むねた裕之
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決算(財政局)-最低生活費、児童手当など差押え禁止財産の周知徹底を

9月21日、決算特別委員会の総務分科会(財政局)で、税金滞納者に対する差押えについて、差押え禁止財産、預金口座の差押えでの配慮、過酷執行の禁止、納税の緩和制度など、ルールを踏まえた対応を求めました。

(〇番号は質問)

市税の収入確保策について

2016年度決算見込みの概要でも「市税収入率は過去最高」を更新/収入未済額は32億1800万円と7年連続減少/「財産の差押え・公売等の滞納処分の強化」を打ち出す

全国で差押え、滞納処分が激増

確かに、適正な税制度を維持するためにも、しっかりと納税義務を果たしている納税者との公平性を確保する意味でも、適正に法を適用し対応することは必要です

しかし、一方で差押えに対する悲鳴が各地で/個々の納税者の事情を考慮することなく、強権的に撤収手続きをしたりして、生活が破綻する事例も増えている/政府はそのために「差押えする場合のルール」を定めていますが、行政によっては、ルールを無視した差押えもかなり横行している

(差押えについて)

10年前と比較した税金滞納件数、差押え件数と差押え率(差押え件数/滞納件数)を伺います?

(答弁)

平成19年度に約40万件ございました滞納件数は、 平成28年度では約15万件まで、大幅に縮減してきた ところでございます。 差押え件数といたしましては、平成19年度は約2 9千件ございましたが、平成28年度は約12千件と なっております。 こうした状況は、納税者の滞納が累積し、生活の立て直しが困難となってしまう前に解決が図れるよう、納期限後、可能な限り早く納税催告を実施して、納税者から の相談等をいただきながら早期解決を図ってきたことによるものと考えております。

川崎市では、10年間で差押え件数は減少、差押え率は約8%だということ

差押えに関する法的根拠は何ですか?

(答弁)

地方税法の規定により、納期限後20日以内に、督促状を発しなければならないとされ、その督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに地方団体の徴収金を完納しないときは、滞納者の財産を差し押さえなければならないとされています。差押えなどの滞納処分手続の執行につきましては、国税徴収法に規定する滞納処分の例により、動産、債権、不動産などの財産の差押えを行うことになります。

地方税法、国税徴収法47条の規定によるということ

(差押えには厳密なルールがある)

差押え禁止財産とは何か、伺います?

(答弁)

国税徴収法の規定により、生活に欠くことができない 財産等については、差し押さえることができないとされております。 また、他の法令により差押えが禁止されている財産といたしましては、児童手当法、児童扶養手当法、生活保護法、特別児童扶養手当等の支給に関する法律などに規定する手当や給付金がございます。

生活必需品、生活保護費、児童手当、児童扶養手当、特別児童福祉手当などは差押え禁止されているということ。さらに滞納者の個々の事情によっては、差押えが難しい場合もあると思います。

その場合の「滞納処分の執行停止」とは何か、伺います?

(答弁)

地方税法の規定により、納期限後、督促状を発してなお、市税を完納しないときは、滞納者の財産を差し押さえなければなりませんが、滞納処分の執行停止といたしましては、納税者から納税相談をいただき、個々の事情を把握するとともに、財産調査を行った結果、納税資力 がないことなどが判断できた場合に、差押えなどの滞納処分の執行を停止するものでございます。

地方税法と同時に、国税徴収法でも規定/国税徴収法153条で「滞納処分の執行によって、その生活を目覚ましく窮迫させる恐れがあるとき」は執行できないと規定しているように、過酷執行は許さない立場を取っている

(給与、年金、預金口座について)

「給料(年金、退職金)が入った預金口座を差し押さえられた。明日からの生活ができない」という声が各地で出ている

給料、年金、退職金の場合の差押えはどうなりますか?口座を差し押さえた事例はあるのか、伺います?

(答弁)

滞納となった市税等につきましては、地方税法の規定により、差押えなどの滞納処分を適正に執行しているところでございます。 給与、年金、退職金等の債権の差押えにつきましては、 国税徴収法の規定により 所得税や社会保険料、最低生活費に相当する額など、差押えが禁止されている金額を除いて執行しています。

なお、早期の滞納解消を望んでいるなどの事情により、滞納者の承諾がある場合は、差押禁止額の一部が差押えの対象となるため、十分に内容を説明して、滞納者の同意を得ることとしております。

また、差押財産の選択にあたりましては、給与の差押えによる勤務先での信用失墜の可能性などを考慮し、預金口座を選択する場合もございます。

給料、年金などは全額が差押え対象になるわけではない/差押え禁止額(税金・保険料、最低生活費、生活費の加算額)は残さないといけないということ

ただし、給料、年金が口座に振り込まれた場合、それを狙い撃ちして全額引き落とし、差押える事例も全国にはあると聞いています。

川崎市では、預金口座に振り込まれた給料、年金は全額差押えるのか、伺います

(答弁)

給与等が振り込まれた預金口座の差し押さえにつきましては、給与債権ではなく、預金債権としての差押えとなるため、国税徴収法の規定により、可能とされており預金全額を差押える場合もございます。この場合であっても、差押えにより、生活の維持を困難にする恐れがあるときは、納税の猶予の適用を検討するなど、状況に応じた判断をしているところでございます。

川崎市では、口座に振り込まれた給料や年金であっても、狙い撃ちしてすぐに引き落とすようなことはやらず、差押えにより、生活の維持を困難にする恐れがある場合は、全額ではなく、納税の猶予を紹介したり、税や保険料、最低生活費など差押えが禁止されている金額を除いて徴収するということです。

児童手当が振り込まれた預金口座の差し押さえについて?

