むねた裕之
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代表質問・財政―「財政が厳しい」という根拠は一つもない

9月1日に始まった川崎市議会・9月議会で、9月12日、日本共産党の大庭議員が代表質問に立ちました。川崎市の決算の特徴について質問。市は「財政が厳しい」といっていますが、その根拠は何一つなく、むしろ政令市の中で最も豊かな財政を持っていることが明らかになりました。

(質問)

2016年度決算の特徴についてです。

2016年度一般会計決算では、歳入は前年度比で97億円増の6148億3300万円、歳出は87億円増の6109億9100万円となり、実質収支は1億9000万円のプラスとなりました。歳入では、市税が前年度比で46億2000万円増となり、4年連続の増収で3年連続の過去最高を記録。これは、法人市民税が7100万円の減になったものの、個人市民税が25億円、固定資産税が17億5800万円の増によるものです。普通交付税は政令市では唯一の不交付団体となりました。

基金の状況では、減債基金残高は、2042億4800万円と初めて2000億円を超えました。減債基金へは80億9300万円積み増し、財政調整基金にも4億円積み増しをしました。収支不足に充てるとして減債基金から53億円の借入をしていますが、減債基金への積み立てを取崩額だけにすれば、借入の必要はなく収支は32億円のプラスとなっています。健全化指標についても、すべての指標で早期健全化基準を下回りました。「決算見込みの概要」では、「引き続き厳しい財政状況」と述べていますが、財政が厳しいという指標はどこにも見当たりません。

扶助費に関しても、0.8ポイント増の28.1%となりましたが、これは保育所増設のためのどうしても必要な費用であり、増加した部分のほとんどは国や県からの補助から賄われるので、経常収支比率は20.0%に過ぎません。健康福祉費の構成比は前年度比で0.1%減らされ、一人当たりの扶助費の額は政令市平均を下回っており、決して十分とはいえません。基金へ85億円も新たに積み増しをしていることを考えると扶助費が財政を圧迫しているとはとてもいえません。それでもなお「財政が厳しい」という根拠は何ですか、伺います。

減債基金についてですが、減債基金への積立ルールの根拠である実質公債費比率は早期健全化基準25.0%をはるかに下回り、昨年比でさらに0.3ポイント減の7.2%。減債基金へさらなる積み増しが必要という水準ではありません。2015年度の時点で他の政令市と比較すると一人当たりの市債残高は20政令市の中で13番目なのに、減債基金残高は3番目で政令市平均の1.8倍にも上っています。それにもかかわらず、減債基金へ毎年、積み増しを続けているのです。減債基金にこれ以上の積み増しすることよりも、市民のための施策に充てることこそ優先されるべきと考えますが、見解を伺います。10年間、減債基金への積み増しをしなかった場合の10年後の実質公債費率とその間の積み増し分の累計金額を伺います。

3月議会では市税収入や収支不足において2015年度の予算と決算では大きな誤差が出ていることを明らかにしました。2016年度の予算と決算でも、市税収入予算は39億円低く見積もり、収支不足額も39億円過大に見積もられていました。しかも、毎年度、減債基金には100~200億円前後の積み増しをして収支不足を大きく見せています。このような見積もりは「財政が厳しい」ように見せるためにやっているのではないか、とも疑われます。なぜ、毎年度このように市税収入は過小に、収支不足は過大な見積もりになるのか、伺います。

(答弁)

平成28年度決算におきましては、市税収入は増加したものの、人口の増加や少子高齢化の進展などにより増大する行政需要に対応するため、臨時的な対応として、 減債基金からの新規借入を53億円行うことで、収支不足に対応し、借入の累計が169億円に達していることなどから、厳しい財政状況にあると考えております。 また、平成28年3月に公表した収支フレームにおきましては、平成30年度までは減債基金からの借入を想定しており、さらに、消費税率引上げ時期の延期や、県費負担教職員の市費移管などにより、引き続き、厳しい 財政状況が見込まれるところでございます。

(減債基金についての答弁)

減債基金につきましては、地方債の償還年限が原則として30年とされていることなどを踏まえ、満期一括償還方 式で発行した地方債の30分の1を、翌年度から積み立 てることとされているところでございます。 本市では、このルールに従い、満期一括償還方式で発行した市債の各償還年限に応じた、積み立てを行っているものでございます。 一定の条件のもと、 10年間、減債基金への積み増し を行わなかった場合の10年後の実質公債費比率は約13%、その間の積み増し分の累計金額は約900億 円と推計されるところでございます。

(予算と決算の乖離についての答弁)

毎年の予算編成におきましては、最新の社会経済状況 等を踏まえながら、市税収入等の歳入を見込むとともに、 事業を執行するために必要な予算額を計上しているところでございます。 予算の執行段階におきましては、その後の状況の変化 に伴う市税収入等の増加や、事業スケジュ」ルの変更な どの影響に加えて、債権確保や、効率的、効果的な予算執行に積極的に取り組んでいるところでございまして、その結果として、決算におきましては、市税収入の増加 や収支不足の抑制が図られているものでございます。

