むねた裕之
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代表質問―財政力は政令市トップ/台風・コロナに対して減債基金の活用を

9月11日、9月議会で日本共産党は代表質問を行いました。そのなかの「19年度決算の特徴」について、その質疑を以下に紹介します。

【質問】

市税収入は6年連続過去最大、政令市でトップの財政力

2019年度決算の特徴について、市長に伺います。

2019年度一般会計決算では、歳入は前年度比224億円増の7398億円で4年連続、過去最大。市税収入は、前年度比88億円増の3619億円で7年連続増収、6年連続過去最大。これは個人市民税が97億円増、固定資産税18億円増など人口増、市民からの税収増によるものです。財政力指数は、政令市トップで、5年連続、政令市で唯一の普通交付税・不交付団体となっています。財政健全化指標は、すべて基準値を下回っており、極めて優良。一人当たりの市債残高は、政令市の平均よりも9万円低く、借金の負担額が少ないのが特徴です。川崎市の人口増加率、生産年齢人口割合ともに、政令市で最も高く、人口推計でも今後10年間は増加を続けるため市税収入の増加は今後10年間続くと予想されます。このように、市税収入、財政力指数、財政健全化指標のどれをとっても、川崎市は政令市でトップクラスの財政力を持っています。

個人市民税は高く、法人市民税は極端に低いのが特徴

 個人市民税と法人市民税の市税における構成比についてです。個人市民税の構成比は、47.7%で政令市平均41%よりも高く、政令市では上から3番目です。法人市民税の構成比は5.1%で政令市平均10%の半分しかなく、政令市では下から2番目に低い比率です。このように川崎市の個人市民税は高く、法人市民税は極端に低いのが特徴です。

減債基金残高は政令市の1.8倍、8年後には3100億円にも達する

減債基金残高は、一般会計分でみると2222億円となりました。一人当たりの市債残高は政令市平均以下なのに、減債基金残高は政令市平均の1.8倍にもなります。8年後の2028年度には881億円増の3103億円と市税収入額に匹敵するほどになります。政令市の減債基金残高は、取崩額の平均4年分ですが、本市の8年後の残高は、その間の平均取崩額の10年分にもなり、金額にして約1800億円も余剰となっており、明らかにため込みすぎの状態です。川崎市にとって8年後、3100億円を超えるような減債基金残高が、なぜ、必要なのか、市長に伺います。

19年度の「決算見込みの概要について」では、依然として「厳しい財政環境」と述べています。この「財政が厳しい」という根拠についてです。この間の質疑では「減債基金からの借入」や「社会保障費の増大」を厳しい理由に挙げています。

収支不足、減債基金からの借入は財政が厳しい理由にならない

 「収支不足による減債基金からの借入」という理由についてです。収支不足額は95億円ですが、その不足分は、減債基金の積立額450億円を減らして対応すれば、収支不足も出ないし、借り入れる必要もありません。他の政令市もそういう基金を取り崩して対応するのが普通であり、減債基金から借り入れて収支不足に対応している政令市は川崎市だけです。さらに収支不足の額は毎年50億円前後も過大に計上されています。以上のことから「収支不足による減債基金からの借入」は「財政が厳しい」という根拠にはならないと思いますが、市長に伺います。

個人市民税は政令市で最も高いのに、社会保障費は政令市平均以下

「社会保障費の増大」という理由についてです。社会保障費である扶助費は、前年度比115億円増ですが、これは保育所増設等のためにどうしても必要な費用であり、増加した部分のほとんどは国や県からの補助から賄われるので、扶助費の経常収支比率は18年度決算では18.6%にすぎません。しかも、一人当たりの扶助費の額は引き続き政令市平均を下回っていますし、福祉予算である民生費も1人当たりにすると政令市平均よりも2万円も低い状況です。一方、一人当たりの個人市民税は、政令市平均より3万円以上高く、政令市トップの11万5000円です。個人市民税は政令市で最も高いのに、その税収が福祉・暮らしには十分還元されていないのが特徴です。支出額から見ても「福祉の増進」という地方自治体の役割からみても、「社会保障費の増大」を「財政が厳しい」という根拠にすべきではありません、市長の見解を伺います。

【答弁】

はじめに、減債基金への積立てについてでございますが、これは、資金を内部に留保するためのものではなく、市債の満期一括償還のために計画的に行っている償還そのものでございまして、将来の行政需要への対応の支障とならないよう、責任をもって行う必要があると考えております。

次に、収支不足への対応についてでございますが、償還額を超えて減債基金を取り崩す手法は、財政の実態を見えにくくするものであることから、本市といたしましては、こうした手法ではなく、財政の透明陛と規律を損なうことの無いようにするため、減債基金からの「借

入れ」という手法を選択しているところでございます。

次に、社会保障費の状況についてでございますが、平成30年度決算における、本市の扶助費の経常収支比率は、政令市比較で最も高い数値となっております。

このことは、本市が保育所の待機児童対策などの子育て支援施策や、障害福祉サービスなど、地方自治体の役割をしっかりと果たしている結果と認識しているところでございます。

【再質問】

8年後以降に、3100億円が必要だという根拠はあるのか?

