むねた裕之
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地域経済ー持続的発展のカギは中小企業と自治体

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11月7日、8日と議員研修会で大阪に行ってきました。1日目は「地域経済振興と中小企業振興条例」について、2日目は「高齢者介護・福祉政策をめぐる争点と自治体の役割」について講義を受けましたが、川崎市の政策を考える上で非常に参考になりました。特に「地域経済振興と中小企業振興条例」について、特に印象に残った内容を紹介します。講師は岡田知弘・京都大学教授です。

地域経済衰退の原因は何か?

第1には、大企業を中心とする海外進出と輸入促進政策による地場産業、農林水産業の衰退だということ。

第2に、「構造改革」政策による東京への富の集中と地方の衰退が加速したこと。「三位一体改革」、「平成の大合併」以降、地方財政圧縮による地域建設業の衰退が進んだこと。

第3に、これらにリーマンショック、消費税増税不況が重なるなどの理由が挙げられました。これらの原因を聞いていて、川崎市の臨海部での産業空洞化や市内中小企業の実態と重なりました。

大型公共事業と企業誘致型地域開発政策は、なぜ、失敗したのか?

従来は、地域開発政策・新産業都市構想により、拠点への投資の集中がまわりまわって周辺産業、地域を潤す(トリクルダウン)という考え方に基づいていました。しかし、結果としては、ほとんどの開発政策は失敗に終わっています。その理由として

① 大型公共事業は地域経済への波及効果が少ないうえに、地方財政、環境に負荷をかけるということ。まさに、川崎市での臨海部の大規模事業に共通する内容です。

② 企業誘致に成功したとしても、利益は本社に移転、地域内に再投資されない。また、立地、撤退サイクルの短縮化・国際化(産業空洞化)の中で、地方への工場立地件数が減少したうえ、撤退が増大していること。

③ 高齢化の中で企業誘致の地域波及効果が大きく限定されることなどがあげられました。

地域の成り立ちと地域産業、地方自治体

もともと地域経済の再生産を支えてきたのが多様な地域産業です。この産業があることにより住民の生活が成り立ち、地域内の再生産が生活・景観・環境の再生産につながっていました。こういう地域内再投資力が地域経済に大きな影響を与えており、この再投資力の担い手の一つが地方自治体です。

地域経済の持続的発展のカギは、地元の中小企業・業者と地方自治体

●中小企業・業者は、地域経済における経済活動、雇用創出の圧倒的部分を担っており、社会活動、社会的ネットワークの担い手であり、地域文化、防災の担い手でもある。阪神淡路大震災の時は、食料や物資、重機を持っていた中小企業が災害時に大きな役割を果たした。

●地方自治体は、地域経済における一大投資主体であり、行財政権限、法的権限によって地域づくりの方向が決定、保証できること。

以上のことから、地域経済の振興には地元の中小企業と自治体の役割が重要だということが述べられました。

*これと対比して、大企業誘致型の開発は、雇用創出にしてもはるかに小さく、生み出された利益は、本社に移転されるために地域経済に還元される部分は小さく、本社の都合によって撤退の危険性がある。自治体は、こういう誘致型開発に投資しても、地域内再投資力は小さく、持続的発展とはならない。

具体的例として

(ナニワ企業団地協同組合)

零細中小企業群(約260社)からなり、造船所跡地に自主的な異業種企業団地を形成。共同受注グループにより、下請けから脱皮し横請け関係をつくる。インターネットを活用し、国や地方自治体の産業政策、補助金を活用している。90年代、地域の企業が業績を落としている中、5年間で26%の企業が売り上げを増加させ、25%の企業で雇用も増やしている。

(横浜市の中小企業振興条例での報告書)

条例を「宣言条例」に終わらせないために、「過去5年間の市内中小企業への発注状況」を報告させている。川崎市でも、こういう報告書が必要ではないか。