(再質問)

減債基金の「30分の1ルール」とは、実質公債費比率の計算上の基準であり、従わなくてもペナルティはなく、自治体の裁量に任されています。隣の横浜市は、人口で川崎市の2.5倍、市債残高で2.8倍の規模がありますが、減債基金残高は、前年度から74億円も減らし、わずか1008億円で川崎市の2分の1です。横浜市は、こういう減債基金残高でも大丈夫だとして、市の裁量で独自の積立を行っています。

2015年度決算で他の政令市と比較すると、減債基金残高は、前年度と比較して4都市が減らしているなか、川崎市は139億円も積み増しをしています。大阪市を除けば、これだけ積み増しをしている都市はほかにありません。川崎市の減債基金の積み増しがいかに過大かがわかります。答弁にあったように、川崎市は、減債基金に積み増しを10年間しなかったとしても、10年後の実質公債費比率は13%で、「何の問題もない」ということです。10年間、減債基金への積み増しをしなければ、約900億円の財源ができるという答弁がありました。毎年平均90億円を必要な施策に使えることになります。基金にただ、ため込むのではなく、積み増し分を市民のために使うことこそ、税金の生きる使い方ではないですか、伺います。

財政状況については、「収支不足」、「減債基金からの借入」、「消費税率引き上げの延期」などを理由に「財政は厳しい」という答弁でした。しかし、減債基金への積み増しをやめれば、収支不足にもならず、借り入れる必要もありません。財政調整基金への積み増しも含めると収支は32億円のプラスとなります。消費税に関しては3月議会でも述べたように、税率を引き上げれば、逆に市の財政や市民への負担増となることから、引上げの延期が「財政が厳しくなる」という理由にはならないことを明らかにしました。それでもなお、「財政が厳しい」といえるのですか、改めて伺います。

(答弁)

減債基金への積立ては、単に内部に財源を留保するも のではなく、市債の償還そのものであり、ルールどおり に積立てを行わなければ、将来世代に過度な負担を強いるものでございますので、責任を持って積み立てを行い、 将来の行政需要への対応に支障とならないよう、財政運 営を行っているところでございます。 本市では、人口の増加や少子高齢化の進展などにより 増大する行政需要に対応するため、臨時的な対応として、 減債基金からの借入を行っている状況であり、収支フレームにおきましても、減債基金からの借入を想定していることなどから、引き続き、厳しい財政状況であると認識しているところでございます。

(再々質問)

減債基金への積立について、「ルール通りに積み立てを行わなければ、将来世代に過度な負担を強いる」という答弁でしたが、本当にそうでしょうか。10年間、取崩額だけ積み立てたとしても、10年後の実質公債費比率は13%で問題はありません。10年後以降の取り崩し額は400~500億円で平準化し、残高も2000億円をキープしています。減債基金が足りなくなるという大きな取崩はありませんし、将来世代に過度な負担を強いることにもなりません。

ルール通り積み立てる理由に「将来人口が減少し、税収も減少するため」という話もありました。しかし、新たな人口推計では、人口は13年間増え続け、今の人口より減少するのは35年後です。要するにこれから13年間は税収が増え続け、33年間は今より税収は多いのです。今後30年間は、税収不足で財政が厳しくなるという根拠は一つもありません。

「人口の増加や少子高齢化の進展などにより増大する行政需要に対応」しているために「財政が厳しい状況にある」という答弁でした。しかし、川崎市は人口増、少子高齢化の需要に十分、対応しているのでしょうか。認可保育園の隠れ待機児童数は2891人で過去最高、特養ホームの待機者数は4276人で待機率は政令市ワースト1位、小児医療費助成は、首都圏では東京都、さいたま市、千葉市に加え、隣の横浜市も再来年から中学3年生まで拡大に踏み出すといわれているのに、川崎市は小学6年生までで政令市では最低水準です。これだけみても、とても行政需要に応えているとは言えません。

行政需要がこれだけあるのですから、減債基金に過大な貯蓄するのではなく、市民の必要な施策に使うべきです。少子化対策には時間がかかるからこそ、今から必要な施策に投資するなど積極的な財政戦略が必要ではないですか、伺います。

将来のためにと貯めておき、現在、税金を払っている市民に還元しないのは、市民として納得できないと思いますが、伺います。

(答弁)

減債基金への積立ては、義務的な経費である市債の償 還そのものであり、将来の行政需要への対応の支障とならないよう、将来世代に対して、責任を持って行うべき ものでございます。 本市の財政は、厳しい状況が続いておりますが、そう した中におきましても、将来世代への過度な負担を強いることのないよう、減債基金への積立てを適切に行うと ともに、 20年後、 30年後を見据え、総合計画に基づき、「安心のふるさとづくり」と「力強い産業都市づく り」をバランスよく進め、将来にわたり、市民の皆様が 幸せを感じられる「最幸のまちかわさき」の実現に向 けて、取り組んでまいります。