むねた裕之
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川崎市臨海部・キングスカイフロントー180億円税金投入したが税収増につながらず

10月5日、川崎市議会9月議会で、決算特別委員会の総括質疑を行いました。日本共産党は渡辺学議員が「臨海部・キングスカイフロント」について総括質疑を行いましたので、その質疑の内容を報告します。

【質問】

5年間で法人市民税は9億円減少など経済波及効果は表れていない

キングスカイフロントの企業誘致は、ほぼ完了して数年たちましたが、この5年間で、臨海部のある川崎区の法人市民税は9億円減少し、10年間で製造業の事業所数は1/3減少、従業員数も1321人減少しています。キングスカイフロントの経済波及効果は、まったく表れていないことが明らかになりました。

経済波及効果で経常的な税収増は年間5300万円

分科会ではキングスカイフロントの経済波及効果について、個人・法人税収、固定資産税収などで10年間で120億円を見込んでいることについて質疑を行いました。実際、120億円のうち95億円は固定資産税で、誰がその土地を持っていようと税収は入ってきますので、税収増とは言えません。これを除いた25億円のうち建設時の効果額を除くと、わずか5.3億円。建設後、経常的に市にはいってくる税収増は年間5300万円程度にしかならないことが明らかになりました。

土地の購入、羽田連絡道路など市の税金投入は180億円

 一方、川崎市はこれまでに、土地の購入に69億円、羽田連絡道路に市負担分68億円、「神奈川口構想」のために国に100億円の無利子貸し付けをしており、その利子負担分40億円は市が負担しており合計180億円もの税金を投入しています。市は土地の購入費用は賃料で賄うとしていますが、69億円の土地のうち46億円分の土地は無償提供、無償貸与されており、2/3の土地からは賃料が入りません。

年間5300万円の税収増で180億円の税金はどうやって回収するのか?

 経済波及効果でも年5300万円の税収増しか想定されておらず、実際に税収増や雇用増につながっていない中で、キングスカイフロントや羽田連絡道路に投入した180億円の税金は、どうやって回収するのか、市長に伺います。

製品実用化3件、市内中小企業の仕事になったのはわずか2件

市内中小企業への波及効果と製品実用化についてです。

 いろいろな先端産業が誘致されて5年以上たちますが、製品実用化につながったのは、わずか3件。そのうち市内の中小企業の仕事につながった事例は、わずか2件でした。研究開発というのは、製品実用化までにいかに長い年月がかかり、市内中小企業の仕事、本格的な生産に結びつくことがいかに難しいかが明らかになりました。最大の問題点は、研究成果と中小企業の技術のマッチングに高い知見が要求される点です。この解決のために産業振興財団において新たなクラスター事業部を立ち上げたということですが、何人の体制で専門分野の訪問調査員などは何人配置するのか、どういう活動をするのか、伺います。

【答弁】

キングスカイフロントの拠点形成と羽田連絡道路の整備による経済波及効果の推計につきましては、 10年間の経済波及効果は約2,481億円と見込んでおり、税収効果としては約120億円と算出しております。こ税収効果は、拠点形成を通じた個人・法人税等の増や、償却資産等が大きいとされる研究施設の整備等による固定資産税や都市計画税の増など、研究機関が立地することによる効果を見込んだものでございます。

さらに、今後、羽田連絡道路の開通に伴い、不動産価値の上昇による固定資産税の増収等も見込まれ、企業立地がさらに進むことで、こうした税収効果が高まるものと考えております。

雇用につきましても、移転した企業の就業者数が平成10年時点で約2,200名であったところ、現在は既に約5,700名が就業しており、新たな企業進出により、雇用の拡犬が引き続き見込まれるところでございます。

今後に向けましては、世界最先端の研究機関や企業等の誘致を進め、革新的な医薬品や医療技術の創出などにより、更なる波及効果が生み出されるよう、’拠点形成を進めてまいります。

【質問】

180億円の税金を回収するのに36年かかる

「キングスカイフロントや羽田連絡道路に投入した180億円の税金は、どうやって回収するのか」という質問に対して、「研究施設の整備等による固定資産税や都市計画税の増」があるという答弁でした。しかし、家屋に関する部分は誰が土地を持っていようと変わりませんので税収増にはなりません。残りは、研究開発のための高価な装置などの償却資産による税収増ですが、この額は2.9億円です。「羽田連絡道路の開通に伴う固定資産税の増収」もあるという答弁でしたが、その増収は1.4億円。経済活動による税収増5300万円と併せても年間5億円です。これでは投入した180億円の税金を回収するのに36年かかり、市の税収増につながるのは36年後以降です。

JFE高炉休止で4000人が職を失い跡地は550haに及ぶ

 しかも、この金額はすべて計画通りにいっての話です。今後、臨海部では、2023年にJFEスチールの高炉休止の計画が発表されました。もし、休止・廃止されれば4000人の労働者が職を失う可能性があり、その跡地は550haに及びます。これは殿町いすゞ自動車の2200人、跡地40haと比べても桁違いの影響です。臨海部の製造業の従業員数24000人のうち4000人の雇用が失われることになります。

大企業撤退し、市が税金投入して企業誘致しても税金は回収されない

 この間、臨海部では、大企業がどんどん撤退し、市はその跡地になんとか企業を誘致しようとして、土地を購入して無償提供したり、橋などの交通基盤を整備するなどして、莫大な税金を投入してきました。しかし、このやり方では、必要性が問われるような大規模事業を推進するだけでなく、投入した税金は回収されないままに終わってしまいます。こういうやり方はやめるべきだと思いますが、市長に伺います。撤退を計画している大企業に対して、雇用や地域経済を守る立場から交渉するべきだと思いますが、市長に伺います。

【答弁】

キングスカイフロントの拠点形成におきましては、必要な投資を計画的に行うことで、 10年間で約2,481億円の経済波及効果、約120億円の経済活動や施設整備等による税収効果、さらには不動産価値の上昇による税収効果を見込んでおります。

現在、ライフサイエンス分野における最先端の研究機関やグローバル企業など69機関が集積し、就業者数も約5,700人となるなど、既に多大な効果が発現しているところでございます。

こうした拠点形成の取組を通じて、臨海部の更なる活性化が図られるよう、今後とも必要な投資を都市経営の観点から戦略的に行ってまいります。

また、臨海部の大企業が、撤退を計画した場合におきましては、地域経済や雇用への影響が想定されますことから、状況の把握に努め、その影響が最小限となるよう、企業側との必要な協議を行うなど取組を進めてまいります。