(答弁)

平成2511月の広島高等裁判所での鳥取県児童手当差押え裁判におきまして、児童手当が預金口座に振り込まれた後の債権の差押えは、預金残高に占める児童手当の構成比、振込時間と処分執行時間との近接性等の事実から、児童手当の属性を失っていないと認めることが相当であるとして、児童手当法の趣旨に反し、違法であるとされました。 このことから、児童手当法など他の法令により禁止されている財産の振込先である預金口座の差押えにつきましては、原則、差押禁止財産としての属性を承継するものではないものの、差押えの適正な執行が必要とされているところでございます。

最高裁判例(1998年)で、差押え禁止財産であっても預金口座に振り込まれれば自由に差押えができる/この判例に対して全国から「あまりにもひどい」「ただでさえ生活が苦しく税金が払えない人から給料、年金など全額を取り上げられたら、どうやって暮らしていけるのか」などの声が/この判例はそもそも国税徴収法153条「過酷執行の禁止」条項に反するという声も上がっていました。

これを打ち破ったのが(鳥取県児童手当差押え裁判)/預金口座に振り込まれた児童手当を差押えた鳥取県に対して鳥取地裁は、全額返還と損害賠償を支払わせ全面勝利判決/総務省もこの鳥取の判決を受けて通知を出した

川崎市で児童手当を預金口座に振り込まれ、その口座を差し押さえた事例はありますか?

(答弁)

本市では、児童手当のみが振り込まれた預金口座について差押えた事例はございません。預金口座の差押えにつきましては、鳥取県児童手当差押え裁判の判決を踏まえ、社会保障制度の維持等の観点から、児童手当以外の様々な収入の入金履歴や児童手当の支給時期などを慎重に精査した上で、差押禁止財産としての属性を承継しているかを十分考慮し、適正な執行を行っているところでございます。

口座に振り込まれた児童手当の差押えはやられていないということ

差押えの対象となる滞納者の財産とは、どの範囲を言うのか?

(答弁)

差押え対象となる財産は、滞納者に帰属するものでなければならないことから、滞納者による占有の状況や登記、預金通帳の名義などから滞納者本人の財産であることについて確認し、慎重に帰属の認定を行い、差押えを執行しているととろでございます。

また、国税徴収法の規定により、滞納者と生計をーにする配偶者や親族の生活に欠くことができない財産につきましては、差し押さえることができないものとされております。 なお、給与差押え時の差押額の計算において、生計をーにする配偶者等の最低生活費に相当する額を差押えすることが禁止されているところでございます。

差押えの対象となるのは、滞納者の財産のみ/生活を一にしていても配偶者や親族の財産の差押えは禁止されている

生命保険の差し押さえは、どうなりますか?

(答弁)

生命保険の差押えの執行にあたりましては、近い将来、保険金の発生が予想される場合、 滞納者が現在、入院による保険金の給付を受けて生活している場合、高齢または健康状態等の理由により、再加入が困難な 場合などにおいて、差押えを執行することによる滞納者等への影響が大きいことから、滞納者の個別的、具体的な事情に配慮して、慎重に判断した上で、柔軟に対応しているところでございます。

国税徴収法の通達で一定の配慮を求めている/入院給付金の給付を受けている場合/新規に保険加入が困難な場合/加えて滞納額と比較して解約返戻金の額が目覚ましく少額である場合も配慮する

最低生活、生業の維持、精神的生活に必要な財産は差押え禁止となっていますが、この絶対的差押え禁止財産とは、どのようなものがありますか?

(答弁)

国税徴収法の規定による生活に欠くことができない財産等といたしましては、最低生活の保障にかかわる財産として、衣服、寝具、家具、三ケ月間の食料があげられ、 生業の維持にかかわる財産として、技術者、職人、労務者などの職業又は営業に欠くことができない器具があたり、精神的生活の安寧の保障にかかわる財産として、仏像、位牌などがございます。 これらの財産の差押えが絶対的に禁止されているところでございます。

滞納者の資産だけでなく、生活を共にする配偶者や親族の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用品/3か月分の食糧、燃料/業者の機械、器具、備品、原材料など事業の継続に必要な資産などは、差押えを絶対的に禁止されている

差押えは生活や事業への影響が大きいため、いろいろな配慮が必要とされていますが、その手続き上の配慮とは何ですか?

(答弁)

地方税法の規定により、納期限後、督促状を発した日から10日を経過した日までに市税を完納しないときは、滞納者の財産を差し押さえなければならないとされておりますが、差押えは生活や事業への影響が大きいことか ら、機械的に滞納処分を執行することなく、納税催告を行い、納税者から相談いただくなどで、個々の資力の状況や事情を把握し、弾力的な対応に努めているところでございます。 今後につきましても、納税者の個々の事情に十分配慮した滞納整理に取り組んでまいりたいと考えております。

差押えするにも、手続き上何段階もある/川崎市の場合、督促状を出してから10日たった場合でも、すぐには差押えず、催告書を出して手紙や電話などにより連絡を取って、まず相談に乗るということ―これは非常に重要だと思います/私の相談者のケースでも督促状がきたけれどどうしたらよいかわからないという方が多い、また知らないまま10日間過ぎてしまうというケースも

さらに差押えする場合でも、配慮が必要/個人の住宅に立ち入って差押えする場合は、住居の平穏を守るため夜間や休日は行わないなどの配慮が必要とされている

まとめ

全国では、行政による違法行為が横行/市の職員に法令や通知を守らせることが必要/特に差押え禁止財産の周知徹底を

給料、年金に関する差押えは、特に最低生活が可能な範囲で/児童手当の差押えは禁止

滞納者へは生活再建して、再び税金を納めることができるようにすることが大前提/生活再建ができるように相談・対応を/督促状を出した後の「催告」の段階での相談を丁寧にすることを要望