むねた裕之
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代表質問(決算の特徴)-財政力はトップなのに減債基金への過大なため込み

9月13日、勝又議員が日本共産党を代表して代表質問を行いました。決算の特徴について質疑を紹介します。

質問

市税収入は4年連続過去最高

2017年度決算の特徴についてです。

2017年度一般会計決算では、歳入は前年度比で858億5800万円増の7006億9100万円、歳出は865億2300万円増の6975億1400万円となり、実質収支は1億9900万円のプラスとなりました。歳入では、市税収入が前年度比で58億2600万円増の3111億8600万円で、5年連続の増収で4年連続の過去最高を記録しました。これは、個人市民税19億7500万円の増、固定資産税29億4300万円の増など人口増、市民からの税収増によるものです。川崎市の人口増加率は政令市で最も高く、人口推計でも今後12年間は増加を続けるため市税収入の増加は今後10年間は続くと予想されます。

財政力指数は政令市トップで唯一の普通交付税不交付団体

財政力指数は、引き続き政令市トップで1を超え、3年連続、政令市で唯一の普通交付税、不交付団体となっています。基準財政収入額が前年度より大幅に増え、財政力指数は前年度の1.00から1.02と財政力をさらに強めています。財政健全化指標についても、すべての指標で早期健全化基準を大きく下回り、極めて優良です。「決算見込みの概要」では、「厳しい財政状況」と述べていますが、財政が厳しいという指標は、どこにも見当たりません。

減債基金残高は、市債償還額の11年分(政令市平均は4年分)

減債基金は、一般会計分でみると243億円積み増しをして2205億円となりました。一人当たりの市債残高は政令市平均以下なのに、減債基金残高は政令市平均の1.8倍にもなりますし、これは取崩額、いわゆる市債への償還額205億円の11年分にあたり、政令市平均の4年分をはるかに上回ります。財政規模が川崎市の2.5倍ある横浜市の減債基金残高は、16年度決算では914億円で、取崩の額しか残高はありません。これらのことから見ても、川崎市の減債基金残高がいかに過大であるかがわかります。このように、市税収入、財政力指数、財政健全化指標、減債基金残高のどれをとっても、川崎市は政令市でトップクラスの財政力を持っています。

扶助費は政令市の平均以下

しかし、「決算見込みの概要について」では、依然として「厳しい財政状況」と述べています。この「財政が厳しい」という根拠についてです。まず、「扶助費の増大」を理由に挙げています。扶助費は、前年度比で93億円増ですが、これは保育所増設等のためにどうしても必要な費用であり、増加した部分のほとんどは国や県からの補助から賄われるので、扶助費の経常収支比率は18.4%にすぎません。しかも、前年度の20.0%よりも減らされており、一人当たりの扶助費の額は引き続き政令市平均を下回っています。扶助費の増加を理由に「財政が厳しい」とはいえません。

減債基金への積立額を減らして対応すれば収支不足もなく、借入も必要なし

「決算見込みの概要」では「減債基金からの130億円の新規借入」を厳しい理由に挙げています。減債基金は、17年度決算、一般会計分では取崩額、いわゆる市債への償還が205億円のところを、448億円も積み立てをして、243億円も積み増しをしています。ですから収支に必要な130億円は、この積立額から減らして対応すれば、収支不足も出ず、借り入れる必要もありません。それでも減債基金残高は、2075億円、取崩額の10年分もあります。このどこに問題があるのでしょうか。なぜ、いったん積立してから借入をするという複雑な形式を取るのか、伺います。他の自治体でこのようなやり方をしている自治体はあるのか、伺います。

これに関して「減債基金への積立ルールがあるため」という理由ですが、今年の予算議会でも述べたように、この「30分の1ルール」は、実質公債費比率を抑制するためのものであり、計算上の一つの基準で、従わなくてもペナルティーはなく、自治体の裁量に任されています。川崎市の実質公債費比率は、17年度決算では6.9%で早期健全化基準値の25%、政令市平均10%と比べてもはるかに低く、このルールを守らなければ支障をきたすというレベルではありません。減債基金からの借入をせずに、積立額を減らして対応しても10年後の減債基金残高は2519億円、実質公債費比率は9.3%で全く問題はありません。以上のように、「減債基金からの借入」が、「財政が厳しい」という根拠にはならないことは明らかです。これ以外に「財政が厳しい」という根拠はあるのか、伺います。

