けることは確実でした。

15-17時、多摩川の水位、各地の溢水、丸子雨水幹線の情報から逆流を予測できた

現地からの情報についてです。中原区山王地域では15時には多摩川の水位は最低地盤高を超え、15時45分に上下水道局の職員がマンホールから溢水したことを確認。丸子雨水幹線が16時47分に満管となっています。これらのことから17時の時点では、すでに多摩川の逆流が始まっており、多摩川上流部の状況から見ても、逆流は深夜にかけてさらにひどくなると予測できたはずです。

操作手順には「適宜河川水位を観測し、総合的にゲート開閉を判断する」と明記

これだけの情報がありながら、なぜ、12日17時の時点でゲートを閉める判断をしなかったのでしょうか。市は「操作手順に従った」という理由を挙げています。しかし、操作要綱には、ゲート操作の目的が「逆流の防止」にあると明記し、操作手順には「適宜河川水位を観測し、総合的にゲート開閉を判断する」と明記しています。多摩川上流部の情報と現地からの情報を総合的に判断すればゲート閉鎖するのは当然でした。「操作手順に従った」というのは理由になりません。

手順の「AP値7.6mを超えた時点」で誰が総合的判断をしたのか?

さらに、山王排水樋管の操作手順では「水位がAP値7.6mにおいてゲートの開閉を総合的に判断する」としています。山王排水樋管がAP値7.6mを超えたのは15時です。市の災害警戒本部会議の議事録を見てもこの時点で判断した記録がありません。操作手順通り、15時の時点でゲート開閉の判断をしたのか、伺います。

市本部に宮内、二子、宇奈根排水樋管の情報が届かなかったのか?

市の災害警戒本部での情報の把握と共有についてです。検証では「中部下水道事務所では宮内、二子、宇奈根排水樋管については、関係部署との情報共有が十分に行われなかった」とあります。マンホールの溢水などの情報が市本部に届かなかった地域はあるのか、伺います。

重要な事象が起こった15:30-20時の4時間半、市本部会議が開かれなかった

災害警戒本部会議の議事録を見ると第2回は15時~15:20、第3回は20時からとなっており、間が4時間半抜けています。この時間帯は小河内ダムの放流、上流部の降雨状況、現場からは多摩川の水位が最低地盤高を超え、マンホールからの溢水、丸子雨水幹線の満管、市民ミュージアムへの浸水など重要な事象が次々と起こっていました。しかし、この間、市本部会議が開かれなかったため、これらの情報が伝わらず、会議で共有されず、何の手を打たれないまま過ぎてしまったのです。なぜ、この時間帯、市本部会議を開かなかったのか、伺います。

【答弁】

初めに、山王排水樋管のゲート操作についてでございますが、排水樋管の操作手順では、降雨がある場合や、大雨警報が発令されている等、降雨のおそれがある場合にはゲートを全開にすることとしており、これを前提条件として、多摩川田園調布(上)水位観測所の避難判断水位である7.6メートルを超えた場合に、ゲート開閉について総合的判断を行うものとしておりまし.た。

令和元年東日本台風時のゲート操作判断につきましては、当日15時の時点で降雨を確認したこと、さらに気象庁から神奈川県内に大雨警報が発令され、台風がこれから関東地方に上陸すること、県内で1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨が降り、局地的には1時間に80ミリの猛烈な雨が降る見込みとの予報が出ていたことから、操作手順に基づきゲート開を維持する判断を行ったところでございます。

第2回災害警戒本部会議におきましては、今後の台風の接近に伴い更に風雨が強まるとの気象予測から、被害が発生する可能性が高まったため、河川、支流、内水氾濫への対応を継続するとともに、避難所のマネジメントを行い、浸水からの避難を最優先課題として取り組むよう、本部長から各部長に指示があったことから現場対応を優先し、本部会議は開催いたしませんでした。

【再質問】

台風・豪雨災害時の危機管理対応についてです。

排水樋管の操作手順では「多摩川の水位がAP値7.6mにおいてゲートの開閉を総合的に判断する」としていますが、市の答弁は15時時点で「判断した」ということでした。しかし、15時の市本部会議の議事録では、田園調布の水位やゲートの開閉判断について、一切記述がありません。この時点でのゲートの開閉判断について市本部会議で判断したのか、伺います。

「降雨の場合、全開」というが、多摩川上流部は豪雨、中原区は5ミリ

「総合的判断」をすれば閉めるべきだった

操作手順において「なぜ、ゲートを開いたままにしたのか」という質問に対して、この間、市の答弁は「降雨がある場合、全開を維持する」ということでした。しかし、操作手順では「ゲートの開閉は総合的に判断する」としています。本当に総合的判断をしたのでしょうか。17時の時点で、多摩川上流部の雨量は500ミリに達しており、予報では毎時50ミリの降雨が3時間以上続くと予想され、洪水想定雨量588ミリを超えて600ミリを超えることは容易に推測できました。さらに17時に小河内ダムの放流を1.5倍にするという通知も来ていました。一方、中原区の降雨状況は、降雨のピークは13時前後であり、17時の時点では井田消防署の雨量計ではわずか5ミリとなっており、ほとんど雨はやんでいるような状況でした。答弁では、一般的に県内の降雨状況から判断していますが、多摩川の上流部と川崎市内では状況が全然違います。以上のような状況を総合的に判断すればゲートを閉めるべきではなかったのか、伺います。