 「8年後、3100億円を超えるような減債基金残高が、なぜ、必要なのか」という質問に対して、「計画的に償還を行う」ためという答弁でした。確かに、計画的に15年後まで償還額は決まっていますが、償還額は15年後も現在とそう変わりはありません。そうであるなら今の2200億円でも良いわけです。それなのに残高は毎年100億円近く増額され、3100億円にまで達します。「計画的に償還するため」というのであれば、8年後以降に、3100億円が必要だという根拠、計画はあるのか、伺います。

「透明性や規律」というのなら、そういう減債基金の状況も市民に示すべき

 「収支不足による減債基金からの借入」という理由について質問しましたが、「財政の透明性と規律」のためという答弁でした。しかし、現状は減債基金の借入があるということだけを示して「厳しい」という根拠にしていますが、これでは説明不足です。「減債基金」を理由にしていながら、市民には実際の減債基金の状況、例えば他都市と比べて1.8倍の残高や8年後には市税収入にも匹敵する残高になること、その額の妥当性については示していません。「透明性や規律」というのなら、そういう減債基金の状況も市民に示すべきと思いますが、伺います。

【答弁】

減債基金への積み立ては市債の償還そのものであり、残高の多寡に関わらず、世代間の公平を図るためにも、当然に予算計上すべきものでございます。

このことは、財政運営の透明性や規律を確保し、市民の皆様に、本市の財政状況を正しくお示しするためにも大変重要と老えており、減債基金の状況につきまして、各年度の予算・決算の発表の都度、市民の皆様に情報提供を行っているところでございます。

【再々質問】

「3100億円を超えるような減債基金残高が、なぜ、必要なのか」に答えず

「3100億円を超えるような減債基金残高が、なぜ、必要なのか」という質問に対して、その根拠や残高の妥当性についても答弁はありませんでした。

また、減債基金について「将来の行政需要への対応」のためという答弁もありました。減債基金は、将来、何かあったとき対応するために使うということです。

「将来、何かあったときのため」というのなら、今こそ使うべき

川崎市は、昨年から今年にかけて、今までに経験しなかったような台風災害があり、医療・経済への影響は戦後最悪と言われる新型コロナ問題に直面しています。10年に一度あるかないかの危機に直面しているのです。それに対して、川崎市の独自支出は、6月補正まで含めても台風被害に対して13億円、新型コロナに対しても、わずか13億円にすぎません。多摩川の河道掘削にしても、羽田連絡道路のためには30億円出しましたが、洪水対策にはほとんど支出せず、減債基金からの借入も1億円にすぎません。「将来のため」と言いながら、こういう危機の時なのに、必要な行政需要に対応できていないのが実態です。台風災害、コロナ危機など、こういう時こそ、減債基金の積立額を減らしてでも財源を作って対応することが本当の「行政需要に対応」することではないのか、伺います。

【答弁】

繰り返し申し上げますが、減債基金への積み立ては、資金を内部に留保するためのものではなく、市債の満期一括償還のために計画的に行っている、償還そのものでございますことから、今後とも、積立額を減らして対応することはせずに、責任を持って積み立てを行ってまいります。

そのうえで、昨年度の台風や、今般の感染症拡大防止対策などの危機事象への課題に対しましては、減債基金からの新規借り入れも含め、あらゆる手段を講じることにより、しっかりと対応しているところでございます。

【最終意見】

川崎市は政令市でトップクラスの財政力を持っています。その一方で、コロナ対策で経営危機にある医療機関に対しては、1円の財政支援もなく、倒産が急増している中小企業に対する給付金などの財政支援は1億円のみです。高齢者の熱中症対策としてエアコン設置を求めたのに対して、「各自が対策を講じること」という、全く冷たい答弁でした。

「危機事象に対して減債基金の活用もする」という答弁

しかし、川崎市は、財源がないわけではないのです。「台風災害、コロナ危機など、こういう時こそ、減債基金の活用を」という質問に対して、「台風や感染拡大防止対策などの危機事象への課題に対しては、減債基金の新規借り入れも含め、あらゆる手段を講じる」という答弁でした。この答弁通り「減債基金の活用などあらゆる手段を講じて」財政支援することを要望します。