答弁(財政局長)

減債基金への積立についてでございますが、この積立は、実質公債費比率などの財政指標の調整や資金を内部に留保するために行っているものではなく、市債の償還そのものでございますので、適正な積立は不可欠であると考えております。 その上で、減債基金からの借入を予算・決算に適正に計上し、毎年度の収支不足を明らかにすることで、本市の財政状況を市民の皆様に正しくお示しし、財政規律を担保しているものでございます。 また、一部の団体で基金を活用した財源対策を行っていることは灰聞しておりますが、本市のように情報を明示している団体は限られていることから、詳細の把握は困難でございます。 次に、財政状況についてでございますが、平成・29年度におきましては、人口の増加などにより市税収入は一定増加したものの、消費税率の引き上げの延期、ふるさと納税の拡大や、法人市民税の国税化などの影響を強く受けており、都市部における財政需要に対応するための地方税財政制度上の措置が十分とは言えないなど、大変厳しい状況であったことなどにより、決算では、減債基金からの130億円の新規借入を行い、借入の累計が299億円に達しているところでございます。 また、平成30年3月に公表した収支フレームにおきましては、平成35年度までは減債基金からの借入を見込んでおり、さらに、幼児教育の無償化への対応が想定 されることなどから、厳しい財政状況が続くものと考えております。

再質問

減債基金残高は政令市平均の約2

減債基金について、2017年末の残高は2205億円にものぼり、収支に130億円も必要なのに、「なぜ、積立を優先し、市債償還額205億円に加え、さらに243億円も積み増しをするのか」という質問に対して、「適正な積み立ては不可欠」だからという答弁でした。政令市の減債基金残高の平均は、市債返還額の平均4年分となっているのに、川崎市は、11年分にもなり、人口一人当たりにすると他都市の約2倍にもなります。川崎市の減債基金残高は、あまりにも過大だといわなければなりません。各都市によって残高にかなり差があるということは「30分の1ルール」が各都市の裁量に任されているということです。

また、収支不足に対して他の自治体はどのように対応しているのかという質問に対し、「基金を活用した財源対策を行っている」という答弁でした。結局、他の自治体は、収支不足が出た場合、減債基金や財政調整基金などを活用して収支不足を埋め、その分積立額を減らして対応しているのです。川崎市は、なぜ、他都市のように積立額を減らして対応しないのか、市長に伺います。

 「財政が厳しい」根拠の一つに、減債基金からの「借入の累計が299億円」という理由を挙げていました。しかし、減債基金の残高は2205億円あるのですから、そこからたとえ299億円目減りしていると考えても、1900億円はあり、市債償還額の9年分以上あります。

横浜市の減債基金は市償還額の1年分でも「返済資力は十分」

横浜市では、2016年度決算で、減債基金残高は913億円です。市債償還額の1年分しかない計算になります。それでも、「横浜市の財政状況」では、減債基金は「着実な積み立て」をしており「返済資力は十分に確保している」という評価です。「財政が厳しい」という文言は一言もありません。この横浜市の例からしても、川崎市の減債基金の残高状況からみて、どこに「財政が厳しい」という根拠があるのか、市長に具体的に伺います。

 答弁では、「財政が厳しい」という根拠に、消費税率の引き上げ延期、ふるさと納税の拡大、法人市民税の国税化などを挙げていました。しかし、これらの影響は政令市ではどこも同じです。しかし、これを理由に財政が厳しいといっている自治体はあるのでしょうか。ひとり当たりの扶助費がトップである大阪市の「予算の概要と財政の現状」では、扶助費を理由に「財政が厳しい」とは一言も言っていませんし、消費税率引き上げの延期、ふるさと納税の拡大、法人市民税の国税化などを理由にもしていません。

他都市の例から見てもわかるように「財政が厳しい」という根拠は一つもないのです。他都市のように積立額を減らして対応すれば、収支不足も出ないのです。

見せかけの収支不足は福祉・くらしの支出抑制のため

 それなのに、なぜ、減債基金から借入までして収支不足が出たように見せるのでしょうか。答弁にもあるように、出てもいない収支不足を市民に明らかにすることによって、財政規律、要するに福祉や暮らしの支出を抑制、削減するためではないですか、市長に伺います。

答弁(市長)

