むねた裕之
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川崎市の財政は「厳しい」のか?②-扶助費、減債基金、収入不足について

―市税は2年連続増収で過去最高―

市税は2年連続の増収で過去最高額。個人市民税も人口増で増収。人口は15年後まで増え続けます。固定資産税は小杉などの新築マンションラッシュ、新築増加で増収。ここもこれからさらに住宅増加で増え続ける。歳入のどの項目も増額で将来的にも増え続き、財政的なマイナス要因はありません。

―財政力指数は政令市でトップ―

実質公債費比率は8%と前年度より1.1%改善。早期健全化基準25%をはるかに下回り、将来負担比率は115%程度で早期健全化基準の400%をはるかに下回り、将来的に財政を圧迫する可能性は極めて低い。どの指標をみても財政状況は極めて健全で、財政力を示す財政力指数も公表しているところでは川崎市は全国トップ。「引き続き厳しい財政状況」という指標はありません。

ー「引き続き厳しい財政状況」?という3つの理由-

「一般会計・特別会計決算見込みの概要」では「引き続き厳しい財政状況」と見出しをつけて、総務分科会、総括質疑でも、市の財政状況について質疑がされました。

その質疑の中で、「厳しい財政状況」、財政の不安材料とされた点が3点あります。

1は、「扶助費が増大」という点です。

地方自治法の地方自治体の本旨は「住民の福祉の増進」です。社会保障費など扶助費が市の財政の中心になることは当然です。扶助費の構成比を他の政令市と比較しても、川崎市は25.7%で政令市の平均26.7%よりも低く、川崎市が特段、扶助費の割合が高く市の財政を圧迫しているとはいえません。

14年度、扶助費増額の要因は、子育て世帯給付金、臨時福祉給付金や保育事業費などですが、給付金は国からの給付金で全額まかないます。保育受け入れ枠拡大などで増額した保育事業費の本市負担分29.9億円は地方消費税交付金26.1億円でほとんどまかなわれます。扶助費を含む義務的経費は、前年度比で2.5%の微増、構成比は逆に1.6%減少しています。扶助費、義務的経費が市財政を圧迫しているわけではありません。

一方、投資的経費は、前年度比で22.4%増加し、構成比も投資的経費は、2.1%増加するなど、扶助費、義務的経費と比べて、投資的経費のほうが増加率も金額も大きく、構成比も増大しています。一般財源ベースでは減少といっても市債からの借入れが増えており、将来的な負担につながる恐れがあります

2は、「減債基金からの借入れが増大」という点です。

まず、本当に減債基金から借り入れる必要があったのでしょうか?

2014年度は、減債基金からの借入れは32億円ですが、減債基金は141億円上積みされ、1681億円から1822億円となりました。減債基金への積立額を32億円減らして収支不足にまわせば、減債基金からの借入れはしなくてすんだのではないでしょうか?それでも109億円も減債基金は増えることになります。減債基金からの借入れが始まった2012年度も同様で、減債基金からの借入額は67億円ですが、減債基金残高は241億円増え、13年度も、借入額は27億円ですが、減債基金は77億円増えています。この3年間、すべての年度で、収支不足分を減債基金への積み立てを減らして対応すれば、借入れはしなくて済み、そのうえ減債基金は333億円も増額されます。なぜ、収支不足が出ているのに、わざわざ減債基金に積み立てをしてから基金から借り入れる形をとるのか?この方式をやめるべきです。

さらに14年度の市税収入の決算額は、当初予算よりも43億円も増収ですから、今年度の51億の収支不足は、実際には8億円足らずです。減債基金から借り入れる必要はなかったのではないでしょうか。補正予算に40億円使われたということですが、そのうち国保会計に32億円も使っています。国保会計を当初予算から、もっと実態にあった金額を計上していれば、補正予算の額も抑えられ減債基金からの借り入れは避けられたと思います。

しかも、19年度以降、収支見通しがプラスに転じます。18年度までの収支不足分を減債基金の積み立て分を取り崩してあてたとしても、減債基金は現在の1822億円から10年後には最低でも2000億円以上になる見込みです。

このように、減債基金からの3年間の借入れは必要なかったこと、そして収支がプラスに転じる18年度までの収支不足を減債基金からの借入れをすることなく、積立額を減らして対処できること、さらに今後、減債基金は10年間、増え続けることを考えると減債基金からの借入れの増大を理由に財政が厳しいということにはなりません。

3は、毎年、収支不足が発生しており不足分を減債基金から補填するため財政が厳しくなるという理由です。

収支不足の試算は、総括質疑でも指摘してきたように、かなりあいまいです。12年度は当初149億円の不足が実際は95億円に、13年度、174億円が60億円に、14年度も54億円だったのが13億円になっているなど、収支不足は、当初の見込みよりも、実際はかなりの減額となっています。

先ほど述べたように、2019年度以降、収支見通しはプラスに転じることから、18年度までの収支不足分を減債基金の積み立てを減らしてあてれば、減債基金から借り入れる必要はなく、しかも減債基金残高はそれでも増えていくなど、将来の収支不足が減債基金の取り崩しにつながるということはありません。

自治体の財政力や健全化を表す財政力指数についてですが、これは基準財政収入額を基準財政需要額で割った数で、1に近ければ近いほど収支不足の割合は少なくなります。現在、川崎市は0.996と全国政令市の中でトップということです。要するに川崎市は、国の基準から見ると政令市の中でももっとも収支不足の割合が少なく、財政力があり、健全な大都市であると判断されています。これらのことからも収支不足により財政が厳しくなる根拠とはいえません。

このように、「扶助費が増大」、「減債基金からの借入れの増大」、「収支不足」は、「引き続き厳しい財政状況」、財政の不安材料という根拠にはなりません。

地方自治法の地方自治体の本旨は「住民の福祉の増進」です。社会保障費が市の財政の中心になることは当然です。財政が厳しいと言って扶助費など社会保障費を削るべきではありません。財政的に気をつけるとすれば、大規模事業などによる市債の増大、将来負担を増やすことです。あらためて、無駄な大規模開発は中止をして、福祉、暮らし中心の予算にすることを要望します。