宮内、二子、宇奈根地域の溢水、浸水情報が市本部に上がらなかった

市の災害警戒本部の情報把握についてですが、現場での浸水対応やパトロールなどでとても連絡をあげられるような状況ではなく「宮内、二子、宇奈根の各排水樋管周辺地域については情報共有が十分ではなかった」という答弁でした。宮内、二子、宇奈根地域のマンホールからの溢水、浸水情報が十分、市本部に上がっていなかったことが明らかになりました。

市本部は「現場を優先」というが、重要な情報を放置し、現地任せだった

なぜ、「市本部会議を15:30から20時の間、開催されなかったのか」という質問に対して「浸水からの避難」など「現場対応を優先したため」開催しなかったという答弁でした。これでは、まったく市本部会議の意味がありません。まず、現場での対応が大変になっている大元の原因は、排水樋管からの逆流、溢水です。市は現場の浸水被害を食い止めるためにも排水樋管を閉める判断をすべきでしたし、そのための市本部会議を開くべきでした。しかも、この4時間半の間には、上流部の降雨状況、小河内ダムの放流、多摩川の水位が最低地盤高を超えたこと、各地で浸水被害が拡大していることなど、次々と重要な情報が流されていました。それにもかかわらず、市本部会議は開催されず、適切な対策は打たれず放置され、すべて現地にまかせっきりの状態だったことが明らかになりました。これらの重要な情報が出た時点で、なぜ、市本部会議が開かれなかったのか、何のための市本部会議なのか、市長に伺います。

【答弁】

初めに、山王排水樋管のゲート操作の判断につきましては、操作要領において、中部下水道事務所長が判断することとしているものでございます。

次に、ゲート操作についてでございますが、降雨力妬寉認されたことに加え、気象庁から神奈川県内に大雨警報が発令され、台風がこれから関東地方に上陸すること、県内で1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨が降り、局地的には1時間に80ミリの猛烈な雨が降る見込みとの予報が出ていたことから、ゲートを閉鎖することにより内水氾濫の危険が生じる可能性があるため、ゲート開を維持する判断を行ったものでございます。

第2回災害警戒本部会議では、上流部の降雨量も考慮すると、最悪のことも想定し、避難を完了させなけれはならないとして、日没かつ満潮時刻が16時30分であり、時間的にタイトな状況ではありましたが、改めて、道路公園センターとも連携し、住民の避難を促すよう指示いたしました実際に16時30分には高津区本部長の判断で平瀬川下流部に「避難指示(緊急)」が発令されるなど、現場では災害対応が続いておりましたので、そうした状況を、勘案して第3回災害警戒本部会議の開催を指示し、 20時現在の避難所の状況等を確認いたしました。

【再々質問】

台風・豪雨災害時の危機管理対応について、市長に伺います。

AP値7.6mを超えた時点での総合的判断は、市本部ではなく中部下水が行った

排水樋管の操作手順について、多摩川の水位がAP値7.6mを超えた15時の時点で、「ゲートの開閉は市本部会議で判断したのか」という質問に対して、「中部下水道事務所長が判断した」という答弁でした。しかし、総合的な判断をするには、多摩川の水位を予測するうえで重要な多摩川上流部の情報や中部下水以外の地域の情報などがどうしても必要ですが、それらの情報をつかんでいる市本部では排水樋管のゲート操作について討議もされず、判断もされなかったことが明らかになりました。これでどうして総合的判断をしたといえるのでしょうか。

市本部は総合的判断、全市的対応が求められている時に、会議を開催せず役割放棄した

市本部会議について、「なぜ、15:30から20時まで市本部会議が開かれなかったのか」という質問に対して、開かれなかった理由について答弁はありませんでした。答弁では「現場での災害対応が続いている」ことを理由に、判断、対応ともに現地任せにしていたことも明らかになりました。3地域の排水樋管の現地情報が入ってこなかったことについても、それをつかむことはせず、排水樋管のゲート開閉の判断も現地任せにしていました。

本来、市本部は、いろいろな情報を収集し、来ていなければ、その情報をつかむ手立てをとるなど情報把握に努めなければならない部署です。また、重要な情報が入るたびに総合的な判断と全市的な対応が求められる部署です。重要な情報が多数入ってきた重要な時間帯に、判断も対応も現地任せにして、会議を開催しなかったということは、その本来の役割を放棄していたことになるのではないですか、伺います。

【答弁】

第2回災害警戒本部会議では、今後の気象予測から、被害が発生する可育對生が高まったため、河川、支流、内水氾濫への対応を継続するとともに、避難所のマネジメントを行い、浸水からの避難を最優先課題として取り組むことを指示しました。

その後も災害警戒本部体制の下で現場での対応を継続し、第3回災害警戒本部会議が開催されるまでの間も、本部内での必要な情報共有は行われていたところでございます。

一方で、現場から各部への連絡体制において課題があつた点につきましては、検証結果を踏まえ必要な対応を講じたところでございます。