減債基金への積み立てにつきましては、仮に、ルールどおり積み立てを行わない「繰り延べ」という手法を選択した場合には、予算上、収支不足が明らかにされず、 財政状況の実態が見えにくくなることで、本来、市債の 償還に充てるべき財源が、継続的な事業に使われ、予算規模を増大させることにつながるものでございます。 こうした歳出構造が常態化した状況においては、財政規律が損なわれ、必要な施策を進めるための財源や、市債の償還財源を十分に確保することが困難となり、今の 世代が負担するべき負担を将来世代に強いることになりますので、責任を持って積み立てを行い、将来への行政 需要への対応に支障とならないよう財政運営を行っていく必要があると芳えております。 また、ふるさと納税の拡大や、法人市民税の国税化等の影響により、一般財源の大幅な増加が見込めない中、 社会保障や防災・減災対策など、直面する課題への対応とともに、将来確実に訪れる人口減少も見据え、乗り越えなければならない課題にも早急に対応する必要がございます。 そのため、やむを得ず、減債基金からの借り入れによる対応を図っているところでございますが、その累計は 平成29年度末で299億円に達している状況であり、 収支フレームにおきましても、当面、借り入れが想定されるなど、大変厳しい財政状況となっております。 こうした状況におきましても、 20年後、 30年後を 見据え、総合計画に基づき安心のふるさとづくりと力強い産業都市づくりをバランスよく進め、将来にわたり市 民の皆様が幸せを感じられる「最幸のまちかわさき」 の実現に向けて必要な施策に取り組んでいるところでございます。

再々質問

大阪市は基金を活用して収支不足を出さないように対応

減債基金について、「なぜ、積立を優先し、243億円も積み増しをするのか」という質問に対し、そうしないと「収支不足が明らかにされず」「財政状況の実態が見えにくくなる」という答弁でした。しかし、他都市と同じように積立額を減らして対応すれば、収支不足は出ないのです。大阪市の「財政の現状」では、「基金を活用することから、実際の収支不足は生じません」ときちんと説明しています。「財政の実態」というのなら、過大な残高がある減債基金の実態こそ、市民に明らかにすべきです。

「将来世代のため」というのならため込まずに、少子化、防災にもっと投資を

 答弁では「負担を将来世代に強いることのないように」、また、防災や将来の人口減少などの課題に必要だから、これだけの額を積み立てていると述べています。しかし、17年度決算でも減債基金残高は、市債償還額の11年分もあり、10年後の2027年度の推計でも3023億円にも上り、市債償還額の9年分です。他都市並みの残高にすれば、2000億円で足りるはずであり、あまりにも過大です。本当に、将来世代のため、防災、人口減少に備えるというのであれば、ため込まないで、少子化や防災、施設の長寿命化対策に、もっと投資すべきです。そうしてこそ生きたお金の使い方であり、将来世代の負担を減らし、防災や人口減少にも対応できるのではないですか、市長に伺います。

答弁(市長)

減債基金への積み立ては、資金を内部に留保するため のものではなく、市債の満期一括償還のために計画的に行っている償還そのものであり、将来の行政需要への対応の支障とならないよう、将来世代に対して責任を持って行うべきものでございます。 本市の財政は厳しい状況が続いておりますが、そうした中におきましても、将来世代への過度な負担を強いる ことがないよう、減債基金への積み立てを適切に行うとともに、 中長期的な視点を持ちながら、子育て環境の整備や高 齢者・障害者施策などの「安心のふるさとづくり」と、 成長産業の集積による戦略拠点の形成などに取り組むとともに、都市拠点・交通網などの社会資本を計画的に整備し、我が国の持続的な成長を牽引する「力強い産業 都市づくり」、 防災・減災対策などの「成長と成熟を支える基盤づくり」をバランス良く推進しているところでございます。

最終意見

他都市から見れば、減債基金へのため込みすぎは明らか

収支は減債基金への積立額を減らして対応すれば、収支不足は出ず、借り入れる必要もありません。減債基金について答弁では、「減債基金の積立は、資金を内部に留保するためのものではない」としていますが、他都市から見れば、明らかにため込みすぎです。「将来の行政需要への対応に支障とならないように」といいますが、「支障にならない」どころか過大すぎます。これは、見解の違いではなく、他都市の状況から見れば客観的な事実であることを指摘して、あとは委員会に譲ります。